美術館にアートを贈る会

アートが大好きな私たちは、
市民と美術館の新しい関係の構築をめざしています。

今村源・アーティストトーク(1/19)のご報告

2013-02-21 19:06:32 | Weblog
伊丹市立美術館でおこなわれた、今村源・アーティストトーク。
今回は当会第4弾プロジェクト作品「シダとなる・イタミ2013」の完成お披露目の機会でもありました。

日時:2013年1月19日(土)14:00-16:00
場所:伊丹市立美術館
参加者:38名


▲まず今回のプロジェクトのきっかけにもなった、2006年に伊丹市立美術館で開催された個展「連菌術」展について、当時を振り返りながらお話いただきました。
今村さんは個展開催の話を受けてから、伊丹市立美術館の多様な展示空間と作品をどう関わりながら、作品をいかして面白く展開出来るかを考え、学芸員の方と密な打ち合わせをおこないながら準備をすすめていったそうです。結果、ホワイトキューブでの作品展示とは違う、今村さんにとって面白い場所と機会となりました。
個展タイトルのアイディアや、作品の設置場所のエピソードなど、お話からは個展開催に向け、私たちの見えないところで伊丹市立美術館の方々と今村さんが奔走された様子が想像されます。



▲お話の中盤に、今村さんと一緒に今回のプロジェクト作品「シダとなる・イタミ2013」を観賞しました。
地下の展示室への階段を下りて行くと右手に作品が見えてきます。参加者の皆さんはそれぞれ自分の見たい位置へと移動しながら鑑賞。通常は入ることができない、地下2階への階段にも特別に入らせていただき、下から作品を見上げることもできました。角度によってさまざまな楽しみ方ができる作品です。


▲作品の観賞後は参加者から今村さんへの質疑応答を設けました。
「シダにくっついている今村さんは何をしているの?」「人物は何で出来ている?固定しているの?」
など小さな疑問にも今村さんは丁寧に答えて下さいました。
約1時間半のアーティストトークは今村さんのユーモアのあるお話であっという間でした。
ご協力いただいた作家・今村源さん、伊丹市立美術館の皆さん、ありがとうございました。




「シダとなる・イタミ2013」について

今村さんのお話に出てきた、作品に関するいくつかのキーワードをご紹介します。
これらから今村さん作品を観ると、また違った一面が観るかもしれません。



「人物像」
人物像は今村源さん自身です。
従来の人物彫刻は人間の生命力をいかに彫刻にこめるかという人間讃歌の世界。今村さんは逆にしぼんでいくような、自然に自身が同化していく逆のイメージから、小さく薄い人物像がうまれてました。自分が意志を持ち主体的に動くのではなく、受動的に物に委ねながら同化していく、そんな存在になりたいという思いから、今村さん自身が像に反映されていったそうです。
これまで大きな空間の中に人物像が埋もれるように存在していたのですが、今回の「シダになるイタミ2012」は人物像が観客の目の高さに飛び込んでくる、これまでとは違う見え方です。


「シダ」
初めて今村さんの作品にシダを作ったのは2005年でした。
このシダは一本の針金から一筆書きのように、継ぎ足しや切り目はなく作られています。
当時、今村さんは仏語の「色即是空」(この世にある物質的なものは存在するが実は空(くう)である)の言葉から、スルスルとほどけて、存在が消えてしまうイメージを持っていました。
そしてシダの一種であるヘゴの簡単な法則で増えていく、広がる構造に惹かれたのがきっかけです。


「泡」
2006年の連菌術展で制作された泡は、伊丹市立美術館の空間を活かし大きく展開した作品で、今村さんにとって印象深いものでした。
そして今回の作品も2006年の泡を引き継ぐ形で制作されました。今回の「シダになるイタミ2012」は当初は階段下だけでなく外にも広がるプランがあったそうですですが、作品構造から耐久性や収納を考慮し、最小限でありながら、無限にひろがるイメージを保てる今回の作品設置場所、サイズとなりました。


伊丹市立美術館での作品展示は3月3日まで。
まだ作品を観られていない方は、ぜひ一度伊丹市立美術館で「シダとなる・イタミ2013」をお楽しみ下さい!