<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

中国 今回の利下げを改めて考察する

2012-06-11 | 中国経済



先週、中国が3年半ぶりに利下げを発表した。
0.25%という低い変動幅だったが、何より利下げを行ったということが大きい。
これを受けて、中国が本格的に財政緩和に舵を切るのでは・・・との憶測が急速に拡大している。

今回の利下げ、特に注目したいのは「発表のタイミング」。
かなり唐突という印象で、発表に驚いた関係者も多かったはずだ。
筆者も近い将来、利下げ等の緩和策が打ち出されるだろうと予測はしていたが、こんなに早く発表されるとは正直言って想像していなかった。

こうした発表には、必ず要因があるはず。
(筆者は、ついついそう思ってしまうもので。。。)
そこで、筆者なりに推論を展開してみたい。

まず、最近の景気指標をみると、中国経済の低迷を示すデータが多いことが分かる。特に不動産関連は昨秋の引き締め策強化以降、半年以上にも渡って不振の状態が続いており、業界関係者は緩和策の発動を今か今か・・・と待っているような状況と言っていい。

しかしながら、政府としてはインフレ懸念から簡単に政策緩和の方向を打ち出すわけにはいかないのが実情。
そんな中、消費者物価指数の上昇が比較的落ち着いていることが、今回の利下げ背景のひとつと言える。

ここで興味深いのは、経済全体の勢いは鈍くなっているにも関わらず、貿易関連の数値は予想に反して力強い伸びを示していることだ。
本来、ここまで外需が堅調であれば、もう少し様子見という選択肢もあるはず。
ただ、これは相対的に考えると、「内需拡大による安定成長」という中国政府の方針がいかに難しいかを表しているとも捉えられる。
中国経済における「内需」というものが、不動産や高額物品を多分に含んでいるという実態も透けて見える。


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一方で、中小企業の資金繰りの悪化もかなり前からの懸念材料。浙江省で発生した中小企業経営者の夜逃げに代表されるように、中小企業がノンバンクからの融資に依存しているという実情も指摘されている。

こうした中でのわずか0.25%の利下げ。
上記の中小企業の資金面での支援という観点から考えると、いかにもパンチ不足との感が否めない。
むしろ、今後の利下げに向けた大きな期待といったところか。。。

加えて、経済情勢が不透明な中で、これまでの融資方針を転換して、中小企業に積極的に貸出を行うとも想像し難い。
つまり、実態経済に与える影響は軽微ということが予想される。
ま、こんなこと、優秀な中国政府担当者にはお見通しだと思いますがね。

今回、もうひとつ興味深いのは「金利の一部自由化」もあわせて実施したこと。
利下げ後のある金融機関店頭金利をみると、貸出利率は低下、預入利率は現状維持という状態だった。
つまり、簡単に言うと「貸出は増やしたいが、預金も減らしたくない」という銀行側の意思を反映しているワケだ。

日本の金融機関をみていると、にわかに信じがたいかも知れないが、中国経済は資金需要が旺盛なので、中国の銀行にとっては預金が集まらないと資金がパンクする危険性があるのだ。
したがって、利ざやという観点から考えると、利下げに伴って貸出、預入双方の金利を調整するのが一般的だが、敢えて預入だけは据置くという処置に出たのだろう。


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中国にとって、いま最も気になるのは欧州経済の行方だろう。
折りしも今週末にはギリシャ総選挙を迎える。
ここで波乱があれば、欧州経済が一時的に混乱し、その余波で中国経済が影響を受ける可能性は否定できない。

こうした観点に立つと、国内的な要因とあわせて、他国の選挙という不透明な要因に対処すべく、先手を打って一定の利下げを行ったと見ることもできる。
中国政府にとって、0.25%という数字はいつでも挽回できる率。
しかも実体経済が今後好転するか、悪化するかという二者択一で考えると、今や後者の見方を選択するほうが多いに違いない。
したがって、今回の措置は一種のくさびのようなモノと考えるべきだろう。

筆者が考えるに、国家政策というものは、色々な要素を考慮して、最大公約数を見つけ出して決定されることが望ましい。
だって、この難しい現代社会において、万人にとって望ましい政策なんて実現不可能ですから。。。

今回の利下げも、そのような観点で見ると色んな推測ができて面白いですよ。
また、その後の結果も追っていくと更に面白いかと。。。

冷静に考えると、超低金利を10年以上にも渡って続けているようじゃあ、金融政策なんて語る立場にないですよね。
いやはや、国民の一人として何とかしたいもんです。。。

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