美術館にアートを贈る会

アートが大好きな私たちは、
市民と美術館の新しい関係の構築をめざしています。

第7回美術館訪問「京都市美術館」のご案内

2014-05-17 02:45:03 | Weblog
第7回美術館訪問 京都市美術館「近・現代美術の収蔵への取り組み」

日頃は「美術館にアートを贈る会」の活動にご理解とご協力を賜り、誠にありがとうございます。

ご好評をいただいています美術館訪問の第7回を開催いたします。
京都市美術館は、昭和初期に日本で二番目に設立された大規模公立美術館です。
開設当初からその時代のコンテンポラリー(現代美術)の収蔵に積極的に取り組んでこられました。これまでのコレクション形成や、社会状況の変化によってどのような展望をお持ちなのか、学芸課長の尾凬様より熱いお話を伺います。
美術館にアートを贈る会としても、今後の寄贈についてリサーチできるよい機会だと考えています。
是非奮ってご参加ください。

===============================

レクチャー 『近・現代美術の収蔵への取り組み』

日時     2014年月6月14日(土) 10:30-12:30
(集合:10:20京都市美術館正面入口)

訪問先    京都市美術館 
       京都市左京区岡崎円勝寺町124(岡崎公園内)
       http://www.city.kyoto.jp/bunshi/kmma/information/access.html

レクチャー 「近・現代美術の収蔵への取り組み・美術館の現況と今後」
       京都市美術館 学芸課長 尾凬眞人氏
       
       お話を1時間、その後質疑応答も含めた意見交換を行います。

申込先    6月7日までに下記e-mailへ お名前と人数をお知らせください。
       info@art-okuru.org (美術館にアートを贈る会事務局 )
 
参加費    サポート会員は無料
       一般参加は500円(当日徴収させていただきます)
  
* 当日、京都市美術館で開催中の展覧会は次の2つです。

『作家の眼「高橋秀-気への形象」』展
高橋秀(1930~)の長いキャリアのなかで、1970年頃から約半世紀に及ぶ作品の変遷を追い、作家の全貌に迫る展覧会です。

『2014京展』
京展は、作家の登竜門としてもたいへん評価の高い京都市主催の全国規模の公募展です。毎年、京展賞、市長賞などの行方が注目されます。

どちらも興味深い展覧会です。お見逃しなく。
なお恐れ入りますが、各自チケットをご購入の上、自由にご鑑賞ください。

http://www.city.kyoto.jp/bunshi/kmma/index.html

全国美術館会議 第43回教育普及研究部会でのレクチャー(ご報告)

2014-05-06 12:45:58 | Weblog
全国美術館会議 第43回教育普及研究部会 レクチャー(要旨)

日時:2014年3月13日(木)15:00-16:00 レクチャー
              美術館にアートを贈る会 副理事長 田中恒子
              17:00-18:00 質疑応答

場所:兵庫県立美術館 レクチャールーム
参加者:31名

全国美術館会議・教育普及部会は、全国美術館会議に加盟している全国の美術館の教育普及に携わる学芸員・研究員・専門スタッフにより構成された研究部会です。 年に2回の会合では美術館の教育普及活動に関するテーマを設け、そのテーマに即した専門家のお話を聞いておられます。
今回は、市民とミュージアムの新たな関係をテーマに、ミュージアムの大切な機能のひとつである「収蔵」をサポートする活動として当会の活動を紹介する機会をいただきました。
http://www.zenbi.jp/data_list.php?g=80&d=68



1) 美しい事がわかる大人へ
私は小学生のとき絵画教室へ通っていた。学校の授業と違って、そこでは絵を描くのがとても楽しかった。その先生曰く「ぼくは絵描きになってほしくて絵を教えているのではない。君たちが美しいとはどういうことか、わかる大人になってほしくて絵を教えている」。感動した。小学校5年生のときに聞いたその言葉が73歳のいまも忘れられない。いまだに、美しいとはどういうことなのかを追い求めている。教育のチカラはすごい。

2) 見方はいろいろあっていい
小学生たちが自宅のコレクションを見に来てくれたことがある。鑑賞の仕方が面白い。大人は立って360度ぐるりと見て回って終わり。ところが小学生たちは作品の廻りに寝転がって見る。名和晃平の「羊」の横に寝転がって「綺麗!ものすごく綺麗!」と叫んだ。見え方が違ったと思う。

高校生が鑑賞に来たときは、入り口で「今日見る作品の中でどれかひとつ買うとしたらどれを買うか?どれをもらうか?書いてください」という宿題を出した。鑑賞作文が後で送られてきてびっくりしたのは、全員が違う作品を書いていた。たとえば、「お腹がすいていたので、串カツがトラックに載っている作品を見て、お腹すいたと思った。私ならそれを買います」素直で面白い感想。
この方法は高校生以上の大人にも使えるのではないかと思う。

