「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

大奥第6巻

2010-08-31 | 
よしながふみさんの「大奥」第6巻がようやく出ました。綱吉の哀しみが心にしみる巻でした。それにしても10月に柴咲コウさんを吉宗役にした映画になるのですね。まあ、漫画の底流に流れる哀しみをうまく残して表現してくれたらうれしいなあ。よしながさんブームは来るのかなあ。

しゃべれどもしゃべれども

2010-08-28 | 
素敵な本でした。佐藤多佳子さんの「しゃべれどもしゃべれども」。随分前の出版ですが、ふと手にとってラッキーでした。とても幸せな気分というか、前向きな気分になれました。最近の小説はどうも暗いものが多いのですが、これはいい。前向き。どんな人でも「認められたい」「良いといってもらいたい」という欲求があると思いますが、まさに「よし!」といってもらえたような元気がでる本でした。

登場人物の造形が、脇役に至るまで見事。表情の変化の表現が見事。風景描写も見事。最近には珍しいタイプの小説かもしれません。おざなりな人物造形と表現が多いので。筆者は「一瞬の風になれ」の作者なのですね。この本にもいい印象でしたし、不遜な物言いですが、ご贔屓にしたい作家さんとなりました。

入間川自転車道

2010-08-27 | 自転車
昨日から夏休み。いつもは荒川を上るコースばかりですが、たまには気分を変えてみようと荒川から分岐する入間川に沿う自転車道を初めて走ってみました。川越・狭山の22キロ程度と短い自転車道ですが、よく整備されていて(ただし、ところどころ土手上が砂利道になるのはどうも…)よい道でした。狭山に入ると、上空を自衛隊の戦闘機が結構低い高度で飛んでいます。入間基地がすぐ近くなのですね。



自転車道の狭山の最後のところにはなんと「ゴール」のラインまで引かれていて、思わずガッツポーズでゴールイン。なんだか達成感のある、ちょっとうれしいご褒美でした。ちょうどここまでが走りはじめから80キロ。往復しようかな、と思っていたのですが、川越に学生時代の友人がいることを思い出し、連絡。水分補給を兼ねてほんの短時間でしたが、久しぶりに会ってまた元気に走り始めました。

ただ、この段階ですでに午前10時半を過ぎていて気温が…たぶん、調子はよかったので160キロも問題はなかったと思うのですが、今日からちょっと旅行に出るので、無理は禁物と、大宮の方向にぬけて120キロの段階で輪行に逃げました。まあそれにしてもいくら水分を補給してもどんどん汗に…熱中症には皆様もくれぐれもご用心ください。

西武を3タテ!!

2010-08-26 | つれづれ
千葉ロッテマリーンズ、首位西武を3タテです!!! やったあ今日の試合は特に見ごたえがありました。唐川のナイスピッチングが光ります。ルーキー清川の浅いあたりで見事なタッチアップの岡田の走塁がジミながらファインプレーでしょう。一時は首位から5ゲーム以上離されて、クライマックスシリーズにも出られないのでは、と心配していましたが、ホッとしました。荻野以下、けが人が多いのと、4番のキム・テギュンが絶不調なのが気になりますが、まあ、この調子で優勝だあ!!!

ちゅら海水族館

2010-08-25 | つれづれ
銀座のソニービルで、恒例の「沖縄美ら海水族館」が開催中です。



ほんとに涼しげ。ウツボやらいろいろな鮫やら、ちょっとめずらしいのもいます。やはりみな一様に足を止めますよね。

4444

2010-08-22 | 
古川日出男さんの小説「4444」(河出書房新社)。正直、なにがなんだか私にはわかりませんでした。一体どういう小説なのか。つかみどころが無い。短編が集まって、どうやら昔、4年4組(4444という名前の学級新聞があったようです)にいた人物たちの独白だったり、現状だったり、観念だったりがバラバラに提示される。じゃあ、全体を読んで振り返ると何かが見えてくるとか、浮かび上がってくるとかそういうこともありません。わかりにくいし、最後までわからないまま。消化不良というか、これは小説? 作者の詩、散文の集合体? 私のような中途半端な読み手には正直、まったくお手上げの本でした。久しぶりだなあ、時間がもったいなかった、と思えた小説は。

