2025年度版 渡辺松男研究2の3(2017年8月実施)
『泡宇宙の蛙』(1999年)【四葉鵯】P19~
参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
21 天道虫にわれわれはどう見ゆるのか積乱雲は膨れあがりたり
(レポート)
天道虫は草の葉などに見かけ、実に可愛い虫だが、名前表記のすごさに比して自身の存在、有様から、さらに「われわれ」という人間社会へ広く思いを致したのだろう。おりしも積乱雲が膨れあがっていた。「天道虫に」としながら、そこに抽象性をおびた天からの視線を示唆する初句からの詠い起こしだが、積乱雲を配することで一首に奥行きや手応えが生まれている。(慧子)
(当日発言)
★天道虫って指の先から飛びたちますよね。だから女神に近いようなイメージ。そうでないとこの天道虫は兜虫でもカミキリムシでもいいような気がするから。(真帆)
★女神みたいなイメージなんですか。私は単純に大小の問題とかわいらしさから選ばれた名前だと思っていましたが、雲に天の道だと縁語みたいなもので、それで選ばれたと思っていました。しかし、レポートを読んでなるほど、天道虫という字面も非常に大切な要素だと分かりました。積乱雲が膨れあがると人間にはちょっと恐ろしいのですが、そんなふうにあの小さな天道虫から人間を見たらどんな妖怪か怪物かおどろおどろしいものに見えるだろうなって。お父さんと雲を配した歌も『寒気氾濫』にはいくつかあって、まがまがしい制御しにくいものとして雲と父の同質性を見ている感じだったのですが。他にもバリエーションがあって雲は永遠性とかとも結びついて松男さんには 大切なアイテムのようです。(鹿取)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます