おちよな毎日2

続「おちよな毎日」。

最近読んだ本

2022-06-11 08:50:57 | 
6月10日(金)

「生者のポエトリー」(岩井圭也);場面緘黙症で他人と会話ができない青年、モラハラする恋人がいる女子大生、荒れた家に生まれ育ち刑務所から出たばかりの青年、妻に先立たれた定年後のおじさん、ブラジルから出稼ぎに来た母に連れられてきた日本語が不自由な少女、市役所でくだらない上司のもとで働く派遣社員の青年のそれぞれの人生が詩を媒介にして少しずつ影響を及ぼしていく話。どの話の主人公もどん詰まりとか、孤独だとかいう鬱屈した境遇なのだけど、胸の中に溜まったいろんな思いを恥ずかしさを振り切って自分の言葉で正直に解放することで自分の気持ちや周りの何かが変わるという、言葉や詩の力の可能性を感じた。

「手の倫理」(伊藤亜紗);視覚や聴覚と違う、触感ならではの距離感の近さ、原始性、相手の状態を感じ取ってしまう怖さなど、いろいろ考えるところの多い本。「さわる」「ふれる」「なでる」‥‥のニュアンスの違い、ふれる方とふれられる方の信頼感の有無や関係性、ふれることで共鳴したり緊張感が走ったり、と考えるほど絶対的な正解というものはないのだなと思う。介護の際も当たり前に触るけれど、それは本当にデリケートな問題なんだと再認識。

「ドラえもんを本気でつくる」(大澤正彦);コンパニオンロボットを作る時に隙のない完璧な機能を持たせようとするより、多少なりともだめだめな部分があって人間が「しょうがないなー」「助けてやんなきゃ」とフォローする余地がある方がロボットに親しみがわくっていうのは本当そう思う。期待値を下げてコミュニケーションを人間の想像力や共感力で補完させ(人間がペットと会話する時に自分の都合のいいように解釈するような)、関わり合いを続けるうちに互いの関係性やロボット自身の能力も育っていき、真に役立つロボットになればいいという。作り込みすぎない、かわいいミニドラみたいなのがいろんな場面で人間を助けてくれたり、寄り添ってくれる未来なら楽しいかも。

「カラスは飼えるか」(松原始);カラスの話にとどまらず、フィールドワークでサルを定点調査する話とか、人間に人気のある鳥の話いろいろ(著者はなぜカラスだって可愛いのに愛されないのかーとぼやいている)も。ちなみにカラスは飼えない(野鳥は愛玩用の捕獲が事実上認められないから)そう。狩猟鳥ではあるから免許のある人は獲れるそうだが。しかし、現実的にカラスを飼うのは難しいとのこと。まず大きいし、いたずら好きだし。著者に言わせると「ヘタレで甘えん坊なカラスがいなくなると深刻なロスになる」...生き物を飼うとそういう目にあうやね。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