「トイ・ストーリー3」3D

2010-08-21 | 映画
予定外ですが映画「トイ・ストーリー3」の3Dを観ることに。これが意外とよかった。全作の中では最もいいんじゃないだろうか。おもちゃの持ち主アンディもいまや大学生になることに。もはや昔遊んだおもちゃたちと向き合うこともない。おもちゃたちの運命は? といった内容です。3DCGの見事さ、ストーリー展開、いずれも水準以上。特に、アンディとおもちゃたちの別れの場面はなかなか涙腺を刺激します。アンディのおもちゃたちへの愛情、おもちゃたちのアンディに対する愛情。大人になるとはこうした別れをいくつも経験していくことなんだと、ちょっとオジさんは感慨深かったです。CGの技術のすごい進歩にはただただ驚きです。もはや最後の別れのシーンなんか、おもちゃを使うアンディは人間が演じているのか、と見まごうほど。おもちゃと対比でそう見えてしまうのですが、いや、ほんと驚きでした。

あと映画本編ではなく、「おまけ」の短編映画「デイ&ナイト」。これが秀逸。声はなく、2人(?)の幽霊みたいなもののが出てきて、それぞれお腹の中に昼間の風景と夜の風景を映し出すのですが、2人が出合って、張り合って、最後は友情を結び、昼夜が入れ替わる、ただそれだけの映画が、実に楽しい。映像の美しさがおおきいとは思いますが、やはり作品はアイデアしだいでいくらでも面白いものができる、という好例でしょう。

それにしても予告編もこれ全部ディズニーの3Dのオンパレード。完全に3Dにシフトしましたね。「トロン」の予告編には感慨深かった。学生時代、初の全編CG映画と銘打って、ただ丸い物体がキューンという感じで直線を描いて曲がって、というだけの今からみるとなんだったのか、という映画。それが予告編を見る限り、もちろん人間が登場しているのですが激しいレースシーンなど見事なCGで3Dとなっていました。トロンを作るのは、やはり技術の進歩を確認するためなのでしょうか。

バナナの皮はなぜすべるのか?

2010-08-15 | 
実生活ではバナナの皮で滑って転んだ人を見たことが無いのですが、テレビや漫画、映画などでバナナの皮が出たら「すべる」のが「お約束」です。なんでだろう? という実に素朴ながら確かに不思議なテーマに取り組んだ意欲作が黒木夏美さん著「バナナの皮はなぜすべるのか?」(水声社)です。馬鹿にしたようなテーマではありますが、内容は実に重厚というかきっちりと丹念に文学、漫画、俳句といった様々な文献や映画、ネット情報などにあたって調べ、考察したお見事な内容。笑いとは何か? そもそもバナナと人類とのかかわりは? 日本人とバナナの関係は? バナナの皮を捨ててはいけないという法律は? 本当にバナナの皮は滑りやすいのか? などなど多様な観点から考察しています。脱帽です。

一番感心したのはやはり、なぜバナナの皮が「お約束」のギャク、笑いのネタになったのか、そのいきさつについての考察です。19世紀のヨーロッパなどでは実際にバナナの皮で転倒する事故が多発していたことにまずは驚きました。路上にごみを捨てることが当たり前な社会では確かに起こりえることです。こうした事実を背景に、映画、特に観客にアピールするために派手なアクションが必要だった無声映画などで、笑いをとるための道具として使われていく。文学などでも取り上げられる、といった具合。いつしかそれが記号的役割を果たすようになっていくのですね。あ、なにもこれは日本だけのことではなく、世界各地で実は同じような意味合いをもっている点にも感心しました。バナナの皮を捨てるという言葉が熟語的に「卑怯なことをしかける」といった意味を持つ言語があるとかね。

「笑い」とはなにかという実に真面目な研究ではベルクソンやカント、フロイト、アリストテレスまで登場させて解釈を披露。漫画では初期のころの、バナナですべるベタギャクがだんだんとメタ化したり、シュールな笑いに転化されたり、様々な手法でいまも生き続けていることがわかり、バナナの皮ゆめゆめバカにすべからず、という感じです。

実際、バナナの皮は滑りやすいようです。だから様々な国や地方で実際に法律で、路上に捨てることを明文的に禁止したものが多いのですね。いまも現実に、すべって怪我をする人がいるのだそうです。ほんと、捨てたらあきません! 筆者の地道な調査、本当にお見事でありました。筆者も書いていますが、バナナの皮だけでここまで書けてしまう。世の中、情報は無限大にあふれかえっていて、そこから何を選びどのように生かすかは自分しだいだというのをふかーく感じさせられた一冊なのでありました。

ビリーバット

2010-08-13 | 
浦沢直樹さんの漫画「BILLYBAT」(ビリーバット)1巻から4巻までをまとめ読み。なんだかとてつもなく壮大な物語です。キリストから伊賀の里から下山事件からケネディ暗殺まで(チラと9・11やらナポレオンやらにも言及されていた場面があったなあ…)、まあ時代がびゅんびょこと飛びまくります。縦軸はビリーという名前で現在(戦後直後が主舞台です)は呼ばれているコウモリ。なんだかよくわからないけれど、白と黒、まあ善悪というイメージでしょうか。予言者のように、歴史を動かしているというか、悪い方向への展開を避けようとしているのか、悪い方向に導こうとしているのか、なんというか…正直、よくわからない正体不明なものがこの漫画の主人公なのです。4巻まで読んでもいまだに全体像が見えてこない、不思議な、ミステリー調の作品です。浦沢さんでなければたぶんうまく着地できないのではないかな、と思わせる一大交響曲。調和がうまくとれなければガチャガチャの雑音になってしまいそうなきわどい作品だと感じました。さて、今後の展開やいかに?

