部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

2013年12月公演

2013-12-16 | 文楽



■12月公演

【大塔宮曦鎧】(おおとうのみやあさひのよろい)
 
  六波羅館の段
  身替り音頭の段

【恋娘昔八丈】

  城木屋の段 
  鈴ヶ森の段
    


   【 配役表 】


【大塔宮曦鎧】

本公演の方は何と言っても明治29年(1892)より121年ぶりの復活上演という「大塔宮」に注目。

といっても、1回目に見たときは、うーーん… ぱっとしないねぇ、という印象しか私にはなく。
が、再見する内に時代物らしさ、キャラの面白さが伝わって来て、よくできているなぁと気付くという。
ごめん、遅くて。

『六波羅館の段』では、常盤駿河守範貞(玉也さん)が斎藤太郎左衛門利行(勘十郎さん)相手に、
「(後醍醐天皇の若宮の母)三位の局にわしゃほの字、「恋という大病」に罹ったった!」
と色ボケなことをくどくどと語っています。

あの、玉也さんが! でれでれと! 
なんということでしょう… 
しまいには局の香の残る浴衣に頬擦り擦り…

見損なったよ、玉也さん!(ちがいます)

しかし相手の斉藤太郎左衛門という爺さんは、己を捨てて先の戦で名をなしたのですが、それをいくら誉めそやされようと、おだに乗らぬ一徹な爺さん。

そんなカタブツ爺さんに恋だの惚れただの惚けたことを言うもんだから、爺さん、我慢ならず
 「聞いてられっか、わしゃ帰る!」
と呆れかえるのですが、その気持ちよっくわかります、斉藤殿。
そのくらい、範貞のアホウのほの字ぶり、鼻の下の伸びっぷりと思ってください。
対する太郎左衛門は「妓夫(ぎゅう)とやら、もうとやら」とかダジャレもぴりっと光る侮れない男。

そこに登場する、三位の局と若宮を預かる永井右馬頭(※ながいうまのかみ、と聞くとついついウマ面の長い顔を思い浮かべますが、そんなことはありません)
の妻・花園(和生さん)。

この花園、めっぽう気が強いおなごです。

一徹爺さん・太郎左衛門に一歩も引かぬ芯のある女。和生さんの真骨頂ですね。
「置いて貰お埃が立つ!」だの「年寄りの云い損ないは見苦しい」だの、口でも負けてませんが、
若宮の首を討ちに行こうとする太郎左衛門を、ちょっと待て、と長袴を後ろから踏んづけてびりりと破くわ、太郎左衛門の被っている烏帽子を引っ張って、太郎左衛門、帽子のあご紐でぐえっと首締められるわ。
それはそれは、負けない女。
ここのやりとりはとても面白いところでした。

太郎左殿、そんな花園に負けたフリをしてあげたんだろな、と後になれば思うのだけども。

このように、発端ですでに各人の人物造形がしっかり伝わってきて、物語に入りやすいのでした。


『身替り音頭の段』

ここでは、音頭、踊り、が文字通りポイント。
まず、若宮・局に音頭をやれとせがまれ、
 「えええ!? こ、これは迷惑千万!」
と慌てて断るも、渋々踊り始める右馬頭。
その右馬頭を遣うのは玉女さん。

玉女さんが… 
踊ってる…!  

ちがうちがう。 あくまで右馬頭が踊ってます。右馬頭が踊ってるのですが。
ついついニヤニヤしてしまうのはなぜでしょう。

そして若宮の首を討ちに太郎左衛門が現れると、村の子供たちと若宮、鶴千代(若宮の身替り。右馬頭・花園の息子)がいくつも下がる灯籠の灯の下で輪になって踊り始めます。
そこの音頭の調べと灯籠の薄明かり、子供たちの揃いの浴衣、いじらしい浴衣の肩上げ腰上げ、我が子の首を討たれるか否かを固唾をのんで見守る花園。
幻想的かつ息をのむシーンです。

薄暗いのでうっかり寝てしまいがちですが、現にうつらうつらしましたが、
それダメ。ぜったい。

そこで、一徹爺さん・太郎左衛門は自分の孫をいつの間にか踊りの輪に混ぜて、若宮の替りに首を討つのでした。
若宮の身替りの鶴千代、そのまた身替りの孫・力若丸。
力若を討った後の太郎左衛門の嘆きが痛みとなって観客の胸にも迫ってくるところです。
「今の音頭を引導にて、魂冥途の鳥となり、父よ母よと呼ぶついでに
 こりゃ、祖父をも呼んでくれよ」
と伏して泣く一徹爺さん。
そんな爺さんを勘十郎さんが勘十郎さんの勘十郎さんであるための!

何言ってるかわかりませんが、とにかく、勘十郎さんの太郎左殿は素晴らしかったってことですね。

この演目は、いずれまた再上演されることでしょう。
私が予言します。
根拠は特にありませんけども。
あるとすれば、子供の浴衣とかせっかくたくさんお揃いのを作ったのにもったいないんじゃないかなー、って。

いや、そういうことでなく。
携わった方々のご苦労も報われたであろう見事な舞台だったと思います。

ぱっとしねーとか言ってたのは誰だ。
オレだ。ごめん。




【恋娘昔八丈】

珍しく舞台が江戸。
縄で縛られ身悶える清十郎さん、じゃなくて、主人公・お駒。
番頭・丈八(簑二郎さん)のチャリがめっぽうイキイキ。

以上3点が見ものの演目でした。

他はどうなんだ、なんかないのか、と聞かれますと





・・・・・・・




小一時間考えましたが、

・喜蔵(玉志さん)の「オットサ、アこう申せば、マ何とやら」ネタ
・馬! 最後、馬が出てくる!

しか思い出せませんでした…

いやもうこれは、緊縛のお駒を見るもんだ、それ以上のことは求めない。
でいいんじゃないでしょうか。
ダメですか?

お駒がそれはそれは嗜虐美溢れて、マニアでなくとも垂涎ものでしたね。
それでいてイヤらしくないは清十郎さんだからでしょう。

最後はハッピーエンドで大団円。
特に後を引くことなく劇場を後にできるのでした。めでたしめでたし。

え。褒めてるように聞こえませんか?




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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
よいお年を! (くらな)
2013-12-22 07:45:31
さむこ様

今年もお世話になりましたm(_ _)m
諸事情で今年後半は文楽から足が遠のいておりましたので、こちらのレポがたいへんありがたかったです。

来年はネット上だけでなく、劇場でもさむこ様にお目にかかれればと願っております。寒さ厳しき折、どうぞ御身体お大事にお過ごしくださいませm(_ _)m

今日は博多座文楽も千穐楽ですね。芸人の皆さんも大きな舞台はお仕事納めでしょうね。この場をお借りしておつかれさまでございましたと申上げさせていただきます。

来年も文楽を楽しみましょう!

くらな 拝
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よいお年を! (さむこ)
2013-12-22 18:46:09
◎くらな様

本当に今年は劇場であまりお目に掛かれず、寂しい限りでしたよー
そして、こんなへっぽこ日誌、なんのためにもならないのによくもまあ読んでいただき、ありがとうございました。

私も来年こそはちゃんと寝ないで観て聴いて、カッコいい観劇レビューを書けるよう頑張りたいと思います。(ムリ)

もちろん、変わらずに文楽座の皆さんを影ながら応援して行きたいと思っています。
時々文句言いながら。

来年はまたお目に掛かれますように~♪
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