このノスタルジックなピアノの音。
私にとっては、これがこのアルバムの最大の魅力だ。
一瞬テディ・ウィルソンかと思ってしまうが、弾いているのはジョニー・ガルニエリだ。
ジョニー・ガルニエリといえばレスター・ヤングとの共演を真っ先に思いつく。
ヤングの粋で軽快なムードづくりは、ガルニエリあってこそ成し遂げられた成果だといっても過言ではないと思う。
ここでもそんなガルニエリの知己に富んだ演奏が聴ける。
このアルバムではラストの2曲、彼に替わってエロール・ガーナーが登場しなかなか艶っぽい演奏をするが、私はやっぱり、より軽快なジョニー・ガルニエリのピアノが好きなのである。
私はこのアルバムを聴いて以降、この時期のスイングジャズが好きになった。
これは1944~5年の録音だが、録音状態もそれほど悪くない(特別いいというわけでもないが...)。
1940年代頃のレコードを聴こうとする時にためらう第一の原因は、何といってもチャーリー・パーカーにある。
パーカー全盛期の録音は劣悪なのが多いのだ。
一度聴いてしまうと、「パーカーはもっと聴きたいが、何しろ音がねぇ~」ということになってしまう。
つまり40年代は総じて音が悪いと錯覚してしまい、当時の作品は聴く気になれないわけだ。
私もそんな時期が長いこと続いた。
影響力の強いパーカーならではの弊害である。
それはそうと肝心のスラム・スチュアートはどうした、といわれそうだが、彼独特のハミング演奏(アルコを引きながら、その旋律に合わせてハミングする演奏法)は何度もやられるとちょっとうるさい気がする。
もともとライオネル・ハンプトンの名作「スターダスト」の中で聴かせてくれたハミング演奏が気に入ってこのアルバムを購入したわけだが、その部分だけを切り離してみると、もう少しポイントを絞って聴かせてくれたらいいのに、と思ってしまう。
しかしここから影響を受けたジョージ・ベンソンが、後ほどハミング演奏で大ヒットを生み出すことを考えると、やはり先人の貫禄・独創性は評価されるべきである。
とにもかくにも、40年代のジャズをもっと見直そう。
アルバム全体を通して聴くと夢心地になる。