ワンピース59巻

2010-08-12 | 
初版320万部って、すごすぎ…。漫画「ONEPIECE」の59巻は激しい内容でした。主人公ルフィの兄エースが、ルフィの目の前で殺され、大海賊の白ひげも亡くなります。海軍本部は事実上の崩壊。いやあすごい展開です。

実はこの漫画、これまで戦闘で人が死ぬということを巧妙に避けていました。どんなにひどいダメージを受けても戦闘では人は死んでいない。もしかしたらいたのかもしれませんが、明言されてはいない。「え、アンタ生きていたの?」という展開のほうが多かったのでした。

ところが、59巻ではいきなり中心人物の2人が死亡。まあ、今後の展開上仕方がなかったのでしょうが、少々驚いた。ルフィの激しい精神的ダメージが、人が死ぬことの悲しみを表現している点が救いでしょうか。これ、いくら漫画とはいえ、いとも簡単に死を描かれるのにはちょっと抵抗があったものですから。初の戦闘による「殺人」を犯したのが正義をかかげる海軍によって、というのは皮肉ですよね。正義ってコワ…。

それにしても、話がどんどん大きくなっていくんですよね。ジャンプの法則というか、お約束というか。作者の全体構想があるのでしょうけど、よくまあこれまでいろいろなエピソードを矛盾しないようにつないでいるものだと感心しきりです。大きな世界観を最後までみせてもらえることを期待しています。ただ最近、ルフィ海賊団の面々がまったく登場していないのが寂しいですね。そろそろまた再結集して新たな海に乗り出してほしいものです。

借りぐらしのアリエッティ

2010-08-10 | 映画
スタジオジブリの最新作「借りぐらしのアリエッティ」。ジブリ作品の中では「耳をすませば」に近いテーストを感じました。小人の女の子が主人公で、人間に見られてはいけないという条件があるとはいえ、当然、主人公と人間の少年は出会い、交流する。青春の淡い思い、好奇心、希望といったキーワードは普遍です。一見突拍子もない内容ですが、よくまとめ、小人からすれば巨人でしかない人間世界での冒険談には、思わず引き込まれて声援を送りたくなる。人間の邪悪さと美しさの両面をうまく描いた作品で、じんわりとしたジブリ(「耳を~」みたいな)がお好きな方は、はまると思います。

ただ、ちょっと縮小度合いがいかがなものか。角砂糖やダンゴムシ、アリなどと比べて小人はいったいどの程度の大きさなのか。まるで対象物に応じて伸び縮みしているような感じはやや気になりました。たぶん、指程度の大きさなのでしょうが、それにしては角砂糖や髪留めに転用している洗濯ばさみが小さすぎるし、虫との大きさ対比も「?」なのです。猫やカラス、ねずみやたぬきにたぶん、やられているはずだよね、と思えるほどの弱者なのに、なんで一家は無事なのか? いったいどうやってこれまで一族が生き続けてこられたのやら…ま、そんな細かいことを気にしていては楽しめません。頭を空っぽにして、小さな冒険を楽しみましょう!

猫を抱いて象と泳ぐ

2010-08-09 | 
小川洋子さんの「猫を抱いて象と泳ぐ」。チェスを通じて他者との共感やコミュニケーションをとる少年の物語は、独特の透明感ある世界を形作ります。純粋な余りにも純粋な精神。美しい詩的世界。彼は唇にすね毛がはえ、五十センチ四方の空間に長時間入っていられる。彼のチェスの師匠は贅肉がつきすぎて、住まいにしていたバスから亡くなったときに遺体を取り出せなくなってしまう。彼の好きな象は大きくなりすぎたためにデパートの屋上からエレベーターで下ろせなくなって生涯を屋上で過ごす。そして、想像のなかの恋人は家と家の間の狭い空間に挟まって抜け出せなくなっている。異形なのですが、というか異形という鎧を美しい精神にまとっていないと、この世界では美しい精神を維持しきれないという設定とでもいえましょうか。哀しげな、でも凛とした美しい物語世界に引き込まれて一気に読み終えました。