「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

チョコレート・アンダーグラウンド

2006-06-18 | 
ayumichanさんからお勧めいただいたファンタジー「チョコレート・アンダーグラウンド」を読んでみました。ジョージ・オーエル「1984年」とミヒャエル・エンデ「モモ」をあわせて、さらに子供向けにしたような作品でした(というと、ちょと褒めすぎかな?)。

=以下、アマゾンの紹介から=
舞台はイギリス。選挙で勝利をおさめた“健全健康党”は、なんと“チョコレート禁止法”を発令した!国じゅうから甘いものが処分されていく…。そんなおかしな法律に戦いを挑むことにしたハントリーとスマッジャーは、チョコレートを密造し、“地下チョコバー”を始めることにした!チョコレートがこの世からなくなったら、あなたはどうしますか?禁チョコなんて、ダイエットのときしかしたことない!読めばきっと、チョコレートが食べたくなる…。


人の好意、というのはありがたいものです。でも、時には相手が好意と思っていてもこちらには「ありがとう。でもちょっと…」ということもありますよね。以前、辺見庸さんの文章で「善魔ほど恐ろしいものはない」といった内容を読んだことがあります。悪魔のほうがよほど扱いやすい、と。まさに。

で、この本ではいわばそうした押し付けが政治レベルになります。「健康」を絶対的価値観として押し付ける、ナチスをモチーフにした党が、チョコレートなど甘いものを禁止する。ありえそうもない設定で現実世界では複雑そうにみえることをすごく単純化して本質をついているような気がします。ファンタジーらしい作品といえましょうか。

そもそもこんな政党が政権を担うことになったのは国民が「どうせ」と選挙に行かなかったから。政治的無関心の怖さです。印象的な文章のひとつに、党の政治に反発して「革命」に乗り出す男性が党の制服に身を包んで党をだまそうとする場面で、その妻がいった言葉があります。「自分でも見てみた? だれにでもミニ・ヒトラーがひそんでいるものなのね。あと口ひげがあれば、かなりいいところまでいくわよ」と。主義主張の「正しさ」などは別にして、だれしもがもつ支配欲、権力欲の危険を暗に風刺した場面のように思いました。

話がそれてしまいそうですが、「善魔」は日常生活でも体験しませんか? こう書くと誤解を招くやもしれませんが、市民運動をしている方々にみかけるタイプのひとつに「私たちはこんなにいいことをしているの。だから協力するのは当然でしょ。疑問をさしはさむなんて許せない」ということを公然という人がいる。厄介です。

していること、主張していることの「正しさ」は否定できないし、なんとなく協力しないと居心地の悪さも感じてしまう。でも、だからといってあまりに「いいこと」と誇示されたり、強要されたりすると…引きます。それが政治レベルになってしまったら…恐ろしいですね。

と、よれた感想文になってしまいました。ストーリー自体は直線的で、だいたい想像の通りではありますが、少年の冒険物語的ファンタジーとして読んでも及第点の作品だと思います。