かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞

2022-01-28 14:55:39 | 短歌の鑑賞
   ブログ版清見糺鑑賞 番外編  美女ありき
                    鎌倉なぎさの会   報告 鹿取 未放                                                   

犯罪大通りお祭りさわぎの雑踏に消えたガランス忘れ得ぬひとり
              「かりん」98年11月号

 ガランスは1945年に製作・上演されたフランス映画「天井桟敷の人々」の主人公。アルレッティが演じた。ジャン=ルイ・バロー演じるパントマイムの俳優バチストと同じ座の女優ガランスは恋しあうが、ある事件がきっかけでガランスは大富豪の伯爵と結婚してしまう。6年後、人気俳優になっているバチストは座長の娘と結婚して子供もいる。二人はお互いを忘れられずにいて再会を果たすが、ガランスに横恋慕している昔馴染みの悪漢は衆人環視の中、夫の侯爵にガランスとバチストの逢瀬を見せつける。翌朝、悪漢は侯爵を殺し、それを知らないガランスは一晩一緒に過ごしたバチストを振り切って夫に危険を知らせようと雑踏の中に掛けだしていく。追いかけるバチストはカーニバルの雑踏に紛れてガランスを見失ってしまう。
 終戦時10歳の作者は、戦後何歳くらいでこの映画を観たのだろうか。四句までは映画そのままで、1音字余りの結句のみが作者の感想だが、ガランスは少年の心をどう魅了したのであろう。決して清純可憐な主人公ではない、年増の色香が漂うような人物設定だが、美貌によって周囲の男達を虜にしていたガランス、作者もその美に惹かれたのか、それとも主人公の心の底に秘めた純な恋心を美しいと思ったのか。
 ちなみに寺山修司はこの映画に感銘を受けて劇団「天井桟敷」を作ったのは有名な話である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする