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部活日誌

部活動(ひとり文楽部)の記録など

花形出番です

2014-06-08 | 文楽
【花形出番です】
「稽古するしかなかった」 
文楽三味線・鶴澤清丈(1) - MSN産経ニュース
(記事リンクは→ こちらから



産経新聞で4回連載です。
花形です。
出番です。

『でも僕には逃げ道がない。
辞めろという先輩に「やらせてください」と
泣いて懇願しました』

じーーーん・・・

「僕」てほんとに言うたのかどうかは置いといて。
なんだかいつも飄々として見える清丈’さんにもこういう苦悩の時期があったんだなあ、
なんて今更ですが当たり前のことに思い至り、目頭を押さえざるを得ないわたくしでありました。

今度の若手会では寺子屋ですもんね。
よくぞ辞めずにいてくれたと、その時の先輩の方にも感謝、感謝です。






2014年4月公演◆菅原伝授手習鑑 (二段目-3)

2014-06-03 | 文楽
しつこく行きます。


【丞相名残の段】

えー、まず最初にわたくしがしたことは

「だめを」

の続きの確認でした。

「だめを聞かして、出でて行く」が正解でした。
だめを聞かす?
「たくみのし残し、だめを聞かす。」ってなんだ?
だめ、って人形遣いの方が人形拵えの時に使ったりしますよね。清十郎さんブログでいつか解説されてましたけど。
小細工をして出てったってことですかね。宿祢太郎、なんかしてましたっけ?
大きな声の「だめを!」に気を取られていて見逃していたかもしんない。

そんな、「だめをショック」は置いといて。

いよいよ、道明寺、昼の部のメインイベントです。

土師兵衛・宿祢太郎親子の悪だくみによる贋の迎い(めがね男子)が来て、菅丞相は覚寿の屋敷を出立します。
立田の前の姿が見えない事に不審を抱く覚寿、そらっとぼける宿祢太郎。
しかし、奴宅内が池の底に沈む立田の死骸を見つけます。
太郎に罪を着せられそうになる奴、
「ごはりまするで、ナイ、ナイ、ナイナイナイごはります」
出た、奴ことば! やっこ出てくるとこれが楽しみでごわりますな。

こっからが覚寿の真の強さが、ネイ、見られるでごわりまするでごわりますよー

立田の死骸の口に押し込まれていた布は犯人・宿祢太郎の着物の褄の布。
目ざとく見つけた覚寿、宿祢太郎をぶっすり!
しかも、そこへ真の迎え・輝國が訪れると

「こいつはマちっと、苦痛をさす」と刀を刺したまんまの宿祢太郎を放置ときた。

出ました、「苦痛をさす」!!

いやはやおっかねえ婆さんでごわりまするなー

で、菅丞相の身代わりの例の木像が駕籠に乗ってたかと思えば、え、本人?
と思ったれば、また木像?
いったいどっちやねん!的なしかけに右見て左見てしてるうちに、はっ。と気づくと寝落ちているという…

いっけね、と思って慌てて舞台に目を戻せば、

「あの声は子鳥の音、子鳥が鳴けば親鳥も、泣くは生ある習ひぞ」とというお嘆きが

「鳴けばこそ 
  別れを急げ 鶏の音の 
 聞こえぬ里の暁もがな」

というちょっと遠回しで私にはわかりにくけど皆さんはどうなんですかそれ、という歌に詠まれてて、えええっ、もう終わりだ、ここ。なとこまで飛んでいたのであった。

いやいや、「であった」じゃないって。

そう。冒頭で「メインイベント」とか言うておきながら、不覚にもうつらうつらしてしまったこの段。
咲さんの語りのリズムが私の睡眠リズムに合ってしまったとしか・・・

すみません、人のせいにしてしまいました。

あと、やはりどうしても弱い者贔屓というか、主君のために命まで捧げざるを得ない人々に気が行くのがわたくし達市井に生きる者の常と申しますか。
立田は気の毒ですけれども、気の毒ねーで終わってしまい。

そもそも、菅原道真はすごい人なんだ、それはみんな知ってるよね?という大前提でもって話は進んでいるわけですが、それを上乗せしたとしても、いや、割り引いてもか?
とにかく菅丞相の凄さがいまひとつ伝わってこないお話になってませんか?