中学校の校長時代には美術の授業を特別に設けてもらったことがある。美術教室にずらりと作品を並べて、中学生たちに見てもらった。まず10分間見る。その中でお話をしてみたい作品をひとつ選ぶ。その作品をじっと見てお話をする。残り30分で文章にする。これもとても面白い内容だった。会話調もあれば独白調もある。作品との対話も楽しい。

3) 和歌山県立近代美術館での展覧会のとき
会期中はほとんど張りついていたら、出口で「面白かったね」とみなワイワイ言いながら出てこられた。私は「美術は楽しい」ということを表現していたつもり。間違ってなかったと嬉しくなった。美術の楽しさは、厳かさとは別の次元にある。


4) 美術館にアートを贈る会誕生について
アートコートギャラリーの八木光惠さんがご主人の仕事の関係でアメリカに住んでいるとき、アメリカの美術館がいかにたくさんの寄贈で成り立っているかを知り、日本でもできないかと呼びかけられた。欧米では自分のステイタスとして作品を贈ることはよくあること。大富豪だけでなく友の会や個人でも。そして「現代美術を贈るという運動をしよう」。あまりにも日本の美術館には現代美術が入っていない。現代美術とは、現在進行形の文化財。私自身コレクターとして、コレクションとともに暮らしてきた。作品は家族である。1000人の家族をもち私を励ましてくれた。現代美術作品を買い、若い作家を応援してきた。
この私の思いと、篠さんという慧眼のキュレーター、世界の美術事情を知っている八木さん、美術を愛している佐野さん、4人が発起人となって会はスタートした。

5) 会の仕組み
ステップ1、何を贈るか、考える。
ステップ2、寄付を集める。
ステップ3、実際に買い上げて寄贈する。
第2弾の寄贈プロジェクトでは、作家の人がこう言った。「これはwinwin の会ですね」作品が美術館に入る事で作家はwin。美術館としてはいい作品が入ってwin。贈る会の人たちは、自分たちの活動が社会的に認められてwin。

6) 第1弾から第4弾の作品を紹介
現在は第4弾の今村源さんの「シダとなる・イタミ2013」が進行中。

【質疑応答】


レクチャー1で当会活動の紹介のあと、レクチャー2では、なにわホネホネ団の団長の西澤真樹子氏の講演が行われ、その後質疑応答時間が設けられた。

質問(Tさん):四つの作品は総じて地味な気がする。市民から美術館に贈るときに難解なものではなく、誰にでもわかりやすいものを選ぶという主旨があるのか。あるいはもっと尖った、わかりにくい作品も贈る可能性のあるのか。

回答(田中):言われてみればとんがってない。ある意味、長持ちのする作品、これなら間違いなく美術的価値が高まっていく確信が持てる作品を選んでいる。これも副理事長の独断ではなく、つねに討論を重ねている。

質問(Jさん):暮らしや日常がキーワードに思えた。一方で、美術館は非日常のように思われていて、自分の生活とのリンクがないと思われている、その壁をどう取り払うとよいか。

回答(田中):1年に1回ぐらいはいまの暮らしにフィットするような展覧会をしてもよいのではないか。生活は様変わりしていて、暮らしがおしゃれになってきている。そういう人たちを近づけるためにも、年に1回ぐらいはいまの暮らしを反映したような展覧会をしたらよいのではないか。

【感想】
教育普及に熱心な学芸員さんの熱気に圧倒されました。全国から集まってこられて情報交換や刺激をもらう場として活用されているのがよくわかりました。
幹事の清家三智さんから、陸前高田へ文化財レスキューに行かれたときのお話を聞き、自分たちが関わった美術館や作品であれば大事にしようという気持ちが働くということを聞き、美術館への寄贈に市民が関わる意義を再確認できました。
貴重な場に声をかけていただき、ありがとうございました。



第4弾寄贈プロジェクト説明会(3/9) ご報告

2014-05-06 12:36:37 | Weblog
第4弾寄贈プロジェクト説明会 in 伊丹市立美術館 (ご報告)

第4弾寄贈プロジェクト「今村源 シダとなる・イタミ2013」の説明会を、
寄贈予定先の伊丹市立美術館にて開催しました。

日時:2014年3月9日(日) 14:00~15:30

会場:伊丹市立美術館 講座室

参加者:一般出席者(5名)伊丹市立美術館 学芸員(1名)
    美術館にアートを贈る会理事(2名)、スタッフ(2名)

