面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

言葉を労せずとも

2007年10月14日 | Weblog
 舞台の演出をながくやっているが、時には言葉を尽くしても理解してもらえない場合もある。昨年のアトリエ公演「裸月物語」で初めて僕の作品に出演していただいた女優塩山みさこ嬢は今年の7月公演「ミッドナイトフラワートレイン」で看板を張っていただき、見事観客動員新記録を更新された。女優としてはこれから大輪の花が開く、楽しみな方である。

 その塩山嬢が、稽古中、僕のダメ出しが少ないと不満を申されたことがある。「何を仰る塩山さん、あなたは僕が言わなくても解かってらっしゃるのですから」と、答えておいた。俳優は演出家から何もダメ出しされないのも不安になるらしいことは多くの俳優さんから聞いていたが、演出家としては、あまり唾を飛ばしたくないものだ。

 昨日、久し振りに塩山嬢とお会いした。素敵な女優さんは、僕の目の前でも臆せず煙草の煙をつんととがった鼻先にくゆらせる。まるでハリウッドの女優さんと向かい合っているようでワクワクする。大切なのはこの「ワクワク感」だ。台本を渡して少し言葉を交わした。話題は次次回の舞台に飛んだが、本当に言葉を労せずとも成り立つ会話は楽しい。
しかし、彼女は僕がこんなに大好きであることを解かってくれているのだろうか。どうも解からないフリをしているように見うけられる。女優としては懸命なことかも知れない、と、ひとり納得した。