残像モノクローム

遠い記憶の彼方にある故郷。
そして今、こころに渦巻く断片の想いを。
と、思い始めたのですが・・・。

7月の読書

2011年08月02日 12時33分15秒 | Weblog
●海炭市叙景  佐藤 泰志/著

海炭市という架空の町を舞台にした、18編の短編が収録された短篇集。
海炭市というのは、かつては炭鉱で栄えた町。
海炭市周辺に住む様々な市井の人々が描かれていく。
明るい未来があるとは決していえないその町で、鬱屈や諦めの蓄積と共に過ごす人々のささやかな日常を切り取った作品。
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正直、読んでいて楽しいという作品ではない。
けれど底辺に近い生活のの中で、ひっそりとそしてしたたかに生きていくという
生命力を感じる本です。



●森崎書店の日々  八木沢 里志/著

失恋の痛手から会社を辞め、ひたすら眠って毎日をやり過ごしていた貴子は、
神保町で古書専門の森崎書店を経営する叔父のサトルに誘われ、小さな書店の2階で暮らし始める。
ふさぎ込みがちな自分を何くれとなく気遣い励ましてくれるサトルやユニークな常連客、
近所の喫茶店で働くトモコらと触れ合ううちに、生まれて初めて貴子は本の世界に引き込まれてゆく。
そして、最低最悪の失恋に決着をつける時がやってくる。
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まぁ、読んでも損はないかなぁという感じ。
主人公よりも、脇役のおじさん、その奥さんに魅力を感じる。
この二人のスピンオフというものがあるなら
ぜひ読んでみたい。


●古道具屋皆塵堂  輪渡 颯介/著

実家の道具屋を継ぐため、曰くつきの品が集まる「皆塵堂」で修業することになった太一郎。
幽霊なんて信じないとうそぶく太一郎の周りで、不思議な出来事が次々と巻き起こり…。
切なくて、ほんのりおかしい人情怪談騒動記。
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自分にとっては、なんとなく読んでいるうちに引き込まれる作品でした。
特別どうだという設定ではないのだけど
この本も回りの脇役たちの設定が際立っていて
話をうまーく引っ張っていってくれる。
読んでみて、と言いたくなる一冊です。





●真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ  大沼 紀子/〔著〕

エープリルフールの晩に、嘘のような本当の家庭の事情により、
パン屋さんの2階に居候することになった女子高生の希実は、
半ば強制的に店の手伝いをさせられることに…。
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本のカバーは女子中・高校生向きに作られているので
書店で見た時はひいてしまうと思いますが
中身はとてもいいです! おすすめ!!

カッコウの親鳥のように子供を托卵するかのように
他人に預けられて育った主人公。
そんな自らの心の傷を知るが故に大きな優しさを持つすでに亡くなってしまった女性。
その女性の夫らが波紋のように
その優しさをさらに大きく広げていく。

久々にいい本でした!

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