日記

Hajime

わたしん

2008年02月19日 | Weblog
今日はお茶の水から新宿まで歩く歩く。
お茶の水で安めのグレッチ、ベンジーがなかなかでてこないから、ジェーンとしておいてグレッチでぶってとうたう。
飯田橋と水道橋は大学と病院とカモメ眺める。ハトかと思ったらカモメじゃん。素敵。

四谷で道間違える。
こういう間違え大好きだけど足がぼーぼーなので引き返す。
つつじの下の猫とけんかする。しゃー。

ここいちでカレー食う。
店員さんオーダー間違える。頼んでないのに4辛出てきてびっくり。辛いカレー、2口で店員呼ぶ。
店員さん沢山謝る。許す。許される。

新宿駅あたりで宇宙パワーみたいな店に入る。世界中の怪しげなものある。
レジは紫ののれん。店員は鈴とお経で祈祷しとる。
素っ裸のフランス人形も色のはげた仏像もある。変な石も外国の神様も2万円のキーホルダーもずらっとある。おかみさんハイテンション。主人レジで祈祷しとる。
いろんな人おる。店出る。隣は葬儀屋。
いろんな店ある。いろいろ頼る人おる。

服屋でしつこくからまれる。
靴屋で案外ほめられる。
古本屋よる。2段目指でつーっとさぐるとヘミングウェイあり迷う。いかがわしい本どどーんとのきをつらねて人々は真剣さをよそおいまじめっぽくいかがわしい本めくる。

空が暗くなる。
歌舞伎町明るくなる。梅の花赤くなるのはもうちょっと。花食べて梅の味したの思い出す。

足がぼう。でくのぼうで帰る中央線。


今日カメラ持ってないのにきづく。


洞窟 (後)

2008年02月19日 | Weblog
足下の砂地にたき火の跡がある。たきぎの中央は焼け落ち、黒く尖っている。
木の端の方は燃え残り固い松の木の枝がうす黄色くむき出しになっている。すぐ側に太い木が転がっていてそこに腰を掛ける。

遠くでセミがじりじり鳴くのが聞こえた。この洞窟の外はまだきっと雲は白く、裸の子どもたちは湾で釣りをしている。
ぼんやりと砂を眺める。


「どこから来た。」後ろから男が言った。はげかかった頭の脇から長い髪がひょろひょろと伸びている。
新聞みたいな色の布を何枚も重ね、袖なのかどうかわからない布の継ぎ目から両手がでている。
「港のむこうから。」私は答える。
「じきに夕暮れだ。」と言って男は洞窟の奥の方から松葉と小枝を持ってきた。燃え残った薪を集め、何本かの新しい木を積み、松葉と小枝を乗せ、火をつける。
「町から来たんだろう。」男は言う。
「はい。」私は答える。
「その顔見りゃあわかるさ。ここらへんの奴じゃ今頃とっくに真っ黒に日焼けしてるからな。」
火は松葉から小枝に燃え移り、小枝もしんなりと赤くなっている。

「俺もよ、町にいたころはよ、そりゃ強かった。なぐんのが嫌になってよ、みんな止めたけど出てったんだ。」
男は手をもみながら話した。火に照らされたはげかかった男の頭はところどころ皮がはげていて、ホッチキスで止められている。
「魚食うか。とってきたんだ。焼くとうめぇぞ。」手のひらほどの大きさの魚を男は取り出した。夏の日差しで変色している。
かすかに腐りかけた匂いが鼻を刺した。

二人で魚を食べた。
「昼過ぎに舟止場の裏へ行くとうめぇ魚があるんだ。」男は笑みをこぼして話した。
「裏のどのあたりですか?」まじめに私は聞いた。
「勝手に持っていくんじゃねぇぞ。あそこだ、魚をしまっとくでかい冷凍庫の裏だ。」男はまじめに答える。
それからしばらく火にあたった。


たき火のちょうどいい明るさに私はうとうととし始めた。その時男が言い出した。
「お、お前ここに何しに来た。そうか殴ってやる。お前みたいな卑怯なやつはそうだ俺が。」男は汗をだらだら流し、こぶしをきつく握りしめて立ちすくんでいた。
「さあかかってこいよ、この根性なしめ。勝手にのこのこ入ってきやがって。なんで勝手に魚なんか食ってやがんだ。」男の顔は血の気がひいていた。汗が顎から落ち続けていた。



私は後ずさったがふいに腹に痛みがはしった。さっき食べたばかりの魚を思い切り白い砂へぶちまけた。うずくまり腹をおさえる。顔を上げ、もうろうと辺りを見渡すと男は洞窟の壁を殴り続けていた。
それから町で有名だった拳闘家が暴行事件を繰り返し、刑務所に入り、その後行方知れずだという話をぼんやり思い出した。
呼吸が止まる。口の両脇から油のようなツバが垂れ続ける。セミが遠くでじりじり鳴いているように思える。
たき火の向こうで男がごうんごうんと壁を殴っている。
白い砂が入道雲のようによじれながら形を変える。



目が覚めたのはセミの声。
あたりにはただ白い砂が広がっていた。たき火の跡も男も何もなかった。ただ洞窟の中はひやりとした空気以外は何もなかった。目の前には私の吐いた魚だけが残っていた。
一晩中捜索していた祖父母には泣きながら怒られた。
洞窟にいたというと、そんなところに洞窟はないと言った。
次の日、くさい網の上に立っておいしげる草の向こうを見回したが、そこはごつごつした岩肌の絶壁が続くだけだった。