「新作は文学的試み」=村上春樹さん、京大で語る(時事通信) - goo ニュース
作家の村上春樹さん(64)が6日、京都市の京都大で「河合隼雄物語賞・学芸賞」創設記念の催しに出演した。先月刊行された新作長編「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」に触れ、前作「1Q84」で日常と非日常の境が消失した世界を描いたのに対して「今回は、表面は全部現実だが、その底に非現実があるというものをやりたかった。新しい文学的試み」などと語った。
チェック柄の半袖シャツにグレーのジャケット姿で現れた村上さんは講演で「物語は人の魂の奥底にある。小説家はその深い所へ下りていく。臨床心理学者の河合先生ほどそのことを理解し、共感できた人は他にいません」と故人をしのんだ。
評論家の湯川豊さん(74)の質問に答える「公開インタビュー」では、デビュー以来の作品と内面の変化をたどり、「(1990年代前半の)『ねじまき鳥クロニクル』で重層的な世界を作り、上のレベルに上がることができた」と分析。さらに「1Q84」では「三人称スタイルで総合小説を書こうとし、それができた」と述べた。
地下鉄サリン事件の被害者らにインタビューしたノンフィクション「アンダーグラウンド」(97年)についても、「遺族の方に3時間インタビューした後で、1時間も泣いた。大きな体験だった」と振り返りつつ、「2000年ごろ、ようやく書きたいものが書けるようになった」と話した。
村上さんはストーリー重視の「物語」小説の重要さを強調し、「小説家の役割は人々が持つ『物語』のモデルを提供すること。読者がそれを読んで共鳴し、呼応することで、魂のネットワークができていく。それが物語の力」とも語った。
こちらの本はいかがでしょう。
夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2011 (文春文庫) | |
文藝春秋 |
内容(「BOOK」データベースより)
村上春樹が語る村上春樹の世界。19本のインタビューで明かされる、いかに作家は生まれたのか、創作のプロセスについて―。公の発言が決して多くない村上春樹は、ただしいったんそれに応じるや、誰にも決して真似できない誠実さ、率直さをもってどこまでも答える。2011年6月に行われた最新インタビューをオリジナル収録。
目次
アウトサイダー(聞き手 ローラ・ミラー(Salon.com 1997年))
現実の力・現実を超える力(聞き手 洪金珠(時報周刊 1998年))
『スプートニクの恋人』を中心に(聞き手 島森路子(広告批評 1999年))
心を飾らない人(聞き手 林少華(亞洲週刊 2003年))
『海辺のカフカ』を中心に(聞き手 湯川豊、小山鉄郎(文學界 2003年))
「書くことは、ちょうど、目覚めながら夢見るようなもの」(聞き手 ミン・トラン・ユイ(magazine litt´eraire 2003年))
「小説家にとって必要なものは個別の意見ではなく、その意見がしっかり拠って立つことのできる、個人的作話システムなのです」(聞き手 ショーン・ウィルシー(THE BELIEVER BOOK OF WRITERS TALKING TO WRITERS 2005年))
サリンジャー、『グレート・ギャツビー』、なぜアメリカの読者は時としてポイントを見逃すか(聞き手 ローランド・ケルツ(A Public Space 2006年))
短編小説はどんな風に書けばいいのか(聞き手 「考える人」編集部(考える人 2007年))
「走っているときに僕のいる場所は、穏やかな場所です」(聞き手 マイク・グロッセカトヘーファー(DER SPIEGEL 2008年))〔ほか〕