先日ディスクユニオンに行ったらこれがかかっていた。
吊り下げられたスピーカーから、バコンバコンいいながら迫力あるウッドベースが唸りを上げていた。
弾いているのはブライアン・ブロムバーグ。
一聴してすぐにわかった。
私はこれをかけようと思ったお店の人の心境がよくわかる。
とにかく重低音中心のド迫力で、「こんなピアノトリオもあるんだよ」と客に振り向いてもらいたいと考えたのだ。
ベースの革命児といえば、スコット・ラファロやジャコ・パストリアスあたりを最初に思い浮かべてしまうが、彼は明らかにそれに次ぐ人だと思う。
彼はすさまじいまでのハイテクニシャンだ。
このアルバムの中にはそれを証明するかのようなソロが5曲も入っている。これらはジャコ・パストリアスの向こうを張っているし、ラストの「Star Spangled Banner(星条旗よ永遠なれ)」に至っては、間違いなくウッドストックでのジミ・ヘンドリックスを意識している。
ウッドベースでここまでやるか、といった塩梅である。
ソロにおいては、ウッドベースのボディをパーカッシヴに叩く音が見事に捉えられている。
この乾いた響きと太い弦の弾ける湿った音とが重なって、ぶ厚いサウンドが創り出されているのだ。
彼はまたバッキングも上手い。「Speak Low」におけるウォーキングベースなんかは心憎いまでの切れ味だ。
そのせいもあってか、ランディ・ウォルドマンのピアノがとてもきれいに聞こえる。録音状態もすこぶるいいので、それはさらに際立ってくるのだが、このアルバムを聴いていると、ピアノトリオはいかにベースの存在が重要なのかを思い知らされるのである。
これはベース好きにはたまらないアルバムである。
多少のアクやクセがあって当たり前。
思いっきりボリュームを上げて、とてつもない低音の魅力と、対比され浮き彫りになったピアノの美しさを聴こう。
私のオーディオ装置も心なしか喜んでいるように感じる。