次はどこの銀行がアウトになるのか?
無理な中間配当で某銀行が消えた後、多くの銀行関係者が固唾を飲んで待っていると、2003年にR銀行国有化のニュースが流れました。併せて、大手行の数を削減するプログラムの終了も、竹中大臣から宣言が出されました。金融危機の背景にあった不良債権処理の終焉を意味する宣言でもありました。当時7000円台で底値を這っていた日経平均株価は、この翌日から急騰を続けて、日本経済は最悪期を脱していくことになります。
この金融危機の時の教訓ですが、「銀行の生死の分かれ目は、『見栄えのする経営計画』や『麗しいビジネスモデル』などではなく、『自らの意思で生きていく強い覚悟』だったということ」でした。
大手銀行が作る経営計画は、公的資金注入時の健全化計画はもちろんのこと、金融再編時に新たに策定する新経営計画も、美しい横文字がいくつも並ぶ、それはそれはそのままマネジメントの教科書になる内容で、目を見張るものばかりでした。しかし、半年もしないうちに前提条件が崩壊してしまい、作り直しに追い込まれる事態が何度も発生しました。
そのような危機的事態に追い込まれると、大手行に勤務していたエリート銀行員の多くが銀行を離れていきました。「うちの会社にはビジョンがない」と言い残して。しかし、今思うと、銀行を離れていった彼らこそ、自分に対してビジョンがあったのか‥。ごく一部の成功者を除くと、彼らに将来を見通す力があったとはとても思えません。
そのころ、周囲の仲間とよくした話が「ミルク壺に落ちたネズミの話」。
生きることを諦めたネズミは、ミルクの壺の奥底に沈んでいき窒息死してしまいます。一方で、強い意志で生き抜こうとしたネズミは、壺の中でモガいて、モガいて、何とか生きようと手足をバタバタさせ続けます。長い時間、それを続けたところ、ミルクがバターに変化して、ネズミは壺から抜け出して助かる、という話です。
まさに、それを実感した5年間の経験でした。