滋賀県立美術館訪問 レポート
ガイドツアー 学芸員 芦髙郁子氏
企画展「川内倫子 M/E 球体の上 無限の連なり」展示室3
関連展「川内倫子と滋賀」展示室1
日時:2023 年2 月18 日(土)13 時〜14 時30 分
参加者:15 名
滋賀出身の写真家・川内倫子の展示を芦髙郁子学芸員にご案内いただきました。
展覧会タイトルの「M/E」は、「母(Mother)」「地球(Earth)」の頭文字で「母 なる大地(Mother Earth)」、そして「私(Me)」という意味です。
<4%>というシリーズからツアーは始まりました。物理学者の佐治晴夫さんの「宇宙の中で私たちが目に見えるものはたったの4%に過ぎない。96%は見えないが確かに存在する」という言葉からインスピレーションを得た世界が表現されていました。
会場デザインを中山英之建築設計事務所が担当し展示空間にはさまざまな仕掛けがありました。くり抜かれた壁から向こうの作品が見えたり、気がつかない壁の下の方に小さい映像が映し出されたり、阿蘇の野焼きの写真が窓の外に展示されたり、床に川面の映像が映し出されたり、アイスランドの火山に入ったときの地球に包まれる感覚を表現した、襞状の薄い布でできた洞窟のような空間など、川内倫子さんの写真世界を多面的に見ることができました。
〈One surface〉というタイトルのモノクロの写真の部屋では、川内の写真絵本 『はじまりのひ』の朗読が流れていました。場所によって聞こえ方が異なり、 中央に吊られた布とともに、ゆらぎが感じられます。
関連展「川内倫子と滋賀」では、滋賀で撮りためてきた映像や、長年家族を撮影した写真が投影され、祖父の死と命の誕生など命のサイクルを感じました。 映像のために作曲された曲も印象深く心に残りました。
また、滋賀県甲賀市にある障がい者多機能型事業所「やまなみ工房」を約3年間撮影した写真と映像も展示されていました。
《サッポロ一番しょうゆ味》のパッケージが展示台にポツン。なんだろう。やまなみ工房の利用者の一人が、朝起きてから寝るまでサッポロ一番を見て過ごすようで、パッケージの上に貼られた日付は、川内倫子さんが撮影に来た日とのことでした。
「生」と「死」、巨大なものと小さいもの、宇宙と日常、それらがゆらぎ、遠くにあるようでつながっていて、淡い色合いなのに力強さも感じられ、タイトル にある「無限の連なり」に包まれるような感覚になりました。
詳しい説明をありがとうございました。
(事務局:奥村恵美子)