雨の日にはJAZZを聴きながら

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Lars Jansson 『 Ballads 』

2006年11月14日 20時45分21秒 | JAZZ
ここ数日の間に急に寒さが増してそろそろ冬も近づいてきた感じです。こんな季節の変わり目には決まって毎年風邪をひいてしまう僕なんですが,今年も案の定,1週間前から関節痛と咳,喉の痛みが続き全然良くなりません。しかも今日は当直。解熱剤の座薬を入れて頑張っています。

さて,こんな季節に毎年聴きたくなるのが僕の場合Lars Jansson(ラーシュ・ヤンソン)なんですね。欧州ピアニストの中でもヤンソンは特別な存在で,日常的に聴き流すにはもったいない有り難いピアニストです。盆暮れとまでは言わないまでも,一年の内で,ここぞ,という時に棚から取り出してトレーに乗せ,静かにヤンソンの音楽を味わう。ヤンソンのJazzに浸る。そういった聴き方が適切な感じがします。あの比類なき美旋律は聴き過ぎてはいけないのです。いつも聴く時には新鮮な気持ちで接したい,そんなPianoだと思うのです。

以前にも書いたことがありますが,現在の欧州ピアニストは乱暴に言い切ってしまうと,みんな<キース・ジャレット系>ではないかと思っています。キースの遺伝子を引き継ぎながらも,自らが育んだ遺伝子も継承し,彼らの国々の風土,習慣などからの環境因子も取り込み,確実に進化したキース系ジャズが欧州には増殖しています。そして,そんなキース系の超進化型ミュージシャンの最右翼がラーシュ・ヤンソンではないかと思います。昔「スウィングしなけりゃ意味が無い」なんて言葉がありましたが,今はそんなものはJazzには必要ないのです。スウィングはJazzの必要条件ではなくなったのです。ひたすら美しい旋律を奏でること,そのことこそがJazz Pianoに求められているのです。

あの美旋律は,スウィング~ビバップ~ハードバップと進化してきたジャズの方法論の延長線上には発生しない手法から生まれていると思われます。バド・パウエルを何万回聴こうが,ピーターソンの早弾を完璧にコピー出来ようが,決してそこからはあの旋律は生まれてこないものです。彼の生まれ持った類稀な美意識,メロディー・センス,そしてスウェーデンという豊かな自然環境から得た感性。それらが彼の指先から自然発生的に紡ぎ出てきた結晶のような物なのでしょう。彼にとっては,ジャズ・イディオムは自身の音楽を具現化するための手段に過ぎないのでしょう。

本作『 Ballads 』は1991年から2000年の間にImogenaに吹き込まれた作品群から珠玉のバラード・トラックだけを厳選抽出したコンピレーションです。。全18曲でこれからヤンソンを聴いてみようという方にはお勧めの1枚です。1曲目が《 Hope 》で2曲目が《 The Tree 》で,単なる名盤『 Hope 』の1曲目と2曲目の曲順をひっくり返しただけですが,この2曲が彼のベスト・オリジナルですから初心者には見逃せません。個人的には,『 A Window Towards Being 』からの《 More Human 》, 《 Marionette 》あたりも愛聴曲です。まさにヤンソンの魅力がぎっしり詰まった宝石箱のようなアルバムです。

Lars Jansson official homepage (日本語)はこちら。国内盤の試聴ができます。http://www.lars.jp/index.html