2025年度版 渡辺松男研究2の3(2017年8月実施)
『泡宇宙の蛙』(1999年)【四葉鵯】P19~
参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
20 おろかなるゆたけさは知るあたわねど仰ぎていたり秩父のみどり
(まとめ)
秩父の緑が豊かで思わず仰いでいた、というのだったら誰にも分かるが、「おろかなるゆたけさ」と言われるととたんに難しくなる。19番歌(静止せる蒼き山々見わたせば死にてゆたかになれる山々)では「死にてゆたかになれる」って言っていてよく分からなかった。「おろかなるゆたけさ」はまだ分かる気がする。「おろかなる」は矛盾する概念だが、これがセットになっていることがポイントだろう。愚かであることがゆたけさであるという考え方は老荘思想の「大愚」に通じるような気がする。なにか生命力の大肯定なのだろう。そういうおろかさの内実を〈われ〉は十分に生きられていないから完全に把握することはできない。だが、やみくもに生を実現しようとして緑を生い茂らせている山、それをすごいなあと思って仰いでいるのだ。(鹿取)
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