と、更に作者のせいにまでしてうつらうつらした己を正当化する。

そうだ、ここまで触れるのを忘れてましたが、菅丞相役の玉女さん、立派でしたね。
あとあとのブチ切れ場面までは忍耐忍耐また忍耐、のこの役を、じっくりと大きく端正に。
さすがでございました。
あと、あれだ。輝國。
清十郎さんが輝國を輝國らしく現していて、これはぜひとも汐待の段も上演してもらいたかったと思いました。
あ。でもうそうすると、清十郎さん、輝國と桜丸の一人二役行ったり来たりでえらい大忙しだな(やりません)











2014年5月公演

2014-05-27 | 文楽
 

思い切り中途半端ですが、まずは5月の日誌を書いとかないと。


国立文楽劇場開場30周年記念
七世竹本住大夫引退公演


【第一部】

 増補忠臣蔵    
    本蔵下屋敷の段
    
 恋女房染分手綱 (引退狂言)
    沓掛村の段
    坂の下の段

 卅三間堂棟由来
    平太郎住家より木遣り音頭の段

 
【第二部】

 女殺油地獄
    徳庵堤の段
    河内屋内の段
    豊島屋油店の段
  
 鳴響安宅新関
    勧進帳の段


【配役表】


とうとう住大夫引退公演の最後も最後ということで、チケット争奪戦からにわかに熱狂していた感の今回の公演。

かくいう私も千穐楽、その勇退を拍手でもって見送って参りました。

最後の沓掛村を語り終えた後、4月大阪の千穐楽と同じく休憩時間に住さんからのご挨拶があり、簑助さんからの花束贈呈がありました。
おふたりが手を固く握り合ってしばらく涙をこらえている時間、客席はそりゃもう泣くしかないでしょ、ってくらいのすすり泣きの嵐でした。

その前に、小住さんが沓掛村で白湯汲みに入っておられたんですが、住さんの八蔵母の泣きくどきの部分を聞いた小住さん、思わず涙してましてね。
そんなの見たらまたほら、泣けるのがおばちゃんで。
やめれ! 泣かせるの反則!
と思いましたよー 

しかし、舞台自体は淡々と進み、いつもの住さんの沓掛村でした。
最後の最後まで休むことなくおつとめになられたこと、本当にお疲れ様でした。
89歳まで現役の太夫を全うされたことは、なんと言っても素晴らしいことだと思います。
おしあわせなことです。
しかも最後にファンがこうして盛り上がることができる舞台も用意して頂き、心からありがとうございました、という気持ちです。

まあ私達ファンにとっての本当の「住ロス」は、次の公演に
「あ。住さんがいない…」
て思った時にやってくるのではと思いますけども。



さ、そんな住さん引退のセレモニー以外の舞台ですが。

「本蔵下屋敷」

実は私はこれでうっかり泣いてしまいましてねー 
うっかりってこともないけども。
忠臣蔵のスピンオフ、桃井若狭之助と加古川本蔵主従のお話で、単純っちゃ単純、うまいこと説明してんなー、なんて思ってたんですが。
若狭之助の

「へつらうても苦しうない、へつらうても苦しうない」

で、思わず、つーーん(T_T) と来ちゃって。

本蔵が賄賂によって主人若狭之助を助けたことで若狭之助は「へつらい武士」「卑怯者」と噂になってる。
でもそれがなんだってえの?
俺はそのおかげで短慮もとどまりこうして命もある、お前という忠臣のおかげだ、
って認めてくれるんですよね。
なんなの、血気さかんで気短な殿と思わせといて、その分別!
「義を見てせざるは勇みなし。ただこの上の頼みといふは三世の縁。未来で忠義を尽してくれ」
ですってよ、もうもう、このサラリーマン泣かせが!

思いがけず、と言ったらめっちゃ失礼ですけど、紋壽さんの若狭之助が若々しくてまさに若狭之助でした。
そしてまた、こういった忠義に縛られている男たちの苦悩が、津駒さんてほんと似合うんですよねー
それと寛治師匠の三味線ね。 後半は華麗な手のついた曲でしたねぇ
寛治師匠の襲名披露公演で選んだのがこの増補忠臣蔵だったという。
それがここで聞かれたのは誠にラッキーなことでございました。


