雨の日にはJAZZを聴きながら

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Chris Potter 10 『 Song For Anyone 』

2007年10月22日 22時59分48秒 | JAZZ
今、一挙手一投足が気になる吹き手と言えば、クリス・ポッターを置いてほかにいないでしょう。

ご存知、91年のセロニアス・モンク・コンペティションで1位のジョシュア・レッドマン、2位のエリック・アレクサンダーに次いで、3位に甘んじたクリス・ポッターですが、あれから15年。今や他の2人をも完全に凌駕する勢いを秘めた存在に成長しました。へたすると本国アメリカでは他の2人よりも人気があるかもしれません。

そんなクリポタの最新作が2枚同時にsunnyside から発売されました。1枚は前作『 Underground 』(前項あり)と同メンバーによるライブ盤。そしてもう1枚が管楽器、弦楽器、リズム隊からなる10人編成のラージ・アンサンブル作品の『 Song For Anyone 』です。前者がサックス、ギター、ローズ、ドラムスのベースレス変則カルテットで吃驚しましたが、後者もフルート、クラリネットだけならまだしも、バズーンやチェロも登場し、なんだか聴く前から怪しい雰囲気プンプンの異色作です。そしてバイオリンのマーク・フェルドマンやギターのスティーブ・カルディナスなんかが参加しているあたりが、いかにもブルックリン派のアンダーグラウンド臭を漂わせていて、その道のお好きな方には堪らない作風に仕上がっています。

一聴して、90年代のデイヴ・ダグラスの作品群を彷彿させる翳りと軋みを内包した知的なサウンドだと感じましたが、そういえば、クリポタも一時期、デイヴ・ダグラス・クインテットに参加していた時期もありましたよね。クリポタはポール・モチアンのエレクトリック・ビ・バップ・バンド(EBBB)にも在籍(そう、そこでスティーブ・カルディナスといっしょだったのね)していたこともあり、どうしても彼にはアンダーグラウンドなイメージが付き纏うわけですね。

で、サウンドの方はと言うと、もっとアヴァンギャルド系かと予想していましたが、意外に美しく収まっていました。マーク・フェルドマンがいつもの狂気を押し殺して、アンサンブルに溶け込んでいるのが不気味です。

そして、限りなき自由なイマジネーションの発露ともいうべき、クリポタのアドリブラインは快感以外の何物でもありません。あの先行きの読めない捻じれたフレーズがたまらなく素敵です。要は、如何に気持ちよく聴き手の予想を裏切ってくれるか、そこがポイントなわけで、どんな時にも裏切らない調和を保ったアドリブを吹くエリアレより、変な所へ飛んで行き、翻って捻じれ捻じれて戻ってくる、いわばメビウスの輪のようなアドリブが結局は飽きない、のかもしれません。

そんなわけで、明日23日からBULE NOTE 東京に、デイヴ・ホランド・クインテットの一員として来日します。もちろん、ネイト・スミスも来ます。僕は明日の第二ステージを観に行く予定です。