美術館にアートを贈る会

アートが大好きな私たちは、
市民と美術館の新しい関係の構築をめざしています。

総会(9/24)の議事録

2015-10-29 13:02:49 | Weblog
美術館にアートを贈る会 2015
総会・懇親会 議事録

日時:2015年9月24日(木)18:30~21:00
会場:アートコートギャラリー
ゲスト:大島賛都様(アーツサポート関西 チーフプロデューサー/学芸員)

◎佐野理事長挨拶
寄贈プロジェクトも第5弾が始まった。作家や作品選びにも時間をかけた。このように手間をかけることにこの会の醍醐味がある。お互いがお互いを理解するいろいろな関係をひとつひとつ掘り下げながら、よりネットワークを強めながら進めることで次のステップにつながってきた。
知恵と情熱を大事にしながら一緒に末永くおつきあい願いたい。

◎事務局 嶋津氏より クラウドファンディング試案の説明

募金活動のひとつの方法として、クラウドファンディングの検討に入っている。
クラウドファンディングとは、ウェブで広く資金提供を呼びかけてお金を集める方法。4つのタイプがある。
*寄付型。集めた資金を全額寄付に充て、リターンはなし。
*投資型。出資者がプロジェクトの利益から配当という形でリターンを受け取る。
*融資型。出資者が利子という形で一定のリターンを受けとる。
*購入型。支援者はお返しとしてモノやサービス、権利という形での特典を受け取る。

この中では購入型が多い。何が違うかというと手数料の違い。期間設定の違い。
Motion Galleryが最適ではないか。その中に2種類あり、プロジェクトファンディングはプロジェクトがすでに進んでいても可能。目標金額に達しなくても返金不要。ただし達しないと20%の手数料になる。達すると10%。
募金活動の進め方やリターンの対象についても、ワーキングチームで今後検討を続けていきたい。


◎大島賛都氏の講演
「アーツサポート関西の取り組みと学芸員としての活動」

大島賛都氏 プロフィール
1964年、栃木県生まれ。英国イーストアングリア大学美術史学部卒業後、オックスフォード近代美術館にてインターンシップ。1997年から東京オペラシティアートギャラリーの設立準備に係わり、現代美術の展覧会の企画を行う。サントリーミュージアム[天保山]学芸員(2004~10)を経て、現在、サントリー大阪秘書室所属。「アーツサポート関西」の設立準備を関西・大阪21世紀協会にて行う。
手がけた主な展覧会:「リュック・タイマンス展」(2001)、「ダグ・エイケン展」(2002)、ジャン・ヌーベル展(2003)、「ガンダム~来たるべき未来のために展」(2004)、「インシデンタル・アフェアーズ展」(2009)、「レゾナンス展」(2010)、「Motohiko Odani: Time Tomb」(fotografiska, Stockholm, 2013)など。

美術館にアートを贈る会では、2009年5月に行なった美術館訪問でサントリーミュージアム[天保山](2010年12月閉館)を訪問。そのとき開催中の展覧会「インシデンタル・アフェアーズ うつろいゆく日常性の美学」の企画をしていた大島氏に説明をいただいた関わりがある。


<設立の経緯>
アーツサポート関西(ASKと略)は2014年4月にスタートした。
関西経済同友会の歴史・文化振興委員会がもともと関西の文化、経済を活性化できないか、芸術文化を軸にして関西を元気にすることができないかと検討しているなかで、英国のアーツカウンシルに出会い、導入することになった。
2012年2月に、大阪版アーツカウンシル「タニマチ文化評議会(仮称)の創設を」という提言書をまとめ、それが原型になっている。
そもそもアーツカウンシルとは何か。第2次世界大戦後、ケインズが提唱したもので、第2次世界大戦中に、ナチスドイツが文化をプロパガンダの材料にして悲惨なことをした。その反省にもとづいて、芸術文化というのは政治から独立した形であらねばらないという発想のもとで、基本的には税金を使うが、使い途は評議会カウンシルをつくって、そのカウンシルがいろいろなことを決めて、それにしたがってそのお金をつかっていく仕組みのことである。
At Arm’s Length 腕1本の原則という言葉があるが、腕一本分の距離間で税金は使っていくものだと。基本的にはそれがアーツカウンシルの発想。それを大阪でもやってみようとなった。

<市民参加による新しい芸術・文化支援の仕組み>
ちょうどその準備をしているときに、大阪府市でも大阪版アーツカウンシルをつくるという話があり、同友会案では民間と行政の両方のお金を集めてやっていこうとしたが、行政の方は行政だけでやっていきたいとのことで、必然的に、同友会の方は民間の寄付だけで運営費・助成金のすべてをまかなうことにした。

