雨の日にはJAZZを聴きながら

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Richie Beirach 『 Manhattan Reverie 』

2006年11月16日 21時33分39秒 | JAZZ
僕は熱心なRichie Beirach (リッチー・バイラーク)のファンというわけではありません。特に1990年代の彼の活動については全くの無知なのです。それでも80年代の前半ぐらいまではよく聴いたのものです。ピアノ・ソロの『 Hubris 』(1977 ECM)やジョージ・ムラーツ,ジャック・ディジョネットと組んだ『 Elm 』(1979 ECM),それに『 Eon 』や『 Elegy For Bill Evans 』などもよく聴いたものです。当時のJazz Life 誌でQuestが絶賛されていたので飛びついたものの,当時の僕にはデイブ・リーブマンのサックスが何度聴いても理解できず投げ出してしまった,なんてこともありました。

あの頃のアルバムで今でもたまに引っ張り出して聴いているのは『 Hubris 』ぐらいなものです。クラシックとジャズの融合産物のような音楽で,鋭角的で極めて温度感が低い,怖いくらい繊細なバイラークの美旋律に,当時は何となくジャズの未来像みたいなものを感じたりしていました。僕にとってバイラークは,イコール《 Sunday song 》であり《 leaving 》なのです。

最後にバイラークを聴いたのは1986年の『 Quest2 』だったと思います。正直あまりどんなジャズだったか覚えていません。無機質的てアブストラクトな感じだったかもしれません。その頃から彼の音楽からは徐々に興味が薄れ,いつの間にか僕の中では過去のミュージシャンになっていました。

ところが,1999年にヴィーナスレコードから『 What Is This Thing Called Love 』を発表したのでした。ヴィーナスとバイラーク? どうもしっくりきませんでした。結局スルーして,そのうち忘れてしまっていましたが,2001年に第二弾『 Romantic Rhapsody 』が発売された際,軽い気持ちで購入してみました。そしたらこれが素晴しい内容で感激。丁度いい塩梅にバイラークの毒気が抜き取られ,原氏の思惑どおりに日本人好みのジャズに仕上がっていたんですね。それでいて,何処を切り取ってもバイラークそのものであり,彼らしさは失っておらず,バイラーク健在を見せつける秀作でした。微妙な間,ペダリング。それに重厚な独特のリハーモナイゼーション,ヴォイシングにより,《 blue in green 》や《 I wish I knew 》などの聴き慣れたスタンダードナンバーに新たな命を吹き込むことに成功していました。第三弾はクラシックを取り上げていたのでこれはパスしました。

で,今回の第四弾 『 Manhattan Reverie 』となるわけですが,結論から言うと,良くも悪くも,ヴィーナス度が前作にも増して強くなった印象を受ける仕上がりです。

バイラークが老熟して聴きやすくなったのか,あるいは原氏のリクエストなのか。おそらく両方なのでしょうが,以前のハード・エッジなバイラークからは想像できないくらいの穏やかな彼の姿がそこにあります。随所に鋭いフレーズもちらつかせますが,全体のトーンは柔らかく穏やか。往年のバイラークを知る者には少々物足りないかもしれません。盟友ジョージ・ムラーツとビリー・ハートとのトリオですがら,そのあたりの息はぴったりで,完成度は高いと思いますが,う~ん,どうでしょうか。個人的にもう少し尖がっていた方が好みです。これじゃ,第二のエディー・ヒギンズになり兼ねません。

ということで,出気は素晴らしいが『 Romantic Rhapsody 』には少し劣る,といった評価になります。