知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

インドの仏 2500年の謎 ~仏教美術の源流に迫る~(BSテレ東、2015年)

2020年07月12日 15時42分51秒 | 原発
5年前に録画してあった番組を、ふと視聴してみました。

仏像、実はあまり興味がありません。
「なぜなんだろう?」
と自問自答してみると、
やはり一神教系に違和感を覚えるから、かもしれません。

根っこは同じであるユダヤ教、キリスト教、イスラム教が一神教の代表ですが、
信仰心が強いほど、結束が固いほど排他的になり、
それが宗教間の争いに発展し、多くの人間が命を落としてきた歴史上の事実があります。

日本の宗教、というか民間信仰はアニミズム(万物に神が宿る)思想がベースで、
ほかの宗教を受け入れやすい素地があり、排他的な考えに発展しにくい。

宗教談義はこの辺にしておきましょう。

さて仏像です。
昨今、仏像マニアがブームになりつつあり、
「◯◯女子」のノリで、「仏像ガール」という造語もあります。
仏像を見て回り、「かわいい!」を連発する彼女らの姿を見ていると、また違和感。
ヒトの価値観はそれぞれだから、善し悪しの問題ではありませんけど、ね。

仏像鑑賞の本も何冊か購入して何冊か斜め読みしましたが、既に忘却の彼方。

こんなひねくれたアラ還のおじさんが、仏像の由来をテーマにした番組を見てみました。
案内役は、仏像ブームの牽引役であるいとうせいこう氏とみうらじゅん氏のコンビ、
プラス、仏像ハンター福田麻衣。


<みどころ>
「仏像好き」「インド好き」を自認するみうらじゅんといとうせいこうが、コルカタ・インド博物館の秘仏を徹底解剖。様々なユニークな視点から、「仏像の起源」や「仏像の違い」を紐解き、インドの仏の楽しみ方を伝えます。また、釈迦の足跡をインドに辿りながら、仏像が作られていった理由や謎に迫ります。
<内容>
紀元前327年のアレキサンダー大王の遠征。その後、インドのガンダーラの地に多くのギリシャ人が残り、仏像が生まれた。これらの仏像文化は、日本の仏教にも様々な影響を及ぼしている。 インドの仏像文化を知ることは、日本の仏教をより理解することに繋がる。仏教誕生の地インドで、2500年を越えて繰り広げられた仏教美術の源流に迫る。 共に、「仏像好き」「インド好き」を自認するいとうせいこうとみうらじゅんが、アジア最古の総合博物館「コルカタ・インド博物館」の秘仏を徹底解剖。様々なユニークな視点から、「仏像の起源」や「仏像の違い」を紐解き、インドの仏の楽しみ方を視聴者に伝える。
なぜ仏像の頭はパンチパーマ?シースルーで裸同然の仏像が存在するのはなぜ?なぜインドの仏像はセクシーなものが多い? などなど。
数々の「小さい」が「深い」疑問を、仏像が誕生した謎とともに解き明かしてゆく。 また、シルクロードに沿ってインドから西域、中国、朝鮮そして日本へと仏教の伝来をダイナミックに切りながら、仏像の進化・発展を追う。
盛者必衰。
栄華を極めた仏教も、12世紀にイスラム軍の攻撃にあい、その勢いは急激に衰えていく。盛者必衰の理が胸をつく。しかし…仏教はしたたかに生き残っていた。 釈迦はクリシュナ女神と同じように、ヒンドゥーの世界ではヴィシュヌ神の化身のひとつとされている。文化を残してゆくための執念とも呼べるその思いこそ、今の時代を生きる私たちが忘れてはならことなのではないだろうか…。
<プロデューサーからの一言>
 インドは何十回と訪れているが、じっくりインドの仏像を見たことがなかった。今回はディレクターとしてもインドロケに出かけ、釈迦の足跡を辿りながらとにかく仏像を見まくるという贅沢な経験をさせてもらった。多分、今回の番組だけでインドの仏像を100体は見ただろうか。そして気がついたことがある。 「インドの仏は『妖怪ウォッチ』と同じだ」と。 インドの仏像は、ヒンドゥー教やバラモン教という他宗教と巧みに融合しながら、また、いいとこ取りしながら、2500年の間に“進化”していった。『妖怪ウォッチ』で子どもたちを虜にしているように、その「バージョンの多様性」で人々を魅了し、生き残ってきたのだ。信者を飽きさせることなく、いろいろな仏を次々に生み出し続けたその“底知れない”パワーを、番組を通して是非皆さんに楽しんでいただきたいと思っている。

