美術館にアートを贈る会

アートが大好きな私たちは、
市民と美術館の新しい関係の構築をめざしています。

東洋陶磁美術館訪問(1/24)の報告

2010-02-22 16:13:54 | Weblog
大変お待たせ致しました。2010年最初の美術館訪問で、大阪市立東洋陶磁美術館を訪問しましたので、ご報告いたします。


日時:2010年1月24日(日)
講演:伊藤 郁太郎 氏

伊藤氏は、1982(昭和57)年の東洋陶磁美術館開館以来、25年間館長を務められました。今回の訪問では、特別展「北宋汝窯青磁」及び特集展、平常展を観覧した後、伊藤氏にご講演をいただきました。東洋陶磁美術館のコレクションや、美術館を取り巻く寄贈について、そしてもはや壮絶とも言えるお仕事の数々をお話し頂きました。


伊藤郁太郎氏の略歴と、東洋陶磁美術館
大学卒業後に、当時の安宅産業株式会社に入社。安宅英一氏直属の美術品担当の任に就かれました。安宅産業株式会社の倒産後、コレクションは大阪市に寄贈され、これを受け入れ東洋陶磁美術館が開館。館長の任に就かれました。住友銀行を中心に、住友グループ総出を挙げて大阪市への寄付を実現した一連の出来事は、当時「最大のメセナ」と呼ばれました。
ご講演の中では、安宅産業に入社されてから美術館開館実現に至るまでの数々のご奮闘をお話し頂きました。また、現在所蔵品の柱の一つとなっている「李秉昌コレクション」についても、李氏との出会いから寄贈実現までのいきさつやご苦労を詳細にお話頂きました。


李秉昌氏と共に世界を駆け巡って完成された、「韓国陶磁名品図録」。聖書と呼ばれる程の一冊です。

東洋陶磁美術館の寄贈受け入れ体制
 東洋陶磁美術館は現在約5000点の所蔵品をもっていますが、そのうち核となる安宅コレクションは1000点ほど。その他の4000点ほどもほぼすべてご寄贈だそうです。
 同館は1982(昭和57)年の設立当初から寄贈受容に力をいれてこられました。一般的には、寄贈の多い館は、寄贈頂いたものをすべて展示する余裕はありません。いっぽう東洋陶磁美術館ではご寄贈があった場合、かならず展示するという原則があり、寄贈者の為の特別な部屋を設けています。また一定額以上のご寄贈があった場合、ネームプレートにお名前を提示しています。このように、ご寄贈者に対して“お礼の心”を常に表すよう心がけておられます。
 日本では寄付税制が成り立っておらず、寄贈者が贈与税を払わなければいけない状況です(例えば米国では、寄贈すると、寄贈額分の税が控除される仕組みがあります)。ただし国公立の美術館は、現在特例が適用されていて、一定期間贈与税が免除されることになっています。寄贈者にも受け取る方にも税金がかからないよう、できるだけの環境を整えています。


二時間にわたる盛りだくさんのご講演は、オフレコの貴重なお話も多く、今回は簡単なご報告にとどめさせて頂きます。本当は皆様にも詳しくお話ししたいところですが…。どうかご理解下さい!
伊藤氏のお仕事についてより深くお知りになりたい方は、ご著書のエッセイ集『美の猟犬―安宅コレクション余聞』(日本経済新聞出版社/2007)をご参照下さい。