matta

街の散歩…ひとりあるき

さミだれに 下女あつくなる 火うちばこ…『畫本柳樽』五編

2020年05月21日 | 川柳

さミだれに
下女あつくなる
火うちばこ

五月雨れ(梅雨どき)に
下女(カッカ)熱くなる
(火打ち石使う)火打ち箱

井戸綱に
ぬひ上ゲをする
さつき雨

井戸綱を
たくし上げる
(水位を上げる)さつき雨


さミだれの
むつきにこまる
鬼子母神

五月雨の
襁褓(むつき=オムツ)にこまる
鬼子母神

子バかりで
夫のしれぬ
鬼子母神

子だくさん
夫の知れぬ
鬼子母神


風鈴も
だんまりで居る
あつい事

風鈴も
黙りで居る
暑い事

子のねびえ
あくるふうふ
けんくわなり

子の寝冷え
明くる日夫婦
喧嘩なり


生首
水にういてゐる
あついこと

生首が
水に浮いている
暑いこと


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ひあふぎの さくころひなに 風をいれ…『畫本柳樽』五編

2020年05月20日 | 川柳

ひあふぎの
さくころひなに
風をいれ

檜扇(アヤメ科オレンジ色の花)の
咲く頃雛に
風を入れ

ひなの内裏
猫ぬえほどに
娵さわぎ

雛の内裏に
猫(のぼり)ぬえ(化け物で出た)ほどに
嫁(が大)さわぎ


皿にもる
ひやそうめんは
かんぜ水

皿に盛る
冷素麺は
観世水(波模様)

瓶の中
立およぎする
真くハうり

瓶の中
立泳ぎする
真桑瓜



うしの日ハ
のろのろされぬ
かばやき屋

丑の日は
のろのろされぬ
蒲焼き屋


ぬるりといれて
ぐにやりと出す
ところてん

ぬるりと入れて
ぐにやりと出す
ところてん


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早乙女は 二の腕でふく 玉の汗…『畫本柳樽』五編

2020年05月19日 | 川柳

早乙女は
二の腕でふく
玉の汗

早乙女は
二の腕で拭く
玉の汗


早乙女は
子をねかすにも
田うゑうた

早乙女は
子を寝かすにも
田植え歌


乳守から
うゑるでいねも
よくそだち

(田植え神事にて)
乳守(泉州乳守の遊女)から
植えるで稲も
よく育ち


神事まへ
田うゑをしへる
あね女郎

神事まえ
田植え教える
姉女郎


蚊のやきうち
おなじまくらに
なつのてふ

蚊の焼き討ち
おなじ枕(枕並べて討ち死に)に
夏の蝶

蚊ハ出たが
屋ハもし旦那
どふなさる

蚊の季節
(質に入った蚊帳)をもし旦那
どうなさる


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にハとりと よミさふな字を 時鳥…『畫本柳樽』五編

2020年05月18日 | 川柳

にハとりと
読みそうな字を
時鳥(ほととぎす)

(時を告げる)
ニワトリと
よミさふな字を
時鳥


ひつこむときは
さたのない
ほとゝぎす

(初音にさわぎ)
引っ込むときは
沙汰のない
時鳥


かつをうる
こゑもひとふし
江戸なまり

鰹売る
声も一節
江戸訛り


とめるなと
いふ身でかける
かつをうり

(新鮮なうち売り切ろう)
止めるなと
いふ身で駆ける
鰹売り


なべのかず
おやのかほまで
すミをぬり

(祭礼に、関係した男の数だけ)
鍋被る
親の顔まで
墨を塗り


すりこ木の
かずなべでしる
御さい礼

(関係した男の)摺り子木の
数鍋で知る
御祭礼


稗まきの
田にいなづまの
ほたるかげ

稗まき(盆栽)の
田に稲妻の
螢かげ


はなすじの
せなかへとほる
ひきがへる

鼻筋が
背中まで通る
蟇蛙



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野がけ道 よたんぼてふに なぶられる…『畫本柳樽』五編

2020年05月17日 | 川柳

野がけ道
よたんぼてふに
なぶられる

ピクニック
酔っぱらい 蝶に
なぶられる



花ぬす人
あとからてふが
おひかける

花ぬす人
後から蝶が
追いかける


花のしらなミ
うつほどの
とがてなし

花の白波
討つ(打つ)ほどの
咎でなし


てふよはなよと
おツへしおり
おひちらし

蝶よ花よと
押っ圧し折り
追い散らし


のまぬやつ
べんとうくふと
はなにあき

飲まぬやつ
弁当食うと
花に飽き


下戸がはし
とるとあらしの
さくら鯛

下戸が箸
取ると嵐(食い散らし)の
桜鯛


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