女優・藤原紀香に、自民党が来夏参院選出馬を要請しているらしい。護憲派である彼女に自民党が手を伸ばしたことに驚いたブロガーたちが、さっそく「要請を受けないで欲しい」という記事を書いておられる。TBをいただくなどで私が現在読んだ限りでも、次のようなエントリがある。(ほかにもおそらく多くのブロガーが同じことを訴えておられるだろう)
「藤原紀香さんへ自民党から出馬しないで!メールを出そうキャンペーン」(お玉おばさん)
「藤原紀香さんにファンメールを!」(とむ丸さん)
「藤原紀香さん」(喜八さん)
「拝啓、藤原紀香さま」(ハムニダ薫さん)
「紀香への手紙」(大津留公彦さん)
実のところ、私は藤原紀香という女優のことをよく知らない。テレビをほとんど観ないので、顔もパッと浮かんでこない。井上ひさしとの対談などで護憲を表明しており、アフガニスタンなどにも赴いて反戦活動をしている人――程度のことを、それも何となく曖昧な形で知っていただけだ。そんな私でさえ、「自民党からの出馬要請」には驚く。いったい何を血迷ったのか、という感じである。改憲論者である安倍晋三氏が率いることになりそうな自民党が、「憲法の味方です」と言明している人に出馬要請ねぇ……。本人がどんな思想信条を持っているかなどはどうでもよく、単に有名だから、人気があるから、票を集められそうだから、人寄せパンダになってくれとヌケヌケ言っているのが丸わかりではありませんか。これで「OK」する人がいると思ったら、思う方がよほどどうかしている。だからまず要請は受けないと思うが、「NO」を期待している人間が多さを示すために、私もメールを送っておくつもりだ。
ところで藤原紀香のほか、自民党は野球選手の新庄剛志にも出馬要請をしているらしい。自民党だけでなく、民主党も出馬要請しているとか。
【新庄選手のマネジメント事務所担当者は同日、自民、民主両党から新庄氏側に出馬をめぐる接触があったことを「事実」と認めた】(毎日新聞9月15日付)
新庄剛志がどのような考え方を持っているのかは知らないが、「自民党とも民主党とも一致している」などという不可思議な話はあり得ない。これまた両党とも、単に票を集められそうだからというだけで要請したとしか思えない。
自民党は昔から、すぐにタレントその他の有名人を掻き集めようとする。だから「またか」という思いもあるが、民主党までその真似をするとは。民主党よ、おまえもか。(むろん、新庄剛志が以前から民主党の政治的な理念に共感を示しており、それで出馬の話が出たというなら話は別。もっともその場合は、それでもなお要請などをおこなった自民党の神経を疑うが)
これからも自民党は、多くの有名人に出馬を要請するだろう。むろんタレントやスポーツ選手、あるいは小説家、音楽家、評論家、教育者……何でもいいが、つまりはある世界で実力を発揮し、世の中に広く知られている人々――が政治家になって悪いわけではない。自身の思想信条や理想を持ち、その実現のために政治の世界に入ろうというのであれば、それは大いに結構なことだと思う。だが、甘言に乗せられて広告塔になることだけは止めて欲しいのである。
そして民主党には、自民党と同様の「票になる有名人なら誰でもいいから」的な出馬要請は止めていただきたい(野党第一党の誇りぐらいは持ってくださいよね)。そのあたりは私達が政党の体質を見る際の、ひとつの基準でもある。