「沓掛村」

なんといっても、簑助さんの与之助!
子供らしい可愛らしい仕草と落ち着きのなさといったら。
アホ一歩手前みたいなところがほんとリアルですよね。
アホ一歩手前、て。すごい失礼な言いぐさですけども、じゃあなんて言ったらいいんだろ。
子供ってああだよなーって思ったよ。
このこのー、あたっぽこしもないほてっぱらめ!←気に入ってる
勘十郎さんの八蔵もあったかくって血の通った感じがとっても好ましかったです。
そして文雀さんの八蔵母。
八蔵が火鉢の灰を ふっ て吹くたびに見せるあの煙たそうな自然な仕草には目が釘付け。

簑助さんと文雀さんが住さんの語りで舞台に上がっているのには、しみじみ贅沢な事だなあと思いましたね。
紋壽さん、玉女さんも悪党熊造・寅吉という端役で、にぎにぎしく引退に花を添えたかたちの舞台でございました。



「木遣音頭」

簑助さんのお柳は初めて拝見。まったくもって美しいお柳でしたねー
柳の木が打たれる時の苦痛の表情には見惚れました。
嶋さんの木遣音頭にもうるっと。というか、私は木遣り音頭は
「むざんなるかな幼き者は 母の柳を都へ送る~♪」
で100%泣くんですけども。ツボなんですよね、子供の健気な様は。三吉とか太郎吉とかさ。

そして今回の柳の葉っぱはどうも頭に刺さりがちな葉っぱでありました。
大師匠さまの頭にささる柳の葉っぱ… 足遣いの頭巾のてっぺんに真っ直ぐ刺さる葉っぱ…
笑うところじゃないので辛かったです。



「女殺油地獄」

色んな意味で鉄板でしたね。
勘十郎さんの与兵衛はますますワルだし、滑りもツルツルっと。
実はこの話、すごく好きで。
突き放した不条理さはぞくぞくします。
小心者のワルががーーっと転落して行く様って、普通、もっときっかけとか生い立ちとか、どっかしらを強調して見る者を納得させる部分があるかと思うんですが、文楽の与兵衛にはそれがあんまりなくて、私はそこが好きです。もっと与兵衛が非情でもいいくらい。
三味線泣かせの曲だって燕三さんが仰ってましたけど、ほんと、変なとこに(変、て)テーンとか来て不穏な空気が醸し出されるんですよね。
咲さんは7月公演を最後に油はおしまいにするって仰ってるそうですが、じゃあ今度からどたなが?
勘十郎さん以外の人が与兵衛をするとしたらどなた?


「勧進帳」

弁慶は左遣いも足遣いも出遣いで、ほんと、足遣いには惚れ惚れしましたでー
「ワシの勧進帳の弁慶の足で今の嫁さん惚れよったんや」
とはどなたのおことばでしょうか。
しかし、それもわかるわーと思いましたね
玉勢さんの汗だくでしかもポーカーフェイスで遣っておられるところは穴があくほど見たね。
女性ファン急増だったのでは。
後半の簑次さんもいつもながらのいい音立てて足拍子踏んでましたし、ほんと、あんたどこ見てたんだ、って言われるくらい足遣い(時々三味線)に目を奪われたのでした。
英さんの弁慶は、うーーーん・・・・・





さ、5月もおしまい。しばらくは文楽の公演ともおさらばです。

その隙に、もはやライフワーク化している「菅原」の日誌の続きをば…
日誌なのにリアルタイム感ないことこの上ナシ。








2014年4月公演◆菅原伝授手習鑑 (二段目-2)

2014-04-30 | 文楽
【杖折檻の段】

文字どおり、覚寿が娘ふたりを杖で ちやう/\/\、 と打擲する段。
びしびしびし、でも、ガシガシガシ、でもなく、ちょうちょうちょう。
そこ、どうでもいいですね

気の毒なのは庇って巻き添え食った立田前ですよ。ほんと、立田はかわいそう。
夫の宿祢太郎に「無楊貴妃」だの、「お次の前」だの言われ、挙句殺されるという。
作者はいったい立田前になんの恨みがあったんでしょうか。

苅屋姫の実母である覚寿は育ての父となる菅丞相への義理に背く娘のふしだらを「ちょうちょうちょう」と咎めなくては、家の主として筋が通りません。

しかし、それを障子の中から菅丞相が止めると、

「生みの親の打擲は、養ひ親へ立つる義理。
 養ひ親の慈悲心は、生みの親へ立つる義理。
 あまき詞も打擲も、子に迷ふたる親心」

と本心を吐露しながら泣き伏すのですねー

和生さんの覚寿はさすが、気丈さ、強さ、品格というものがひしひしと伝わってきました。
が、ここらへんの母としての心情は、呂勢さんの語りで増幅されたように思います。
私には、覚寿が気強いだけでなく、呂勢さんによって、哀れなひとりの老母に思えてなりませんでした。
ま、老母、つってもおそらく50くらいじゃないんですかね。
いや、下手したら40代?
老母・・・
同世代・・・
老母・・・ 

