alice-roomさんの記事に誘われて、猛暑の中を谷中まで幽霊求めて全生庵までお散歩。
なかなか良い絵が多かったので、感想をいくつか記しておく。それぞれの絵は、全生庵HP内「幽霊画ギャラリー」の番号に従う。
【NO.26】伝高橋由一 幽冥無実之図
落款がないので定かではないが、由一画としても全くおかしくないデッサン力とウイットを併せ持っているので、真作であると信じたい一品。
青や赤などの色彩で、現世に生きる人である生命感を演出している下部の女性に慕い寄る亡霊ストーカーの顔がぼんやりとしていて筆致も荒いのにリアリズムに溢れている。半開きの口、視線の明らかでない目に伸ばしかけた手。目的と手段がこんがらかってしまった哀れな妄執の形は、生者も死者も変わらない。
【NO.25】河鍋暁斎 幽霊図
荒い筆致で、顔と髪以外は朧にして殆ど描かれていない。しかし、これらの全ての幽霊画の中でもっとも響いた一作。
墨使いの上手さは並ぶものがない。強い墨で描かれた髪の表はざんばらに絡んで堅く束になってしまっているさまをよく表し、櫛の入る余地もない。そこには、細く繊細に描かれる髪の心細さとはまた違った哀れさが満ちている。
表情は静かで、涙も枯れたかに見える節目と、軽く引き結んで少し笑っているようにも見える口元が深い哀しみと諦めを湛え、うっかりしたら「どうしたの」とこちらが泪目になって問いかけてしまいそうな危うさがある。
【NO.48】高嶋甘禄 髑髏図自我賛
解説によれば、「画面下部に朽ち果ててゆくひとつの髑髏が描かれる。その頭上からすっとたち昇るように死者の霊が抜けてゆき、幽霊としての形を今まさに整えようとしている瞬間を描いた」とされる。
月よりも白く白抜きで残された魂は、今形を成さんと前後左右にふるふると震えて、大きく膨らんだりあるいは縮んだりしながら、暫くの刻を経て、ひとがたとなるのではあるまいか。死という絶対的な静の中を生きる幽霊が、動をもっていま生まれようとする一瞬は、おどろおどろしくも決して侵してはならない瞬間のように思えてくる。
【NO.23】歌川芳延 海坊主
「ぼーーー」という海坊主の声が聞こえてきそうな一品(そんな声かどうか知らないが)。
舟の進行方向に海坊主が立ちはだかっているのか、あるいは舟の後方から忍び寄っているのか。向こうが透けてみえる、表情も判らない真っ平らに塗られた海坊主の首がひょいと傾げられていて、舟に乗る人を丁度見下ろすようになっている。
ここまでにないくらい簡略化された海坊主に妖怪としての生命を宿しているのが、まさにその傾いだ首。傾いだ角度の可愛らしさと、そのほんの小さな動作によって人(舟)をロックオンするそら恐ろしさとの同居。
因みにこの日の午後は妖怪大戦争観にいった。
この映画の見方としては・・
①主役のタダシ君の可愛らしさを見て悦に入る
②豪華キャストによる豪華キャストのための映画と割り切った上で、キャストを愉しむ
③種々の妖怪が一画面に収まっているその構図を見て(妖怪好きは)喜ぶ
といったあたりだろうか。
というわけで、妖怪尽くしの一日となったのである。
なかなか良い絵が多かったので、感想をいくつか記しておく。それぞれの絵は、全生庵HP内「幽霊画ギャラリー」の番号に従う。
【NO.26】伝高橋由一 幽冥無実之図
落款がないので定かではないが、由一画としても全くおかしくないデッサン力とウイットを併せ持っているので、真作であると信じたい一品。
青や赤などの色彩で、現世に生きる人である生命感を演出している下部の女性に慕い寄る亡霊ストーカーの顔がぼんやりとしていて筆致も荒いのにリアリズムに溢れている。半開きの口、視線の明らかでない目に伸ばしかけた手。目的と手段がこんがらかってしまった哀れな妄執の形は、生者も死者も変わらない。
【NO.25】河鍋暁斎 幽霊図
荒い筆致で、顔と髪以外は朧にして殆ど描かれていない。しかし、これらの全ての幽霊画の中でもっとも響いた一作。
墨使いの上手さは並ぶものがない。強い墨で描かれた髪の表はざんばらに絡んで堅く束になってしまっているさまをよく表し、櫛の入る余地もない。そこには、細く繊細に描かれる髪の心細さとはまた違った哀れさが満ちている。
表情は静かで、涙も枯れたかに見える節目と、軽く引き結んで少し笑っているようにも見える口元が深い哀しみと諦めを湛え、うっかりしたら「どうしたの」とこちらが泪目になって問いかけてしまいそうな危うさがある。
【NO.48】高嶋甘禄 髑髏図自我賛
解説によれば、「画面下部に朽ち果ててゆくひとつの髑髏が描かれる。その頭上からすっとたち昇るように死者の霊が抜けてゆき、幽霊としての形を今まさに整えようとしている瞬間を描いた」とされる。
月よりも白く白抜きで残された魂は、今形を成さんと前後左右にふるふると震えて、大きく膨らんだりあるいは縮んだりしながら、暫くの刻を経て、ひとがたとなるのではあるまいか。死という絶対的な静の中を生きる幽霊が、動をもっていま生まれようとする一瞬は、おどろおどろしくも決して侵してはならない瞬間のように思えてくる。
【NO.23】歌川芳延 海坊主
「ぼーーー」という海坊主の声が聞こえてきそうな一品(そんな声かどうか知らないが)。
舟の進行方向に海坊主が立ちはだかっているのか、あるいは舟の後方から忍び寄っているのか。向こうが透けてみえる、表情も判らない真っ平らに塗られた海坊主の首がひょいと傾げられていて、舟に乗る人を丁度見下ろすようになっている。
ここまでにないくらい簡略化された海坊主に妖怪としての生命を宿しているのが、まさにその傾いだ首。傾いだ角度の可愛らしさと、そのほんの小さな動作によって人(舟)をロックオンするそら恐ろしさとの同居。
因みにこの日の午後は妖怪大戦争観にいった。
この映画の見方としては・・
①主役のタダシ君の可愛らしさを見て悦に入る
②豪華キャストによる豪華キャストのための映画と割り切った上で、キャストを愉しむ
③種々の妖怪が一画面に収まっているその構図を見て(妖怪好きは)喜ぶ
といったあたりだろうか。
というわけで、妖怪尽くしの一日となったのである。
おおっと、映画まで見られたんですね。さすがアクティブ(脱廃人ですね)。DVDにまで待ってレンタルで借りてみようかな~。それまでは寂しいので手持ちの本でも調べて妖怪の出てるものを探そうかな?
