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Stefano Di Battista 『 Trouble Shootin' 』

2007年10月11日 22時20分22秒 | JAZZ
イタリア・ジャズ界が生んだ夭折の天才アルティスト,マッシモ・ウルバニの財産を今に受け継ぐステファノ・ディ・バティスタの待望の最新作『 Trouble Shootin’ 』。本作は彼のソロ作品としては6作目であり,仏Blue Note からの5作目になります。

「なんだかメンバーがかなり豪華なのです!」とはDisk Union の店員さんが書いたポップの賞賛句です。確かにラッセル・マーロン,エリック・ハーランド,バティスト・トロティニョン,そしてファブリツィオ・ボッソと,超豪華布陣ではあるのですが,僕はその「豪華」さよりも,むしろ,「レアな組み合わせ」に驚かされました。おそらくここに招集させられた5人はお互いがそれぞれ初対面だったのではないでしょうか,少なくとも録音ベースでは。バティスタとボッソの競演もありそうでなかったと思いますし(あったらお教えください)。


そして,アメリカ人のラッセル・マローンとエリック・ハーランドを加える事で,今までとは一風変わった作品に仕上がっているのですね。つまり,メンバーが欧州陣と米国陣の競演ならば,演奏曲もバティスタのオリジナルとケニー・バレル,ホレス・シルバー,ボビー・ティモンズらのファンキー・チューンの混成で,泥臭い中にも洗練されたイタリアン・ハード・バップの血脈が流れる,折衷美溢れる作品に仕上がっています。

さらには,バティスト・トロティニョンにハモンドB3を弾かせることで,全体にファンキー色が全面に表出した独特の世界感に溢れた作品となっています。楽器編成がオルガン,ギターの加わった2管フロントで,コテコテ・ファンキー・チューンを演奏されると,60年代末にルー・ドナルドソンがBlue Noteに残した作品群(たとえは,『 Hot Dog 』,『 Say It Loud 』,『 Everything I Play Is Funky 』などなど)を連想してしまいますが,それらよりはもちろんぐっと現代的で洗練されているのですが,今回,彼らが狙っているのは,そのあたりのソウル・ジャズではないのかと勘ぐってしまいそうです。

ただ少々残念なのが,トロティニョンのベースライン(左手)がどうしても本職でないので弱いのですね。録音レベルも低いせいもあるのですが,スイング感,グルーブ感が希薄なのです。通常,ジャズのオルガン奏者は左手でベースラインを弾きながら,左足で足鍵盤(ペダル)をスタカートで踏み,あのグルーブ感を出しているのですが,おそらくトロティニョンはペダルを使用していないのでしょうね。まあ,仕方ないことですが。

余談ですが,ジャズ・ファンの中には,オルガン奏者は足鍵盤でベースを弾いていると勘違いしている方がたまにいますが,それは間違いです。エレクトーン奏者は足でベースラインを弾いちゃいますけどね。

02年の前々作『 Round About Rome 』,04年の前作『 Parker’s Mood 』が個人的には今ひとつの出来具合だったので,今回はかなり期待していたのですが,はたして期待を裏切らないクオリティーの高い作品であったと思います。でも,一番好きなのは『 Volare 』ですけどね。

Stefano Di Battista 『 Trouble Shootin' 』2007年 Blue Note /EMI 5099950291120
Stefano Di Battista (as,ss)
Baptiste Trotignon (B3)
Eric Harland (ds)
Fabrizio Bosso (tp) 2,4,5,8,9,10
Russell Malone (g) 1,5,6,7,11
Nicola Stilo (fl) 3,6
Eric Lignini (p) 11