と一瞬頭真っ白になりかけましたが、「六十路に余って白髪頭」とありました。
じゃ、苅屋をいくつで産んだんだって話ですけど。


この段で唯一残念だったのは、菅丞相の木像ですよ。
丞相さまが3度も彫り直して魂込めた木像ですよ?
それがあなた、襖を開けてじゃーーーんと出てきたのが、アレだ。

なんか違う・・・

作った人には申し訳ないですが、あれじゃ丞相様の身代わりにならんと思うわーあかんわー



【東天紅の段】

土師兵衛と宿祢太郎の親子が菅丞相暗殺の悪だくみをしているところを立ち聞く立田前。

「南無三宝一大事、先へ廻つて母様へお知らせ申して。
 イヤさうしては、イヤ、言はいでは又こちらが、言ふてはあちらがこちらが」

と迷ってる場合か!なんですが、立田いい人だからさ。
いい人だから自分の説得で思いとどまってくれると信じちゃってるんですね。
いい人って言うか、世間知らず?
まあ、あんな赤っ面の夫でも愛してたのかもしれないし。

そんな立田をなんと、夫の宿祢太郎は刺殺して池に投げ込むんだから恐ろしや。

宿祢太郎のこと、私はなんとなく単におバカで考えなしの男だから妻殺しも親の言いなりなんだ、と思ってましたけど。
とどめを刺す時には一瞬躊躇しているようにも思いましたけど。

それが、父親が挟箱の蓋に鶏を乗せ、池に流した時のあのバカ笑い!
玉志さんの遣う太郎と、咲甫さんの狂ったような笑い声に、背筋が心底ぞっとしました。

「こいつ、狂ってる・・・」

って。

「そりやこそ鳴いたは東天紅」
「アリヤまた歌ふは東天紅」

て、ほんと薄ら怖いってば。

そして、とどめは咲甫さんの


 だめを



だめを・・・?

そ、それで終わらせるんだ、ここは・・・


言い切られて、まったくもって、後味の悪い段なのでありました。
「だめを!」でなんとなくうなだれてしまうという。


(・・・ウソ。 
 え? ニヤニヤ… だめを、の続きはなんで始まるんだ、次の段は?
 とちょっとおもろかった)




2014年4月公演◆菅原伝授手習鑑 (二段目ー1)

2014-04-29 | 文楽
【道行詞甘替】 【安井汐待の段】


「杖折檻」の前に、今回は飛ばされてますけど道行と安井汐待があります。
ついでなんでちょっとばかり。

この道行詞の甘い辛い?甘じょっぱい?みないなところでは、斎世親王と苅屋姫のふたりを見つけた桜丸が飴売りに扮して
「飴の荷箱の片々に、御ふた方を入れ参らせ」
覚寿の家目指して担いで行くわけですが、顔に似合わず力持ちなのねーとびっくりしますよね。
人をふたりも担いで行くってあなた。
沼津の平作だったら一歩たりとも動けませんね。
桜丸、優男に見えて実はマッチョな西島秀俊タイプでしょうか。
もしくはライアン・コズリングとか?
そうだったら、八重、相当羨ましい。

で、飴買いに来たお客から菅丞相が筑紫に流されることになり安井で汐待ちをしていると聞き、
なんてこった、こーりゃたいへんだ!となるわけだ。

辿り着いた安井では菅丞相の左遷は自分たちふたりのことが引き金と知り、
桜丸も、仲立ちした身にとって
「辛さ苦しさ桜丸、骨にも身にも沁み渡り」
と自分の軽はずみを激しく悔いるのであります。

そしてここがあると輝国のいいもんぶりがよりわかるんですけどねー
「表を立てて心は情け、」
と事の筋を立てつつも菅丞相を土師の里へ寄れるよう計らったり。
姉の立田の前も「東天紅」であっさり夫に殺されてしまうばっかりではなく、一家の嫁として娘として姉として、至って常識的なとこもあるってちらっとわかるし。

輝国の提案どおり、丞相、苅屋は覚寿の元へ、親王は法王の御所へと別れゆく~