徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

是非、詳しく調査して下さい

 このインシデントを聞いた段階では、きっと Body Gear Door (主脚の扉)を開閉するギアが外れるとか、その類のメカニカル・トラブルが原因かな、と勘ぐっていたのですが、ハイドロ(油圧系統)だとするとちと穏やかではありませんね。

ハイドロ・ロス(油圧が失われること)は、過去の事例を出すまでも無く、大事故につながる恐れがあります。

今回の事例では鹿児島を離陸して Gear Up した時点では、Body Gear 2本と Nose Gear 1本は正常に格納され、Gear Indicator も Up and Locked を示し、Gear Door も閉じた訳ですから、1時間足らずの間にハイドロに何らかの異常が起ったことになります。

油圧系統は、安全性を確保するため複数系統装備されており、普通は3系統備えています。(多分、MD90-30 も三系統あるはず)

それらは、異なる油圧供給源、配管、主たる操作対象があるので、仮に三系統のうち2系統までアウトになっても、一系統でも残っていれば、必要最低限の操舵や装置の駆動が行えるようになっています。
ただし、一系統だけの場合、全てのエルロン、全てのラダー、全てのエレベータを動かすのでなく、エルロンの一部,ラダーの一部,エレベータの一部しか動作せず、その動作量にも制約が付きます。

フラップやギアは Alternate で(通常は電気モータやギアの場合自重)down させることが出来るようになっています。

従って、オール・ロスでなければ、過剰に不安がることはありません。
そのような観点からは、今回の事例においても、機体の損傷や滑走路閉鎖といった被害は出ましたが、お客様は全員無事であり、当該便の乗務員も適切に対応しており、大騒ぎすることもないのかもしれません。

ただ、ハイドロに関するトラブルを軽視していると(これは何もハイドロに限ったことではありませんが)、見過ごされたトラブルの原因がさらに重篤なトラブルを引き起こす可能性もあるので、“警鐘”として活かして、油圧系統に他の不安要素はないか、徹底的に調査すべきだと思います。

全く素人の推測ですが;
 配管のどこか(例えば接合部)にほんのわずかな亀裂か破損があり、
 そこからフルード内に気泡が入り込み、
 入った気泡は上空で気圧が下がると膨張しその状態で配管内に留まり、
 舵面を動かすのに通常時を上回る加圧が必要となる。

飛行サイクルが繰り返えされそれの積み重ねが加圧ポンプを傷めるとか....。

ある一定以上の圧をかけても、加圧に対応する反応(センサーで検知できると思います)が得られなければ、加圧ポンプの破損およびハイドロ・リークを防ぐ為にインターロックがかかり、当該系統を保護する機構が備えられているようにも思えます。

航空機関士が乗務していた機体は、FEが飛行中もずっと真横を向いて計器をモニターして、エンジンや油圧、与圧等の“息吹き”を感じとって、わずかなことでも、その“兆し”を見つけて、それに応じた更なるモニタリングや“疑わしい”と思われるところを調べるためのアクションをとることが出来ました。

それが、近年のハイテク機や今回インシデントを起こしたMD90などの二名乗務機では、EICAS: Engine Indication and Crew Alert System やそれと同等の計器に置き換えられています。
EICAS: Engine Indication and Crew Alert System などは、それこそFEがモニターしていた項目を上回る数の入力を監視していますが、数多ある入力を全て Raw Data で伝えるのではなく、あるプログラムされた内容に従って得られた値の一部を示すに過ぎず、それも、平常時は何も Message を出しません。
何段階かに設定された「閾値」を超えた場合、それに応じた Message や Alert が出されるわけで、そこまでの経緯は EICAS に入力されたセンサー値のみぞ知る、であります。

今回は EICAS 云々ではありませんが、一時間足らず前の離陸時には何の異常も無かったのに、いざ着陸の段階になって問題が顕在化した、という点では、何か通じるものがあるように思えます。

MD90 -ちょっと古めの機体だから-ということではなく、二名乗務が当たり前となったハイテク機の整備・モニタリング体勢にも活かせるような何かを見出す意気込みで詳細に調査、対応策を考えてほしいものです。


オイルタンクの加圧機能の不具合か 日航機トラブル (朝日新聞) - goo ニュース
 日本航空の鹿児島空港発大阪空港行き2408便(ダグラスMD90―30型機)が2日午後、車輪格納庫の扉が開いたまま大阪空港に着陸したトラブルは、油圧機のオイルタンクの中の加圧機能に不具合が生じ、扉を開閉する油圧が低下したのが原因とみられることが4日、同社の調査で分かった。

 同社は、油圧機などを取り出して羽田空港の整備本部に運び、分解して詳しく調べる。

 このトラブルで、車輪格納庫の扉を保護するバンパーが着陸時の衝撃で滑走路上に脱落した。乗客・乗員174人にけがはなかった。

2006年 4月 4日 (火) 12:50


【追記:4月5日 23:10 】

金属疲労によるピストン破損が原因だったようです。

この件、Boeing から Service Bulletin が出ていたというではないですか。

その未対応機材が事故を起こしたというのに、
 『同社では、6月までに保有全機の改修を終えたいとしている』
とは、整備本部の対応にがっかりです。

機材変更や欠航を出しても、保有16機のうち当該機を含む未対応機6機を速やかに改修すべきではないでしょうか。

まさかADではないでしょうね。FAA と Boeing で調べてみなければ。


日航機の“開扉”着陸、車輪格納庫内ピストン損傷で (読売新聞) - goo ニュース
 大阪・伊丹空港で2日午後、日本航空のMD―90型機が、車輪の格納庫の扉が閉じないまま着陸したトラブルで、同社は5日、同機の格納庫内部のピストンが金属疲労のため壊れていたことを明らかにした。

 この結果、油圧用のオイルが漏れて圧力が下がり、扉が閉まらなくなったとみられる。

 同社はこれまでに、メーカーからの指示で、保有する同型機16機のうち10機のピストンを改修しているが、今回トラブルを起こした機体は未改修だった。同社では、6月までに保有全機の改修を終えたいとしている。

2006年 4月 5日 (水) 22:32
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