莫妄想という言葉があります。
莫然とした妄想ではなく、妄想する莫れ(なかれ)と読む漢文でした。
何でもないことを、さも何かがあるように、人々の妄想をかきたてる悪い爪技があります。
爪に引っかかった人は、何とか逃れようと、実際にあったことも、ないと言って隠したがります。
隠そうとすればするほど人々の妄想は膨らみ、爪技の成功を助けます。
爪の持ち主は、ネイルサロンにまで行ってさらに磨きをかけます。
おシャレぶった爪を見て、なかにはほめそやす暇人もあらわれ、もめ事でも何でもない話がずるずると何ヶ月も続きます。
平和ボケ微温泉に浸かって、ことの成り行きだけを楽しんで見ている人は、なかなか出たがりません。
もし、そういうことがあほらしいと思ったら、あることを「ある、それがどうした」と言ってしまえば妄想は消えてなくなります。
ひょっとすると、この星の人々の趣味は、案外ゲスなもので、隠す人も妄想をわかせる楽しみを味わっているのかもしれません。