<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

加熱する中国家電販売戦争 パート2(新興勢力編)

2011-08-24 | 中国ビジネス
前回、市場の主流について言及したので、今回は新興勢力について。

中国では最近、インターネットの爆発的な普及に伴って、ネット販売が盛んだ。
そこで圧倒的なシェアを有するのが「陶宝(タオバオ)網」。



親会社のアリババに対して、ソフトバンク孫社長が投資しているのも有名だが、それ以上に同社の急成長ぶりは目を見張るものがある。
タオバオは、BtoC、CtoC双方の面をあわせ持っていることから、「日本のヤフオク(ヤフーオークション)が巨大化した楽天市場のようなもの」と捉えることができる。

日本でもカカクコム等の比較サイトで価格比較を行った上で、ヤマダ電機などのチラシをチェックして購入先を決めるという賢い消費者が増えているが、中国でも同様の消費者行動が見受けられる。
また、エアコンやTV、白物家電等の大型・設置を伴う家電は家電量販店など既存の商流、PCやデジカメ、携帯電話等の小型・持ち運び型は新興勢力という使い分けも行われているようだ。

ただ、タオバオには一般消費者がサイト設置しているものも含まれるため、トラブル(商品が届かない、偽物を掴まされた等)には注意が必要だ。
こうした根強く残る偽物文化や外国製品の高値安定が、訪日中国人観光客の旺盛な買物意欲の背景にあることも無視できない。

加えて、TVショッピングの拡大も期待されている。
日本の大手商社も業界大手の企業に出資して経営参画するなどの動きが見られるが、課題はチャンネル数の多さ。地方局が乱立し、今では60局を超える状態になっているため、人気番組でも視聴率は数%という現状。人口が多いことで割り引いて考えたとしても、この点は無視できないマイナス材料か・・・。

一方、拡大し続ける中国市場の獲得を狙う外資勢の攻勢も活発化している。
ヤマダ電機は昨年12月、瀋陽に第1号店を出店し、立て続けに天津にも出店するなど、今後も出店ペースを速めていくと言われている。
在中国日本人の一人としては、大いに頑張ってもらいたいと願うばかりだ。



しかし、ここでは敢えて苦言を呈したい。
現在の戦略が本当に中国進出にマッチしていると言えるのだろうか?ということだ。
同社は「留学生を中心に採用し、彼らに日本式の接客を学ばせた上で、日本式の販売手法(百貨店方式でなく直接販売)を用いて中国消費者の支持を得る」との方針。
だが、そもそも異なる商慣習を受け入れてもらうこと自体、相当ハードルが高い。
これだけ現地系家電量販店が乱立している中、このように自分でハードルを上げることは自殺行為に近いと思える。

また、こうした「日本式サービス is No.1」という思い込みは捨てたほうがいい。
そもそもNo.1かどうかも怪しいし、現地の人間が受けているサービスはその国の歴史に基づいて築き上げられたものなのだから。

私自身、ヤマダ電機の顧客でもあるのでよく分かるが、同社の成功モデルは「他社よりも安い」&「ポイント制」にあると思っている。
であれば、よりシンプルにこの方向性を志向したほうがよかったのでは・・・と感じる。
そして、同社が急成長した当時のように、「中国国内でいかに安く仕入れるか」、「消費者にいかに喜んで、楽しく買い物してもらうか」を徹底的に追及していけば、可能性があるように思えてならない。
ポイント制についても中国流にアレンジして、例えば溜めたポイントを現地の交通カードのチャージに使用できる等を行えば、現地の政府や消費者との距離感もグッと縮まってくるだろう。
留学生を雇うというのは、耳障りはいいが、結局のところ外見上の話に過ぎない。こうした留学生が長く同社に留まるという保証はどこにもないのだから。

これだけ厳しい指摘を続けたのは、外資系家電量販店の厳しい現状があるからだ。
中国にいち早く進出した米国のベストバイ社は、上海を中心に9店舗を展開していたが、今年2月、進出からわずか5年で撤退を余儀なくされた。

上海市中心部の伊勢丹跡地に進出したドイツのメディアマルクト社も、日中の状況をみる限り、繁盛しているといった状況には程遠い。

中国は巨大市場であるが故に、資本力や知名度があれば簡単にシェアを獲得できると思い込みがちだが、外国人が想像している以上に「市場は未熟でもない」ということを肝に銘じておく必要がある。