でも、素敵な休日なによりですね。
マユさんが上げられた作品の中では、高橋由一、高嶋甘禄、が好きです。歌川芳延の海坊主は、インパクトがあります。幽霊画ギャラリーに海坊主が入っているあたり、江戸期の分類のようですね。
機会があったら、行って見たいと思いました。
私はゲントに行って大満足の今、気は大きくなっていますから、化けては出ません。(笑)
こちらこそ、教えて頂いたからこそじっくりと愉しめました。大変感謝しております。
応挙風の幽霊画も好きは好きなのですが、色々な毛色のものがあったために、意表をつく感じのものに目が行きがちだったのかもしれません。あとは、きっと男性陣はきっと美人さんに目を奪われておいでになることと思い、それ以外の方々にも目を向けて頂こうかと(笑)
妖怪大戦争については、ストーリーなどは期待しちゃいけません。なにせ「楽屋オチ」ですし(苦)
でもalice-roomさまほどの妖怪への愛があれば多分観られます。でもDVDで充分です・・・
>lapis さま
「蚊帳の前の幽霊」。これも挙げようかどうか迷った一品です。でもalice-roomさまのところでフィーチャーされていたから此処ではご遠慮頂きました。
行灯の位置と照らさないと、一瞬蚊帳の中にいるのかしら?と思ってしまいます。伏せた流し目と、少しほつれた髷がなんともエロティックでたまりません。こんな幽霊さんであったなら、「どうぞいつでも来てくださいな」とうっかり云ってしまいそうです。
>seedsbook さま
気が大きくなっていらして、なによりです(笑)
もしどうしても生き霊を飛ばしたくなった場合には、お部屋の片付けと身づくろいをしておかなければならないので、必ず事前にご一報下さいませね。
一部、お盆に触れているので、多少不謹慎かもしれませんが、ご容赦ください。
それでは、よろしくお願いします。
遅くなりましたが、拝読させて頂きました。知ってるはずのこと、聞きかじりのことがいかに危ないかを思い知らされました(笑)
不謹慎とかは気になさらないでください。
そういうのは多分、こっちに生きる人の世のご都合のお話であると思うので、私はあまり気にしないほうです。
ギャラリーに載っていないのですが、幽霊画のひとつに、きゅうりのお馬と茄子の牛にそれぞれ跨った笑顔のミニチュア老夫婦の絵があり、とても微笑ましいものでした。本当にあんな風だったら、子供の頃の私がわざわざとうもろこしで馬のたてがみと尻尾を付けた価値もあったかというものです(笑)
私もお盆ネタを作りたくなってきました。
ご存じかもしれませんが、龍谷大学電子図書館も楽しいサイトです。
特に鳥山石燕の『絵本百鬼』が公開されているのは嬉しいです。
このような貴重な画像をネット上で簡単に見られるとは、良い時代になったものだと思います。
残念ながら全生庵は、いまだに訪れていません。(苦笑)
雨があがったら、そろそろ妖怪の季節になって参ります。
そんなことを思い出させて頂き、有難うございました。
まだしっかり見ていないのですが、大学における人材不足があちこちで騒がれる中、なかなか丁寧に作ってありますね。それもこれも、昨今の妖怪ブームがなせるわざでしょうか。
いやぁ、贅沢なものです。
そもそも、大学という場所や、学ぶということはとても無駄で余計なものだらけで、贅沢なものだったのだということを多くの人が認識してくれると、様々な分野で同じように面白いことが起こるかもしれませんね。
行こう行こうと思いながら、いまだに全生庵には行っていません。(苦笑)
すっかり忘れていたのですが、マユさんも歌川芳延の『海坊主』を取り上げられているのを再発見して、うれしくなりました。あの絵のインパクトは強烈ですね!
全生庵つながりで、TBさせていただきますので、よろしくお願いいたします。