SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

SONNY RED 「OUT OF THE BLUE」

2010年02月23日 | Alto Saxophone

こういう作品を愛するリスナーでありたいと思う。
ずらりと名盤が揃ったブルーノートの中にあって、地味ではあるものの寛ぎの一枚である。
まずタイトルがいい。
OUT OF THE BLUEとは、「突然に」とか「出し抜けに」といった意味であるが、ここは遊び感覚でソニー・レッドの名前に引っかけたのだろうと推測できる。
ジャケットも青と赤でシンプルかつ大胆に構成されており、このタイトルを意識していることが窺える。タイポグラフィを見てもそれとわかる。
ここで使われている赤と青の色相が微妙に好みとずれているため、必ずしも大好きなジャケットとはいえないが、印象的であることには違いない。一度見たら忘れられないデザインだ。トニー・ウィリアムスの「SPRING」を連想する人も多いだろう。この明快さがブルーノートの良さでもあるのだ。

この作品はソニー・レッドがブルーノートに残した唯一のリーダーアルバムであるが、ここでの演奏を聴く限り、なぜもっと多くの機会を与えられなかったのかが疑問として残る。
彼の吹奏は実に素直だ。
ジャッキー・マクリーンのように無理にねじ曲げたりしないところがいい。
だから音色が透き通っていて爽やかさを感じる。
ただこの当時はいいアルト奏者が大勢いたために、彼のこうしたクセのない吹き方は個性がないと思われたのかもしれない。
返す返すも残念だ。

いいといえば、ここでのリズムセクションも最高だ。
ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)といえば、当時のマイルス・クインテットのレギュラーメンバーである。3人とも正しく絶好調だ。
特にウィントン・ケリーがすばらしい。どの曲も彼のピアノが光っている。
ケリーに関しては、彼の最高傑作を「ブラックホークのマイルス・デイビス」やウェス・モンゴメリーとの競演作である「スモーキン・アット・ザ・ハーフノート」、或いは「ケリー・アット・ミッドナイト」だと捉える向きが一般的だが、私はそれには懐疑的である。
彼は前のめりに突っ込んだ演奏よりも、こうした和みの雰囲気の中で活きる人だと思うのだ。
この玉のように転がるケリー節を聴いたら、もうそれだけで幸せだ。
嫌なことなどきれいさっぱり忘れてしまう。