アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

生音のみがホンモノなのか

2024年01月02日 | ピアノ
先日「生音、録音/放送、さらにその先」という記事を書きましたが、そこでは、生演奏を録音したものを「素材」として、それをあれこれ加工して作る音楽のことについて触れました。

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そこまで行かなくても、生音VS録音という問題がありますよね。

生でピアノを聞いたときと比較すると、いくら現代の優れた技術による高音質の録音であるとはいえ、放送などを通して届けられ我々の自宅のたいしたことないスピーカーで鳴るときには何かが抜け落ちている(ような気がする)

最新のショパン・コンクールでは素晴らしい録音と配信があって、リアルタイムでコンテスタントたちの演奏が高音質で楽しめたわけなのですが、それは審査員たちが聞いているものとはやはりなにがしか違いがあり、ひとつの例としては牛田智大さんの演奏(の音色)の印象がかなり違うものだったらしい、といわれています。

(以下、引用は「ショパン・コンクール見聞録」(青柳いづみこ)より)

配信で聞いている分には素晴らしい演奏で、なぜ次に進まなかったのか納得できないファンも多かったのですが、審査員の中には「攻撃的な音色」と思った人もいたようです。
「タッチを押しつけてしまい、音質に問題があった」(ダン・タイ・ソン)

本人のコメントも
`「音量が足りていないのではと錯角してしまい、不自然な力で芸術的でない飽和した響きを引き出してしまった瞬間がありました」(牛田)

配信を通せば、生では聞こえる欠点が覆い隠される可能性もあるし、当然ながら、生では聞こえるサムシングが伝わらない可能性もある。
共通で聞こえるものもあるし(情報量的には共通で聞こえるものがほとんどなはずではある)、それぞれ違うものを受け取っているという部分もある(微妙ではあるけど、決定的な何か)。

それなら、生で聞こえるものが「ほんとう」で、録音で聞こえるものは「にせもの、間に合わせ」なのか…

「審査員は生の演奏で聴いているわけで、生でうまく聴かせるのが一番大事です。でも、その何百倍もの人が、ネットで聴いているわけです。マイクに乗った時にだけしかよく聴こえない人の演奏も、価値があるのではないかと思うのです。力強く鳴らすことができない人は、ホールで演奏した場合あまり鳴り響かないけれど、マイクに乗せるととても細かいニュアンスが美しく響いていて良く聴こえる。それは偽物ではなく、マイクを通したものとしての価値が別にあり(…略)」(角野隼斗)

そのようにポジティブにもとらえるとなると、そもそも「生音で聴くと良い演奏」というのがひととおりではないことに気づきます。

元々、ショパンは「現代スタインウェイピアノを使って、数千人入る大ホールで隅々まで響く音でピアノを弾いていた」というわけではなくて、小規模なサロンなどで魅力的な演奏をしていたはずですよね。そのような繊細で美しい演奏もまさしく「生音で聴くと良い演奏」であったはずだけど、それは現代コンクールで必ずしも評価される演奏ではないかもしれない。ショパンさん自身はいまどきのショパンコンクールで優勝できるのか?

小規模なサロンで、かつ、生音となると一度に楽しめる聴衆の数がめっちゃ限定的になるので、商業的にはかなり厳しいということになるけれど、今ならそのこじんまりした演奏を繊細なまま録音にのせて、全世界に届けることもできちゃう…これは、「録音」ももうひとつのホンモノとしてとらえる考え方といえそう。

もちろんその録音が生音と同じ意味で魅力的なのかどうかはわからないけれど。



---- 今日の録音:
「その時、その場」にいなくても聴けるというのは大きな可能性の拡がりではありますよね
クープラン/クラヴサン曲集 第2巻 第6組曲 神秘的な障壁 No.6-5(練習)

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