たとえば音楽の道、その道を、生活苦に耐える人、生活苦を苦にしない人、生活苦を感じないですむ人、そういう人びとがこぞって目指す。
何万人に一人かは、生活苦を伴わない文化領域に入れる。
入れたからといって、そこには苦がないわけではない。別の苦が待っているに違いないが、それは行って見なければわからない。
生活苦の詰まった超大部屋と生活苦だけはない極小の部屋がつながっている。間の扉は運命で開く。
それぞれの部屋で、苦と楽が混ざり合っている。
楽の部分は見てわかりやすい。苦の部分は、特に意図がなければ見せたがるものではないから、感じ取るしかない。
苦もいろいろ、楽もいろいろ。おかしなことに、苦と苦は混ざり合わず、楽と楽も混ざり合わない。混ざり合うのは、苦と楽。
苦楽を共にすると言うのは、一緒に混ぜ合わせることだったのか。