美術館にアートを贈る会

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栗田宏一さん展覧会訪問ツアー(7/18)要旨

2022-08-27 18:53:22 | Weblog

美術館にアートを贈る会
栗田宏一さん展覧会訪問ツアー(要旨)


 日 時:2022年7月18日(月・祝日)
     15:00〜16:00

 場 所:京都 法然院
     栗田宏一展「土の散華」会場
     (現地集合・現地解散)

 参加者:8名

 

 

 


夏の暑さが厳しい京都ですが、中心部から少し外れた法然院は、東山の木々に囲まれ、茅葺の山門をくぐると緑の清々しい非日常の世界が広がりました。


案内看板に従って、庫裏として使われていた建物へ。
作品を鑑賞しながら、栗田さんにお話をうかがいました。

 

栗田さん:
「昨年2021年に、住職からもうすぐ前回の展覧会より25年だとお声かけをいただいたのが、今回の展覧会のきっかけ。
久しぶりに法然院を再び訪問した際、この部屋に入った時、25年もの間に世の中では様々な出来事があり色々変わっているが、25年前と「変わらない寺・変わらない作品」をあえてしようと決めました。
チラシのデザインも25年前のままで、今回は開催日を変更したのみで全く変えていません。」

 

 

参加者からの質問に答えていただきました。(Q:参加者、A:栗田さん)

Q:土の種類は25年前と同じですか?
A:違います。というのも、毎回、最終日に掃き集めて大地に返していますから。

Q:縦27列×横27列の意味は?
A:3×3の数字は、曼荼羅やピラミッドにもあり、仏教、ジャイナ教、キリスト教にもある数字。
これを掛けた9×9=81を1つのグリットとして考えて、3列の27×27とすると、3×3がどこでも作れる。
これは、人間関係と同じで、どこを中心にしても作れるということはコンセプトの1つです。

Q:729種類全て違う土ですか?
A:全て違います。
真ん中が法然院の土です。北海道から沖縄まで、729市町村の土です。
置く順番は、袋に小分けした土をポケットに持ち、ランダムに取り出し、偶然性を大事にしています。土の色合わせはしていません。どんな色の土が隣り合っても似合います。

Q:どんなことを考えながらされていますか?
A:この作品は3日半ほど、20時間はかかります。
始めは淡々と、徐々に極まってくる感じです。自分の腕が土の通路になっている感覚があります。

Q:土はどのようなところで採取するのですか?山や川ですか?
A:田んぼや畑でとる土です。掘らずに、表面に見えている土を集めます。
拾ってきて、乾燥させ、少し砕いたり、篩にかけたりします。
土について自分たちが普段いかに見えていないか。逆に思っている茶色い土はなかなかないのです。
和歌山県立近代美術館の展示作品は色合い、グラデーションで並べてありましたが、自然光と部屋の中の電気の光では見え方が異なり、現場で並び替えたりしました。
自然光の中では、土の色のピンク、緑が見えてきます。
今回の作品は、立って作品を鑑賞いただくより、視点を下げて、正面からよりも斜めから見てもらうのがきれいです。

Q:土に興味を持ったのはなぜですか?
A:元々バックパッカーで海外などを回り、帰ってきて日本のことを知らないと、土の美しさから、足元のことを知らないと思いました。
アートをしている意識はなく、言葉は必要ではない、アートを利用して言いたいことを言っています。

Q:今回の作品は2003年の東京都現代美術館以来となるのですか?
A:空調や期間の問題で美術館ではあまりできません。フランスでは何回か制作しました。

Q:土以外の作品は?
A:小石を使った作品があります。1991年〜今で30年。満月の夜に小石を一つ拾っています。

Q:砂の作品は?
A:砂は無機物なので使いません。
土は有機物で、生きとし生きるものが含まれているので、有機物であることもコンセプトの1つです。

Q:ご自身は仏教にルーツがあるのですか?
A:日本で育つと仏教、神道、アニミズムの3つが自然と結びついています。

Q:7月16日の「散華」公開制作について教えてください。
A:ラストのL字を1時間くらい掛けて制作しました。
最終日24日「放生」では、729種類の土を掃き集めて、法然院の庭に、自然に返します。

Q:次回展覧会のご予定は?
A:
東京都庭園美術館 「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」
会期:2022年9月23日(金・祝)-11月27日(日)
参加予定作家:さわひらき、福田尚代、宮永愛子、相川勝、栗田宏一、evala ほか


感想
土がこんなにも美しいことに驚き、感動しました。
静かで繊細で神秘的な作品に思いを巡らす時間となりました。
大変貴重なお話をしてくださった栗田さん、ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

作品を鑑賞後には、さらに「土の散華」展チラシにある言葉が響きました。

「まず、足元の自然を見直すことによって、人間が本来持っている何気ない小石や草花など身近な自然と感応し合う心の復活を促すきっかけになればと思います」

 

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【栗田宏一さんプロフィール】
1962年山梨県生まれ。1993年より土の持つ色合いの多様性に着目し、日本各地で 土を採集。それらの土によるインスタレーションを発表している。各地で採集された土は一万点にもおよび、それぞれが乾かされ、ふるいにかけられると、様々な色彩を表す。土が持つその無限の色合いから、過去の生命の痕跡や自然、世界をとらえる試みを続けている。著書に、「土のコレクション(ふしぎコレクショ ン)」(フレーベル館)。

栗田宏一さんの第2弾寄贈プロジェクト(2010年)
http://www.art-okuru.org/project/index02.html

栗田さんのブログ:SOIL LIBRARY
http://soillog3.exblog.jp/

 


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