内容:【美術館にアートを贈る会の活動意義の説明】事務局岡山拓より


1) 展示施設の歴史
* ミュージアムの語源はムーセイオンという建物。古代ローマ時代にあった美の女神「ミューズ」を祀る神殿で、その中に文化財が飾られていた。
* 誰でも見に行けるような現在の美術館の始まりはルーブル美術館。それまでは特権階級のための美術館だった。フランス革命によってルーブル宮を所有していた貴族たちを追い出した後、革命政府がルーブル宮に飾られていた文化財を見て、「これらは国民の血税によってつくられたものだから国民のものである。公開してすべての市民が見る事ができるようにしなければならない」となり、フランス革命のひとつの成果として、ルーブル宮の公開が行われた。
* 日本の場合、文化財保護のため国立の博物館は比較的早くできたが、国が美術館をつくるのは遅かった。代わりに民間の努力が大正から昭和にかけて多くなされて大原美術館。大原財閥の学資援助を受けていた児島虎次郎がヨーロッパ留学の際に、本物の美術品を見て感銘を受け画業が発展していく。他方で、自分は運良くほんものを見る事ができたが、ほとんどの人は見る事ができない。そこで児島虎次郎は大原孫三郎に、日本の画学生のために、本物の西洋絵画を買ってくれないか、と懇願。児島虎次郎の人格と考えに賛同し、多額を投資し、大量の美術品を孫三郎は購入。大原美術館ができた理由は、市民のため、狭い意味では画学生のため、本物の美術品を見る機会をつくりたいという純粋な思いでできている。

2) コレクションについて
* コレクションは美術館の基礎の部分。ルーブル美術館では企画展を見に行く人は少ない。モナリザを見に行く人が多い。一番美術館で面白いのはコレクションの中にある。展覧会はコレクションの応用編である。基礎がしっかりしている美術館はお客さんを集める事ができる。
* 伊丹市立美術館であれば、風刺とユーモアをテーマにしたコレクションが充実している。オノレ・ドーミエなど風刺画のコレクションがある。
笑いやおかしみをテーマにした美術展を毎年している。方向性が定まっていて、美術好きには評価の高い美術館である。

3) 美術館のコレクションを増やす方法
* 購入
* 寄贈
現在は美術館のコレクションは寄贈で支えられている場合が多い。

現代美術をコレクションすることは難しいか。現代美術は価値が形成されている途中。これが100年後、200年後残るかどうか、美術館にとっても学芸員にとっても市民にとっても未知数。さまざまなハードルがある。現代のものを購入するのは時代のドキュメンタリーを残すという意味もある。

4) 美術作品は誰のものか
アートは人類のものと考えるとよいのではないか。作品を手に入れた場合、それは所有物だが、預かっているという感覚。作品は社会のものであり、人類のものであり、なるべくたくさんの人と共有し将来に託したい。

【第4弾プロジェクトの説明】伊丹市立美術館 学芸員 藤巻氏より


*いまコレクション展を開催中で、今村さんの今回の作品もコレクションに入ればよいなと思って聞いていた。今村源さんと伊丹との関わりは二つ。ひとつはお父様の作品をもともとコレクションしていたご縁がある。二つ目は、当館のテーマ「風刺とユーモア」に即して考えると、今村源さんの作品は非常にユーモアを含んだ作品で、2006年には「連菌術」という展覧会を開催できた。今回の作品は、美術館の場所に合わせたものをつくりたいということによるコミッションワークになっている。贈る会、作家、美術館の三者で相談しながら現在はプロジェクトが進行している。

【質疑応答】


活動の紹介を終えてから、参加者を囲んで率直な意見交換を行った。

この活動への参加の理由は「美術館は少々敷居が高い。何か面白いことがあれば行くという市民だが、もう少し積極的に美術館の企画に関われないかと思って参加した(Sさん)」「自分では寄贈できないが、自分でできる範囲の1口ですごい美術作品を寄贈することができる。そのほんの一部でも関わらせてもらっている喜びと一体感をもっている(Sさん)」。
副理事長の田中恒子さんは「美術作品を多数購入してきたが、作品は私物ではない。私は文化財だという意識が強い。歴史的に次の世代に残したい。作品を残す一番よい方法は美術館に寄贈すること。寄贈活動は、コレクションしている人と美術館、両方がOKにならないと成り立たない。美術館、贈る会、作家がみなwinwinwinの関係で、見に来る人も幸せな気分になる」
そのwinwin感をどう広げて行くのか。藤巻さんより「いまは体験がキーワードになっている。自分が何かをして楽しかった、というのをSNSで発信したい人が多い」。

【まとめ】
この活動は少しずつ裾野が広がりつつありますが、さらに深さと広がりを持たせるために、アイデアを出し合いながら普及を続けて行きたい。