月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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デネブ・4

2015-06-13 05:16:09 | 詩集・瑠璃の籠

永遠の青い氷原の上で
赤いスケート靴をはいた
人形が踊っている
この靴さえ履いていれば
すばらしいダンスが踊れて
永遠に
みんなのあこがれになれるからと
人形は誰も見ていない
氷原の上で踊り続ける

どんなに疲れても
靴を履いている限り
人形は踊り続ける
それは美しく手をふり
足をあげてくるくると回り
風の音楽に合わせ
狂ったように人形は踊り続ける

魂の乾ききった人形を
靴が永遠に踊らせるのだ
虚偽を食べすぎた魂は
瞳の奥で
乾いた梅の実のように縮み
頭蓋骨に張り付いている

誰かの声が聞こえる
靴を脱ぎなさい
これ以上踊り続けたら
あなたはあまりにもあわれなものになる
もう人間ではなくなる
魂に霊水をやり 安定させるためには
踊るのをやめなければならない
靴が脱げないというなら
足を切りなさい
人間の魂を失うよりは
足を失った方がいい

みんなのあこがれになりたいという
馬鹿な夢は捨てなさい
あきらめて すべてをちぎり捨てなさい
もうそんなことは幸せではないのです
子供だった頃の苦い夢なのです
靴を脱ぎなさい
脱げないのなら足を切りなさい

誰も見ていない青い氷原の中で
赤いスケート靴をはいた馬鹿が
永遠に踊り続ける
あこがれの馬鹿になりたくて
踊り続ける
人間だと思ってよくみたら猿が踊っている
人間によく似た猿が

足を切りなさい
魂が完全につぶれる前に
足を切りなさい



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