<中国ブログ>中国サイコウ 元/上海駐在日本人が綴る日中経済の状況など

中国駐在時代の経験・知識をもとに、
最高(サイコウ)の日中関係の再構築を目指し、
日本と中国を再考(サイコウ)する

中国不動産バブルの行方・・・

2011-08-12 | 中国経済
「中国が不動産バブルの状況にあるのでは・・・」と言われて久しい。
日本の報道でもたびたび取り上げられるが、実際のところを知っている日本人は少ないのではないだろうか?
今回は、店頭に掲示されている物件なども踏まえつつ、とりわけ不動産の価格が高いと言われる上海の現状をレポートしたい。

まず、街中のどこにでもあるような不動産の店頭をスナップ。



平米当たり4万元(約50万円)前後の物件がズラリと並んでいる。
もはや東京並みの単価ですね。
ちなみに、ここに並んでいる物件、ほとんどが中古物件。
都心部の新築物件だと軽く1億円を超えますので・・・。

隣の店舗を見てみると・・・



5千万元(約6億2千万円)なんていう物件も!
いやはや、どこでこんな金額、稼いでいるんでしょうね・・・。

その隣も似たような状況。



しかも、最近は賃貸物件の家賃も急上昇している。
ま、物件の価格が上がっているということは、不動産の価値も上がっているわけなので、それもごもっともではあるが、生活者にとっては日本のように借地借家法で借主の権利保護がなされていないのが結構ツライ・・・。

こうした状況がどうして生まれるのか、筆者なりに考えてみた。

まず第一に、土地の希少性。
中国の大都市では都市化がドンドン進展しているので、優良な開発地を確保するのが難しくなってきている。
どこの国でもそうだが、便利な場所ほど値上がりの可能性が高いのだ。

第二に、値上がりを見越した投機の動き。
ご存知のとおり、中国人は商売の才覚に優れた民族。
街中でもカードゲームや麻雀を楽しむ光景が根強く見受けられるほど、賭け事が大好き。
こうした気質も手伝って、不動産投資はさながら賭け事の一種といった趣きすらある。
新聞の不動産広告欄の見出しが「贏(中国語で「勝ち」を意味する漢字)」となっているのは、その象徴とも言える。

第三に、中国不動産の特殊性。
中国では土地私有は認められておらず、底地は50~70年という長期間の土地使用権となる。
つまり、乱暴な言い方をすれば、不動産と言いつつ、マンションの一室という大きな箱(巨大な動産)を売買しているに過ぎないとも言える。
日本のように公示地価等に基づく合理的な不動産相場が形成されず、結果として不動産価格が急落しても暫くすると元通りという事態を繰り返しているのだ。
だから、不動産保有者は簡単には物件を手放さない。これが、また不動産の高止まりを生むわけで・・・。

この他、地方政府による都市開発の乱発や国民の投資先の乏しさ等、要因を見つけようとすれば幾つも挙げられる。

では、このような不動産バブル、いつまでも続くのだろうか?

この問いに対して、正確に答えられる人は誰もいないだろう。
だって、「社会主義市場経済」なんて、人類が初めて経験する経済スタイルなんですから・・・。
ただひとつ言えるのは、歴史的にみても不動産価格が上昇し続けた事例は皆無だということだ。
特に中国の場合、上記のような特殊性を有しており、「新築で完売した物件なのに住人がほとんど住んでいない」という奇妙な現象があちこちで起きている。
すでに巷では、あまりの不動産の高騰によって、売行きが鈍くなっているとの噂も聞かれる。
もはや一般市民が手の届かない価格にまで上昇した不動産価格は、「正常」というには程遠い状態だ。

ただ、中国の消費マーケットにとって、株や不動産といった副収入の増減が及ぼす影響は少なくない。最悪の場合、世界経済に及ぼす影響も大きいのでは・・・と心配になるのは、私だけなのだろうか。