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話の扉

一級建築士 野積基子所長のブログ

今、こんま本読んでます。

2020-09-03 11:13:35 | 今月の本

原田マハさんの
「たゆたえども沈まず」
画家 ゴッホの生涯、特に後半生を
史実を元にされた、原田マハさんならではの
独特の小説です。

19世紀後半のゴッホと
今回、同時期にパリで活躍した
実在の日本人 林忠正が描かれています。
苦労人で当時のヨーロッパで人気の浮世絵を
販売していた画商です。
パリ万博では通訳を務めました。

また、この物語では
ゴッホと4歳したの弟 テオに
焦点を当てています。
双子のような兄弟だったようです。

ゴッホというと狂気の画家のイメージが
よく知られていますが、
弟なくしてゴッホが語れないくらい
大きな存在だったようです。

この二人は手紙のやり取りが
とても密でした。
その膨大な手紙を遺族が大事に残していたので
その後、美術関係はもとより
暮らしたフランス 生まれたオランダでの暮らしなど
かなり細かく描写されているとのことで
特にゴッホの文章は母国語だけでなく
フランス語の手紙も文章・スペルなど
完璧な内容で文才もあったと後世の評論家の
多くが語っています。

かなりの完璧主義が精神的に影響したのかもしれません
また 極貧の中、弟の仕送りで描いていることが
わかります。

生きているうちは1枚しか売れず
1890年 37才の若さで自殺という不幸な結末は
当時の身近な人の話しを小説に
していて、読み進むうちに
かなり気持ちが重くなるのも
正直な感想でした。
支えた弟テオも後を追うように
半年後に亡くなります。
この二人の葛藤はすさまじいです。

この本のガイド的にだされた本がこちら

現地の案内や当時の現存している建物など紹介しています。
また、ゴッホの絵が所蔵されている美術館も掲載しています。
行きたいな~♫♫

しかし 生存中の絵が売れず苦労していたのに対して
後年人気が沸騰した画家はそんなにいないですね
1990年のオークションで
ゴッホの晩年の作
「医師がシェ」は日本円にして125億円を日本人実業家が落札しました。
天文学的数値です。
この落札者はその後
自分が死んだら棺桶に一緒に入れてくれ と 発言して
世間から世界中から猛反発をくらい
発言を撤回しました。
この絵は現在フランスの美術館に所蔵されています。

1987年 「ひまわり」は当時の安田火災が53億円で落札して
現在に至り 一般公開されています。

一枚の絵からいろんなイメージがわくのは
至福の時です。

次回のゴッホの絵を観る時
一味違う観点で見られるのを楽しみにしています。








2020-08-13 09:57:32 | 今月の本
最近こんな本を読んでいます。



一般的に建築は器とか工作物的な扱いですが
著者の若山さんはそこには物語があると書いています。
歴史的や政治的な背景など踏まえて
上手く分析された内容です。

例えば
築地本願寺の設計をした
建築家 伊藤忠太に関して
大学卒業後自分の研究している法隆寺と
ギリシャパルテノンの関係ルートを検証
するため 中国からインド ペルシャへと3年に
渡り調査旅行をしました。
なんとその旅行をロバに乗ってです。
すごいですね。
著者は伊藤のことを気宇壮大な知的ロマンの快男児と表現しています。

この旅行の時に
浄土真宗の僧侶 大谷光瑞に出会い意気投合します。
このきっかけから築地本願寺の設計をすることになります。
大谷も中国探検隊を結成して数回派遣しています。
なんと日ロ戦争の時、
教団から兵を出し 孫文と会見してその顧問まで務めたとのこと
こちらも快男児ですね

大谷は宗教思想として 忠太は建築思想として
ユーラシア大陸を踏破したのですね。

他にも
東京駅と天皇
吉田茂の大磯もうで
雷門と日本橋
などなど
なかなか興味深い物語が続きます。

ではこの暑い夏をお互いに気を付けて
切り抜けましょう(*^_^*)




2020-05-25 17:09:33 | 今月の本
とても面白い本を読みました。

実質 ノンフィクションがいい
迫力満点!!
1985年 東京都庁コンペの実録です。
この本は磯崎新さんの観点で描かれています。
ご存知の方が多いと思いますが、
都庁コンペの最終当選案は
あの大御所建築家「丹下健三」です。
既に故人です(1913~2005)

まあ なにしろ
磯崎新さんは丹下の弟子です。
この世界弟子だとか恩師だとかは
全然関係なく猛烈なバトル
戦いが繰り広げられます。

作家の平松剛さんが関係者への丹念に取材されていて
文章もリアルで面白く描かれていて
思わずうなずくことばかりでした。

この時期ちょうど
手書き図からCAD図の出はじめの頃です。
この指名コンペは当時の主だった
設計事務所9社に依頼されました。

コンペ応募案の本まで購入して
当時のバトルの激しさを読み取りました。

上段 左が磯崎事務所案

磯崎新さん以外は全部超高層案です。

磯崎事務所は
この提出図を全部を
リトグラフにして提出しています。
まるで絵画ですね。

どちらも300ページ 500ページの大作本で
どっしり読み応え満タンでした。(^_-)-☆

先日磯崎さんは
伊香保のハラミュージアムで
88才のお祝いとプリツカー賞(建築のノーベル賞)のお祝いがありました。
この建物は私は最高傑作と思います。
多分、ご本人も数多い自作でもお気に入りだと思います。

昔、数十年前
群馬県立近代美術館の講演で拝見しました。
建築家の鏡のようにまぶしく見えてことを
思い出しました。

今後のご健康とご活躍をお祈りいたします。

追伸
結局磯崎事務所案は落選でしたが
この数年後羽田へ向かうお台場付近?
この磯崎案によく似た建物が建ちました。
フジテレビ本社です。
この建物の設計は丹下事務所です。
すごいでしょ?! この世界!! (>_<)
 










2020-04-13 18:12:23 | 今月の本
こんな本読んでます。(^_-)-☆

TVドラマ
大草原の小さな家の原作です。



安野光雅さんの柔らかい筆使いタッチが
なんとも言えなく優しさが伝わってきます。

一日一日の生活スタイルの
労働と暮らしの循環が描かれていて
お父さんは狩りに
お母さんはその収獲物をさばいたり
保存食にしたりよく働く姿がきめ細かに
文章と共に挿絵がとてもいいです。
子どもたちもまず手伝いと自然との遊びなど
1年中 四季折々の活動的な 
にぎやかさが伝わってくる楽しい本です。
映像より本の方が格段にイメージが膨らみます。