徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

(懲りずに)PF, PNF

 再度、PF: Pilot Flying, PNF: Pilot Not Flying のことです。

ほとんどの場合、操縦席に座る二人は機長( Captain )と副操縦士( Co-Pilot または First Officer )になるのですが、機長のライセンスを持つ(会社からも機長として発令されている)二人が操縦席に着くことも少なくはありません。

乗務時間が一定の基準を超える長距離路線の場合、Cockpit Crew はマルチプル、またはダブル編成で運航されます。

最近主流のハイテク二名乗務機(今では航空機関士が乗務する三名乗務機の方が珍しくなりつつありますからね)では;
 ☆マルチ編成
  機長×2+副操縦士(または機長)×1=計3名
 ☆ダブル編成
  (機長+副操縦士(または機長))×2=計4名
で ship を目的地まで運びます。

離着陸を除くある時点では、常に(マルチの場合)1名・(ダブルの場合)2名が休息に入っている訳で、例えば、機長×2+副操縦士×1のマルチ編成の場合、副操縦士が rest (休息)に入っている時間帯は、操縦席には機長が二人座っていることになります。

このように、機長が二名以上で運航される場合(編成を問いません)でも必ず一人しかアサインされないものがあります。

それは PIC: Pilot In Command、そのフライトの統括最高責任者です。

マルチ,ダブルの編成では少なくとも機長が二人は乗務します。でも PIC は一人だけです。もう一人の機長は SIC: Second In Command となり、PIC が休息中など、その職務についていない時に PIC の代行を担う第二の責任者です。

二名以上の機長のうちどちらが PIC をつとめるかは、基本的にはセニョリティ( seniority )により決められますが、場合によっては路線資格、路線慣熟経験などにより、必ずしも seniority 通りにならないこともあります。

操縦席に座っている二人が、「機長・副操縦士」「機長・機長」の組み合わせであっても、必ずどちらかが PF であり他方が PNF です。
双方共に「俺が PF だ」などと醜い操縦桿争いは決して起こりません。
事前にどちらが PF となるかはちゃんと決めて乗務につきます。

操縦席の主たる計器は、左席・右席ともに共通でどちらに着座しても PF が可能なようになっています。
その一方で、細かなスイッチ等の基本的配置は左席(機長昇格訓練時を除き機長が座る)に着いたものが PF、右席に着いたものが PNF を行なうことを想定して基本設計がなされています。
Boeing777 Cockpit Center Panel
一例として、ギア・レバーやフラップ・レバーは、"Gear Up", "Gear Down", "Flap 5", "Flap 10" などのオーダーを出すのは PF であり、それに従いレバーを操作するのは PNF となりますので、それらのレバーは二人の中央線よりも右側に位置しています。

たとえ大型機であっても左席と右席との間は前方から Forward Aisle Stand, Control Stand, After Aisle Stand と並ぶ操作卓を挟んだ距離しかありません。よって、どちらに座っていても中央部のスイッチ類にはひょいと手が届く距離であり、PNF (PF) 業務に支障をきたすことはありません。

先の投稿でもさらりと述べましたが、『PF: Pilot Flying とは主として操縦を担当する役割のパイロット、PNF: Pilot Not Flying とは主として PF を補佐する役割を担当するパイロット』であり、その役割分担は出発準備に始まり到着後のシャットダウンに至るまで、それぞれのフェイズで事細かに決められています。

航空機製造メーカが提供する AOM: Aircraft Operation Manual には製造メーカが一般的に推奨する Procedure (操作手順)が記載されています。
が、その機種を運航する航空会社はその Procedure を基に、若干手を加えた各社それぞれオリジナルの AOM を作成し、その Procedure に則って運航している場合もまま見られます。

Boeing777 は Working Together の名のもと、その開発に際して Boeing 社が Working Together に加わった各航空会社と意見交換をし、各部にそれらを活かして開発・設計を行ないました。