いや〜、興味深い。
初めて知った事実が目白押しでした。

いわゆる仏像は、釈迦が悟りを開いて仏陀となり入滅後、500年間は作られなかったとのこと。
その理由は、祈る対象として「塔」(ストゥーパ、釈迦の骨が保存されている)が既に存在していたので必要性がなかったから。
現在も仏教の聖地では、信者達は仏像ではなく塔を礼拝しています。

それではなぜ、仏像が作られるようになったのか?

なんとここで、アレキサンダー大王の名前が出てきます。
彼は東へ進軍し、インドまで勢力下に置こうとしました。
闘いが終わり、彼が去った後にもガンダーラ地方(現在のパキスタン)に子孫は残り、ヘレニズム文明(ギリシャ系)を伝えました。
ギリシャ文明と言えば、人の姿をした神々が有名で、偶像がたくさん作られています。
その影響で、仏像が造られるようになりました。

ガンダーラ仏、すごい魅力的です。
西洋の彫りの深さに、東洋の神秘性が混じり合い、昇華した印象。
現代でもイケメン映画俳優として通用しそう。


時代が下ると、釈迦のほかに菩薩がつくられるようになりました。
その理由は、釈迦の役割は衆生救済ではなく、目標とする聖人なので、拝む対象にはなり得なかったから。
そのため、願いを聞いてかなえてくれる救済役の菩薩達が必要になったのです。

さらに時代が下り、斜陽を迎えた仏教は、生き残るためにインド土着の神々を取り入れ始めました。
古くから信仰されているヤクシャ(男神)、ヤクシー(女神)、
そしてヒンドゥー教の神々。
手がたくさんある千手観音、顔がたくさんある十一面観音、怒った顔の不動明王・・・
実はみな、ヒンドゥー教由来であり、
仏教オリジナルではないのですよ。
仏像ガールさん達、知っているのかな?
七福神もほとんどヒンドゥー教由来の神さまですよね。

もっとも、仏教が日本に伝来して広まる過程でも同じようなことが起きています。
日本の八百万の神々が仏となって現れた(あるいはその逆)とこじつけて浸透していった歴史があります。
「◯◯権現」というのがそのタイプです。
明治維新の際、「神仏分離令」が発令されて、ほとんど途絶えましたが。

日本の仏像は「中性」(男でも女でもない超越した存在)と説明されています。
女性のイメージがある観音さまも、実は女性ではありません。
一方、インドの神々は男神・女神が明確に分かれています。
男神はマッチョ系、女神はグラマー系。
写真はインドの博物館にあるヤクシー像ですが、仏像というよりベリーダンサーのような印象です。


ギリシャの女神よりもさらに女性らしい体の線が強調されています。
パンパンに張ったバストは豊かさの象徴であり、マニアの間では「丸乳」と呼ばれているそうです。
「豊穣をもたらす神は豊満でなければならない」という考えがベースにあると、
いとう&みうら氏が解説していました。

それから、インドから東へ伝わった大乗仏教は、盧舎那仏に代表される巨大化ももたらしました。

こう見渡すと、仏教といえども歴史の波にもまれて、生き残るために進化してきたことがわかり、
それはそれで感動的です。

私、なぜか昨年、突然ヒンドゥー教の神「ガネーシャ」(商売や学問の神)が欲しくなり、通販で2柱購入しました。
なぜだか自分にもわかりません(インドに呼ばれたのかな?)。