面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

衣替え

2007年10月10日 | Weblog
 金木犀の香りは衣替えを知らせる季節の彩りだ。昨日ニュースで、金木犀がブログのワードとして一位になったことを取り上げていた。たった1日だが、生まれて初めて大多数の仲間入りが出来た。世の中には何万人もの人が目を通すW氏のようなブログもあれば、僕の日記のように、読んで下さる方々の面影が浮かぶブログもある。喜んで下さったり、心配して下さったり、心が通い合うのが嬉しい。

 劇団のHPにはめったに書きこまないが、劇団員の日記にはいつも目を通している。活力が感じられると、これも嬉しくなる。日々の精進がお客様に伝わるまで努力するのが僕らの仕事だが、つい、弱音や愚痴を吐いてしまうこともある。笑って許して頂けるとあり難い。

 さて、夏物を全て洗濯に出し、厚手の物に着替えたが、まだ汗ばむことが多い。さりとて、夏物を引っ張り出す気にはなれず、我慢して着ている。今しばらくの辛抱だろう。そのうち、北風が吹き荒れて、襟を立てて歩く季節となるのだ。特に、ビルの谷間の凍りつくような寒さは、大都会の冬を象徴している。思っただけでも身震いするようだ。

 終わったばかりなのに、もう夏が恋しい。来年の夏はオリンピックだ。北京に行こうねと、8年前に約束した人は、今何処で何を思っているだろうか…。叶わぬ約束ほど哀しいものはない。そういえば、年々約束の数が減っていくようだ。子供の頃からの約束を入れたら、叶わなかった約束の数は机の抽斗からはみ出すほどある。

 エピタフに、星の数ほど約束が叶わなかった男、とでも書いてもらおうか。

成功の秘訣

2007年10月10日 | Weblog
 音楽劇セロ弾きのゴーシュで関西へ出かけた新人の司亮が劇団HPに日記を書きこんでいるのを見た。阪急宝塚線のモノレール駅でにっこり笑った写真が添付してあった。劇団内オオディションで勝ち残り、東京パシフィック管弦楽団の森田団長に認められたのには実力だけではないちょっとしたエピソードがある。

 ゴーシュのナレーター役は、ナレーションの他にゴーシュを除く全ての登場人物の声を使い分けるという難役である。初代が武藤秋人、そして太布、後藤亨からまたか涼へと芸達者な俳優が演じ、またゴーシュ役の安達竹彦の演技も絶賛されているので誰もが共演したがっている。司亮も憧れてはいたらしいが、第一候補のHの演技も悪くはなかった。「誰かもう一人、聴かせてもらえませんか」と、団長に請われて、司に電話をかけたのは22時半だった。これから深夜のバイトだという司にゴーシュのオーディションだというやいなや、「今すぐ行きます!待ってて下さい」と電話が切れた。「今すぐ来るそうです」僕がそういうと、「何処からですか?」と団長。「確か、横浜の外れです」「今からって!…、わかりました。待ちましょう」 

 24時10分、息を弾ませて司亮が稽古場に現れ、「遅くなりました」と、頭を下げた。「君は、帰りの電車がないのを知ってて来たのかね?」「はっ???いいえ、ゴーシュのオーディションだと聞いて…」

 Hには悪いが、司のこの返事で、森田団長が司亮を選ぶのは歴然だった。それから、団長の指導で朝までの特訓が続いた。こうして、成功する者の伝説は作られるのだ。司亮は声優志望だ。僕は司亮の声優デビューを夢にも疑ったことはない。まだ20歳だ、焦る事はひとつもない。舞台で実力を磨くだけで良いのだ。