かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 274 トルコ①

2024-02-04 10:56:00 | 短歌の鑑賞
 2024年度版 馬場あき子の旅の歌36(2011年2月実施)
  【シベリア上空にて】『飛種』118頁~
   参加者: N・I、Y・I、崎尾廣子、佐々木実之、曽我亮子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
   

274 呼びても呼びても帰り来ぬ魂ひとつありきシベリアは邃(ふか)しと巫(ふ)に言はしめき

     (レポート)
 先の戦争の未亡人か、または母親かが、青森県の恐山へ来ていたこに口寄せを頼んでいる。いたこは一生懸命祈っているのだが、どうしてもその依頼人の希望する死者の魂を呼び出すことができない。その兵隊の魂は本土に帰ってきていない(帰ることができない)のではないか。「シベリアは遠いし奥が深いなあ」といたこに言わせてしまう。(T・H)


     (まとめ)
 275番歌に(魂は雲に紛れてありと言ひて青森の巫の泣きしシベリア)とあるのでこの「巫」は恐山の「いたこ」で、レポーターが書いているような状況なのであろう。どんなに祈っても帰って来ない魂があって、巫女はとうとう魂を呼び出すことを諦めて「シベリアはとても奥が深くて…」と依頼人に告げたのだろう。「邃し」という漢字に森林に覆われた暗くて寒いシベリアの果てしのなさが託されている。「言はしめき」の使役を使って巫女の微妙な心理を反映している。(鹿取)

        


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