<ASKの特徴>
降雨型からプラットホーム型への転換。
寄付者と支援を受ける者がお互いに交流ができるような仕組みづくりをした。
芸術は、鑑賞者が受益者として享受するものだが、鑑賞者が寄付をすることによって、芸術文化の創造に関わっていく。それによって相互交流的な関係が生まれてくる。寄付を出した支援者の顔がしっかり見えるよう、寄付者と支援を受ける者が、芸術を通して直接交流をしていけるようにした。これまでそういう取り組みはなかったのではないか。

<運営の仕組み>
一般市民の方々から寄付をいただいて、それを支援に回して、芸術文化を支援する。さらにお互いに交流していく、その大きなサイクルを回していく。

具体的には、ASK運営委員会が全体を仕切っている。事務局は、関西・大阪21世紀協会の中に置かれていて、協会に事業計画、予算などを報告して承認を得ながら活動をしている。

民間の寄付による芸術・文化支援の新たな可能性として、一番大事なことは「支援の見える化」。
寄付で芸術文化を支援することによって、芸術家から支援者へのリターンなどインタラクティブな関係が生まれ、お互いが成長していく上昇的スパイラルができていくのではないかと思っている。
寄付者とアーティストの交流があって、アーティストと鑑賞者の双方が成長していくのではないか。芸術文化の活性化には、鑑賞者が重要であり、鑑賞者を育てる必要がある。アーツサポート関西では鑑賞者の育成にも関わっていけるのではないかと考えている。

<寄付と支援の3つの組み合わせ>
1 一般申請(使い途の指定のない寄付をプール)
2 個別基金申請(寄付者が個別にファンドを設置)
3 特定型個別基金(寄付者が助成先を特定)



<平成27年度の寄付と申請>
寄付を集めるため、チャリティ・ファンドレイジング・パーティを2014年5 月にリーガロイヤルホテル大阪で開催。
さまざまな危惧はあったが、ワーキングチームをつくり有機的に動いて、1万円のチケットを売っていった。結果は参加者は1650人。寄付の総額は約2500万円集まった。
平成26年度としては全額で4200万円の寄付が集まり、関西も捨てたものではないと思った。
申請もどれだけ来るのか不安だった。お金もないし、事務局も私ひとりでやっているような状況だったので、広報もできなかった。5,60集まるといいねと言っていたら、蓋を開けてみたら200件近く集まった。しかも相当レベルが高かった。申請金額を合計すると1億8千万。しかしお金は1000万しかない。嬉しい悲鳴状態だった。大阪が半分、京都が4分の1、兵庫、東京など、海外からも数件あった。
基本は地域に密着した活動ということなので、関西の文化の振興を支援する、ローカリティは重要な切り口で、何らかのことで関西と関わりをもっているとよいので、関西に拠点があるとか、関西以外の団体でも関西で活動すれば大丈夫ということで、27年度は26件助成することができた。
来年度申請の準備をしている。事務局は2人増えて3人体制になり、戦略的に取り組んでいく。

アーツサポート関西
http://artssupport-kansai.or.jp


◎堂島リバービエンナーレ

大島氏は現代美術のキュレーターとして、インディペンデントベースで活動をされている。そのひとつとして、堂島リバービエンナーレ2015を少しご紹介いただいた。
http://biennale.dojimariver.com

この展覧会は、2009年から始まり今回が4回目。今回のアーティスティック・ディレクターにイギリス人のトム・トレバーを迎えて行なわれ、大島氏はそのサポート役として関わられた。

「トレバーにディレクターを頼むという話を聞いてワクワクした。実際に彼の発想は素晴らしかった。テーマは、『Take Me To The River  潮流と流通の同時代性』これは昔のR&Bの有名な曲からの引用である。副題は、currents of the contemporary。同時代性の潮流と訳したが、currentsは重要なキーワード。currencyは通貨。流通しながらいろんなものを変容させていくもの。currentsということばは非常によく練られている。彼は15人の作家に声をかけた。アンガス・フェアハースト/ピーター・フェンド/サイモン・フジワラ/メラニー・ギリガン/池田亮司/メラニー・ジャクソン/笹本晃/島袋道浩
下道基行/ミッシェル・スティーブンソン/ヒト・スタイル/スーパーフレックス/照屋勇賢/プレイ/フェルメール&エイルマンス。このラインアップも素晴らしかった」

◎懇親会
副理事長 田中恒子氏による乾杯のもと懇親会が始まった。



◎まとめ
大島様、貴重なお話をありがとうございました。
美術館にアートを贈る会も、市民参加によって美術館との関わりを深めていこうとしており、ASKの活動もまた市民参加による文化・芸術支援であり、支援者と支援された者との交流を深めるところも相共通する点が感じられました。関西の文化の土壌は深く力強いものがあります。10年を超えた当会の活動の意義も再確認できました。これらの活動が関西そして日本の文化力を深める一助になりますように。
(記録・奥村)