そのオペレータの中には、我が国の全日空、日本航空も加わっており、両社の意見も機体設計やオペレーションに反映されました。

が、Working Together のオペレータ全ての意見が完全に一致する筈も無く、個々のオペレータにしてみれば自分達の意見が 100% 反映されている訳ではありません。
よって、各社、Boeing 社のオプション設定を上手く利用したり、Boeing 社の AOM をベースとして、自分達に馴染むカスタムの AOM を作成、それに則ったオペレーションを行なうオペレータも出てくる訳です。

重箱の隅をつつくようで恐縮ですが、その差異の一つとして PF, PNF との用語をどの段階からどの段階まで用いるか、があります。

日本のオペレータ(全日空と日本航空)の Boeing777 Normal Procedure では、操縦席に着席し、Preflight Procedure を開始する段階から、原則として PF, PNF が役割分担の用語として用いられ、その用語を用いて Procedure が進められます。

一方、Boeing 社が提供している AOM では、Before Takeoff Procedure になってはじめて PF, PNF の用語が登場します。

そこに至るまでの、
 -Preflight Procedure
 -Before Start Procedure
 -Engine Start Procedure
 -After Start Procedure
では、Captain, F/O (First Officer) が役割分担を示す用語として用いられています。

Boeing 社の AOM でも、それ以降は PF, PNF の用語が役割分担で用いられるのですが、それも After Landing Procedure まで。
Block IN して Parking Brake を SET する Shutdown Procedure からは、また Captain, F/O が復活します。

同じスター・アライアンスのメンバーだからと言って、ユナイテッド航空(United は確か Boeing 社と同様に Taxiout から PF, PNF で呼称するようになっていたと思います)777の機長と全日空777の機長がコンビを組んだとしましょう。

お互いに777については型式限定資格を持っており、そのオペレーションやシステムについては十分に理解していても、いざコックピット、公平を期すため機材は同じスター・アライアンス・メンバーのシンガポール航空777にしましょうか、の操縦席に座った場合、777を飛ばすことは可能でしょうが、Procedure の細かな部分は互いの会社で異なっていますから、
 「えっ、なんでここでお前さんが "BEFORE START CHECKLIST!!" ってコールするの」
 「 Oh! It's my duty, isn't it. 」
ってな具合にギクシャクしてしまう可能性大であります。

と言うことで、同じ機種の型式限定資格保有者であっても、異なる会社のパイロットの組み合わせでお客様をお乗せしての運航はできません。

ただ、二名のパイロットのうち一名に不測の事態が発生し、しかも悪天候下で機体にもトラブルが発生、などというフィクション映画の世界でしか起こりえないようなことがあったとして、その便にOAL-DH(他社の航空機に便乗して移動する)で当該機種の型式限定資格を持つ他社のパイロットが搭乗していた、なんて場合にはヘルプ要員として力を貸せるのかもしれませんが....、微妙なところですね。


コックピットの二人が何らかのトラブルで二人ともダウン、自動操縦で飛び続ける機体。が行く手を阻む嵐とその先の山岳地帯。果たして250名の乗客の命は…。

なんていうフィクション映画のオチが、

OAL-DHで乗り合わせていたパイロットがCAの異変に気付き、
 「俺たちはこの機種の操縦資格を持つ***のパイロットだ。おたくの便に便乗して移動中だ。俺たちに手伝えることはないか」
と申し出て、“お願いします”とコックピットに案内されたものの、
 「わっ、散らかってるねぇ。ほれ、NDの液晶パネルも指紋だらけだよ」
 「CDUもベタベタだ。でもFMSにはデータ全部入ってるね」
 「燃料も十分あるし、おっ、WX Radar も Auto Tilt Auto Gain じゃない」
 「これなら大丈夫そうだな、水を持ってきておいてもらおうか」

では映画館のお客さんが途中でみんな帰ってしまうでしょうなぁ。
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