2009年
文藝春秋
☆☆
面白い本は読んでいるときは楽しくて良いが、
読み終わるのが早くてさみしい気もする。
花村家のお嬢様、英子とそのお抱え運転手、別宮(ベッキー)さんの謎解きシリーズである。
仲良くしていただいている、侯爵家のお嬢様の親戚にあたる男爵さまを
英子の兄が社会見学と称した、浅草の裏道散策をした際に見かけたということだった。
しかも、路上生活者となっていたということで、他人の空似であろうと兄妹で話していたのだが・・・・
男爵様の失踪事件の謎を解き、人それぞれの”価値観”を考えることになる。
そして、兄とともに本屋へ行った時に、
以前、一度だけ話を交わしたことのある陸軍少尉の若月とばったり出会う。
詩集の話になり、山村暮鳥の本を若月から送ってもらう約束をする。
数日後、本が送られてきて見ていると
冒頭の詩に目がとまる
囈語
竊盗金魚
強盗喇叭
恐喝胡弓
賭博ねこ
詐欺更紗
涜職天鷲絨
姦淫林檎
傷害雲雀
殺人ちゆりつぷ
堕胎陰影
騒擾ゆき
・
・
・
”騒擾ゆき”この言葉に何かを予感させる
「不在の父」
英子は伯父夫婦のお知り合いの子息が夜遅くに上野で補導された。
育ちの良い少年で悪い仲間とつるんで・・・ということはないようだ。
受験を前にどうしたものか・・という話を聞いた英子はベッキーさんとともに
その謎を解く。
この当時、流行ったらしい迷信が面白い。
銀座のライオン・上野のライオン・浅草のライオン
ちょっとかわいいオチの
「獅子と地下鉄」
兄とドッペルゲンガーの話をしていた矢先、
千枝子さんのカメラに写ってはいけないものが写っていた。
台湾に行っているはずのいいなずけが銀座での写真に写っていたのだ。
その謎を、英子とベッキーさんが解く、
「獅子と地下鉄」で話がでた叔父夫婦と能を見に行くことになった。
演目『鷺』のシテは面をかぶらないといわれているのに、この日のシテは面をかぶっていた。
ただ、そのため印象にのこることになる。
その日は、雪で英子も体調が悪く休んでいた。
夢に例の『鷺』の場面が出てきて、面をはずすとそれは若月の顔であった。
そんな夢を見て目をさますと
その若月から本が送られてきた。
処分をしなくてはならないため、受け取ってほしいと手紙が添えられていた。
英子はお礼に何かを送りたいと考え、
ふと、時計店に電話をしてみることにした
ところが、その電話に出たのは陸軍少尉の若月であった。
短い言葉を交わして、電話を切った後
もういちど、時計店に電話をする。
今度は、時計店の店主が電話口にでる。
英子は、時計店と間違えてしまう番号を持った場所はどこかと聞いてみると、
店主は「番号が似ていると、よく言われますのは 首相官邸でございます」と答えた。
その日は、昭和十一年二月二十六日だった。
北村薫さんの文章は、とても優しくて好きである。
文藝春秋
☆☆
面白い本は読んでいるときは楽しくて良いが、
読み終わるのが早くてさみしい気もする。
花村家のお嬢様、英子とそのお抱え運転手、別宮(ベッキー)さんの謎解きシリーズである。
仲良くしていただいている、侯爵家のお嬢様の親戚にあたる男爵さまを
英子の兄が社会見学と称した、浅草の裏道散策をした際に見かけたということだった。
しかも、路上生活者となっていたということで、他人の空似であろうと兄妹で話していたのだが・・・・
男爵様の失踪事件の謎を解き、人それぞれの”価値観”を考えることになる。
そして、兄とともに本屋へ行った時に、
以前、一度だけ話を交わしたことのある陸軍少尉の若月とばったり出会う。
詩集の話になり、山村暮鳥の本を若月から送ってもらう約束をする。
数日後、本が送られてきて見ていると
冒頭の詩に目がとまる
囈語
竊盗金魚
強盗喇叭
恐喝胡弓
賭博ねこ
詐欺更紗
涜職天鷲絨
姦淫林檎
傷害雲雀
殺人ちゆりつぷ
堕胎陰影
騒擾ゆき
・
・
・
”騒擾ゆき”この言葉に何かを予感させる
「不在の父」
英子は伯父夫婦のお知り合いの子息が夜遅くに上野で補導された。
育ちの良い少年で悪い仲間とつるんで・・・ということはないようだ。
受験を前にどうしたものか・・という話を聞いた英子はベッキーさんとともに
その謎を解く。
この当時、流行ったらしい迷信が面白い。
銀座のライオン・上野のライオン・浅草のライオン
ちょっとかわいいオチの
「獅子と地下鉄」
兄とドッペルゲンガーの話をしていた矢先、
千枝子さんのカメラに写ってはいけないものが写っていた。
台湾に行っているはずのいいなずけが銀座での写真に写っていたのだ。
その謎を、英子とベッキーさんが解く、
「獅子と地下鉄」で話がでた叔父夫婦と能を見に行くことになった。
演目『鷺』のシテは面をかぶらないといわれているのに、この日のシテは面をかぶっていた。
ただ、そのため印象にのこることになる。
その日は、雪で英子も体調が悪く休んでいた。
夢に例の『鷺』の場面が出てきて、面をはずすとそれは若月の顔であった。
そんな夢を見て目をさますと
その若月から本が送られてきた。
処分をしなくてはならないため、受け取ってほしいと手紙が添えられていた。
英子はお礼に何かを送りたいと考え、
ふと、時計店に電話をしてみることにした
ところが、その電話に出たのは陸軍少尉の若月であった。
短い言葉を交わして、電話を切った後
もういちど、時計店に電話をする。
今度は、時計店の店主が電話口にでる。
英子は、時計店と間違えてしまう番号を持った場所はどこかと聞いてみると、
店主は「番号が似ていると、よく言われますのは 首相官邸でございます」と答えた。
その日は、昭和十一年二月二十六日だった。
北村薫さんの文章は、とても優しくて好きである。