夢のあと

釣りには夢があります。夢を釣っていると言っても過言ではありません。よって、ここに掲載する総ては僕の夢のあとです。

伝承毛鉤

2012年02月23日 08時36分51秒 | 渓流釣り
伝承毛鉤を意識して巻いてみました。
総て自然に帰る素材で作りました。スレッドもナイロンなどの石油製品ではなく絹ですし、アイも絹糸を撚って作りました。ヘッドセメントも使用せずに頑丈に結んだだけでフィニッシュしました。ハックルはもう少し多目に巻いた方が格好良いのですが、僕の好みであっさりと仕上げてます。

テンカラの毛鈎とフライフィッシングの毛鈎を比べると明らかにフライフィッシングの毛鈎の方が見た目にも綺麗で、虫にも似ていて素晴らしく思えます。沢山の派手なマテリアル(羽など)を駆使してファンシーな毛鈎が多く見受けられます(ニンフみたいなグロもありますが)

テンカラ(和式毛鉤釣り)は、現在は普通に広まっていますが、本来は山奥の地でとても排他的に進化した釣りです。そして、その土地その土地で先鋭の毛鉤師たちが試行錯誤を繰り返して出来上がったのが伝承毛鉤と言われている物です。残念ながらそれらは個人的使用だけに留まっていました。少なくとも門外不出ではありました。今のように交通が便利でなかった当時、渓流はかなり限られた世界であり、これらの毛鈎を他の人に教えて釣られてしまったら自分が釣れなくなってしまう事は明らかですから、苦労して育ててきた自分の毛鈎を簡単に教える事などはご法度だったのです。特に職漁師たちにとってはそれは死活問題にも成り得る事ですから、これらの毛鈎は最上級の企業秘密だったわけです。よって、そのほとんどは継承される事なく闇に葬られてしまった残念は過去を持っています。
 ですから本来、伝承はされていないのですが、時として信頼がおけると見込まれた人には見せたり、少し分けてくれたりして、僅かではありますが伝承された物が現在伝承毛鉤と言われているものです。
 伝承毛鉤の特徴は無駄なものを一切取り省いた、いわゆる必要最小限の毛鈎であることです。ろくな道具もなく、ろくなマテリアルも手に入らない(羽だけは良い物があったかも)時代ですから、無駄な事は総て切り捨てて、必要最小限の道具で必要最小限の毛鈎を作り、そのハンデはテクニックで補う事を考えたのです。これが西洋の毛鈎釣り(フライ・フィッシング)との大きな違いの一つです。フライ・フィッシングでは、如何に(見た目が)虫に見せられるか?を主眼に構成されており、テンカラでは、如何に(動きが)虫に見せられるか?に主眼を置いているのです。ですから伝承毛鉤は決して美しくはありません。無骨ではありながらも機能美と言いましょうか?消去法の美とでも言いましょうか?そういう美しさを持っているように感じて来ました。

 昔はフライフィッシングで使われるファンシーな毛鈎が好きだった僕ですが、最近ではこういう伝承毛鉤に興味を持つようになって来ています。ところがこういう伝承毛鈎は上記のような理由によって、残念ながら一ヶ所でいくつもの伝承毛鉤を見られる所が少ないのが現状です。

 ところが、ある所にはあることを知り、近い将来見せてもらいに行って来ます。消去法の美しさの頂点に達した毛鉤たちをこの目に焼き付けて来たいと思っています。 
 

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2 コメント

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シンプルですね (シーシー)
2012-02-27 09:25:35
 釣れそうな匂いがプンプンします。と言っても毛針は人が見てどうのこうじゃなくて魚から見てどう映るかが大切なのでつまるところ結果が全てですね。
 職漁師の毛針はシンプルだとかって簡単な言葉じゃ言い表せない力を感じます。何の変哲もない毛針なのに魚を引き出す力は勿論のこと、何匹釣っても壊れないとか形が崩れないとか、現場で得たことが盛り込まれてます。僕なんかが形だけ真似たところで見た目が似てても全く別物だったりします。生意気な言い方ですが管理人さんのは写真だけですが良い線行ってるんじゃないでしょうか。
 以前、自分の作ったフライを魚の視線でってことでゴーグルして浴槽に潜って下から眺めたことがあります。その光景を見た当時小学生の息子が母親(妻)に『お父さん変なことしてる』と言いつけて妻に叱られました。見た結果ですか、全部釣れそうに見えたし全部ダメに見えました。要するによく分からなかったです。
18番以下のミッジサイズなんて何だか分かりませんでした。
 匂いもない毛針を真っ暗な中でも食ってくる魚ってすごい目をしてるんですね、きっと。
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Re:シンプルですね (管理人)
2012-02-28 00:03:50
シーシー様
伝承毛鉤の現物を見たことがなかった僕は、職漁師たちの釣果だけを聞いた時に、よほど良い毛鈎なのだろうと思っていました。何せ毎日一束くらい釣り続けるのですから。
 ところが、現物を見た僕はとても釣れない毛鈎である事を知りました。伝承毛鉤は僕らが使ったらまず釣れないと思います。マテリアルもかなり低いランクの物ですし、かなり粗い仕上がりの物が多かったです。良い物を使う事は簡単だったと思いますが、プロは実収入を考えるので、いいマテリアルは使っていなかったようです。鈎もひと箱いくらみたいな、かなり粗悪なものを使用していました。これもきっと安価で購入できたからでしょう。しかし、彼らはその欠点を自らの腕で補っていたのだと思います。
 見る機会がありましたら一度見てみて下さい。それが本物であれば物凄いオーラですから、彼らの人生がそこに集約されている事がはっきりと体感できると思います。つまり何が言いたいかと申しますと、伝承毛鉤を語るということは、彼らの人生を語る事なのです。ですから僕のような若輩者が決して安易に語れるものではありません。たった一本の毛鈎が僕に訴え掛けてくるそのパワーは恐ろしい物があります。ですから、これから僕は伝承毛鉤を安易に口にしなくなるでしょう、多分。
 そういう気迫をこの画像から感じ取れるようなら嬉しいのですが、僕が巻いた毛鈎にはそんな気迫は少しもありません。僕らのように遊びで作っている毛鈎と、収入のため、家族を支えるために巻かれた毛鈎とが同等に肩を並べられるはずはないのです。
 伝承毛鉤もっともっと崇高な物です。こんなケチな毛鉤とは次元が違います。そもそも僕が思っていた伝承毛鉤(様々なWebで紹介されているもの)は実際の伝承毛鉤とは程遠い物があり、今まで思っていた伝承毛鉤とはまったく違っていました。『伝承毛鉤を意識して・・・』なんて・・・。本当の伝承毛鉤を見たことがなかったので言える言葉です。現物を見てしまった現在は、伝承毛鉤を巻くなんて1,000年早いという感じです。要は一生かかっても巻けないと言う事です。生活を支える毛鈎なんて絶対に無理だと思います。
 伝承毛鉤に憧れるのはいいのですが、作るのはまず無理でしょう。これからは普通の毛鉤を巻くようにします。

僕もやりましたよ、風呂で。家族にバカにされながら。でも、こういう検証って大事だと思います。聞いた話と実施にやってみたのでは微妙に違いますから。

 コメントをありがとうございました。
 
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