月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
コメントはゲスト・ルームにのみお書きください。

アポリュオン

2018-01-24 04:14:17 | 詩集・瑠璃の籠

梢を下に 根を上に
さかさまに生えた
ユグドラシルを燃やせ

黄昏を迎える神々は
神ではなかった
あれらは
凍った霧の向こうで
影絵のように活動し
自分を神のように大きく見せていた
下賤の群れなのだ

八本足のスレイプニールは
走れはしない
盗んできた足が邪魔で
歩くことすらならず
厩の隅で嘆いている

空駆けるオーディンの神威は
幻なのだ
小さな魂を傲慢の煙で包み
人間に嘘を吹き込み
妄想の糸を引っ張り出して描いた
恐ろしく滑稽な馬鹿なのだ
浮気者のゼウスよりも拙い

逆襲の神々にせめこまれ
ヴァルハラは滅んでいく
幻想の天国は蠅のような嘲笑で満たされ
凍った霧の崩壊の中で
子供じみた幻想の王国は沈む

白亜の太陽は登り
大地は色を塗り変えられ
霊魂を挿げ替えられ
全く違うものとして
よみがえるだろう

ガラスのようにもろく
ユグドラシルは倒れる
実もなく葉すらもなく
ただ人を馬鹿にする
滑稽な舌ばかりがそれから生えていた

幻想の神園よ滅びよ
もはやおまえに用はない
それは人類の幼少期の
脆弱な自己を支えるために
ある時期有効に働いた
苦い夢にすぎなかったのだ




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 冬の掲示板 | トップ | アポリュオン・2 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

詩集・瑠璃の籠」カテゴリの最新記事