Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

6月のポトラッチ・カウント(5)

2024年06月24日 06時30分00秒 | Weblog
 六月大歌舞伎・夜の部の最後の演目は、「魚屋宗五郎」。
 今年は新春浅草歌舞伎でも上演されている(「周辺」からの逆襲(1))。
 浅草歌舞伎では、尾上松也が宗五郎を上手く演じたが、今回は中村獅童が演じるというので、やはり見る価値がありそう。
 だが、私はこの演目が生理的に嫌いで、獅童見たさよりもこの嫌悪感の方がまさり、今回はスキップした。

・宗五郎は江戸の町の魚屋さん。
・酒飲みで貧乏だったが、美人の妹がいる。お蔦(おつた)ちゃん。
・とあるお殿様が妹に惚れてお屋敷に呼ぶ。
・お殿様が宗五郎にもお金をくれたのでそれをもとでに頑張って商売をして、宗五郎も金持ちになる。
・お蔦ちゃんもお殿様とラブラブで暮らす。
・しかしある日お蔦ちゃんが殺されてしまった。ショック、浮気したのだという。
・悲しいけど浮気したのならしかたがない。宗五郎は妹のために禁酒して、奥さんと一緒に悲しんでいる。
・妹の同輩だったという腰元さんがお参りにやってくる。
・このひとが真相をしゃべる。お蔦ちゃんはは浮気なんてしていない。
・お屋敷に悪人がいて、全然バレバレのうそでお蔦ちゃんがが浮気したと言った。
・お殿様は信じてお蔦ちゃんの話も聞かないで斬った。
・怒った宗五郎は感情の持って行き場がなくて酒を飲み始める。どんどん酔っ払う。
・酔ったイキオイでお殿様に文句を言いに飛び出していく。奥さんが追いかける。
・お殿様のお屋敷。町人が酔っ払って暴れたら斬り殺されてもしかたないのだけど、
お蔦ちゃんの兄ちゃんだと気付いたえらい人が話を聞いてくれる。
・いろいろしゃべったら宗五郎は酔っぱらいなので寝てしまう。
・目が覚めたらお屋敷の庭にいる。そばにお殿様がいる。
・酔いがさめた宗五郎はやばい斬られると思ってあわてるが、お殿様はすごく反省している。
・本当にお蔦ちゃんが好きだったのだ。すごく悲しんでいる。 
・お殿様も宗五郎と同じで酒癖が悪い。なかーま。
・酒は控えようと思うと話すお殿様。ふたりでお蔦ちゃんのことを思って悲しむ。 

 作者の河竹黙阿弥は、「酒乱の役を世話物狂言で演じたい」という五代目尾上菊五郎の要請に応じて、この作品を書いたという。
 そこまでは良いが、黙阿弥は、なぜかこれに「お家横領」と「お蔦の惨殺」を付け加え、後味の悪い作品に仕上げてしまった。
 「お家横領」の方は、江戸時代にあってはお約束のスジだが、「お蔦の惨殺」は、歌舞伎で頻出する「自己犠牲」ではなくて、単なる無駄死に(無駄殺され)である。
 なので、現代の日本人が見ると相当な違和感があるはずなのだが、上演当時(明治16(1883)年)の観客は、おそらく違和感なく受け入れたと思われる。
 というのも、歌舞伎や文楽において、「若い女性が、意味もなくただ惨殺される」シーンが頻出するのは、ニーチェ先生も指摘するとおり、「淫欲」(Wollust) を満たす効果があると思われるからである(「共苦」の正体)。
 要するに、観客のサディズムを満足させてくれるわけである(但し、「魚屋宗五郎」では、殺害シーンそのものは演じられないので、この点では中途半端である。)。
 というわけで、「魚屋宗五郎」において、お蔦は意味なく殺されただけなので、ポトラッチ・ポイントはゼロ。
 以上を総合すると、6月のポトラッチ・カウント(と言っても歌舞伎座の歌舞伎とセルリアンタワーの能のみが対象)は、
・「籠太鼓」・・・0.5
・「妹背山婦女庭訓」三笠山御殿 ・・・5.0
・「南総里見八犬伝」円塚山の場・・・5.0
を合計して、10.5(★★★★★★★★★★+0.5)となる。
 先月(51.0)と比べると少な目なのは、やはり、国立劇場の文楽が今月は東京では開催されないことが大きい。
 そういえば、入札不調で難航していた国立劇場の建て替えの話はどうなったのだろうか?
 この調子だと、文楽の愛好家はどんどん減っていくと思うのだが・・・。
コメント
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