本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

I'M FLASH!【映画】

2012年09月11日 | 【映画】
「モンスターズクラブ」の試写会(東京フィルメックス)で、
『次回作は沖縄で撮影している。』との監督コメントと、
藤原竜也主演の情報が出てから、見たくて仕方なかった本作。

「蘇りの血」「モンスターズクラブ」と、
2作連続で期待を裏切られた豊田監督に、
(勝手に)最後の期待を持って見に行きました。

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新興宗教団体の3代目教祖・吉野ルイ(藤原竜也)は、
ある日謎めいた美女に出会うが、
彼が引きこした交通事故によって女は植物状態になってしまう。
教団幹部であるルイの母(大楠道代)は事故をもみ消すべく、
新野風(松田龍平)ら3人のボディーガードを雇い
ルイを南海の島へ避難させる。
やがてルイは、教団の秘密を暴く重大な決断を下すが……。
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色濃く監督のカラーが出ている作品だと思います。
個人的には、前2作品でガッカリした分はフォローして貰えた気がします。

「生」と「死」をモチーフにしているという点は前2作と共通ですが、
本作は圧倒的に前向きな作品です。

新興宗教の教祖を演じる藤原竜也と、
そのボディガードである殺し屋の松田龍平。
「生」と「死」の対比となっている二人が対峙する光景が、
爆音の音楽や美しい沖縄の風景に、とても映えていました。



実は、いまだ感想がうまくまとまらないので、思ったままに書きます。
読みにくいと思います。ごめんなさい。飛ばして下さい。



教祖・ルイには、銃弾も当たらず、死亡事故でも死なない。
「死」が避けているようにさえ見える彼の存在は、絶対的なものだったけれど、
神たる(神でなくてはならない)本人がそのことに違和感を感じ、
その身を放棄したいと願ったところに、「死」を司る殺し屋が現れ、運命は大きく変わっていく。

ラストシーンで、遥か遠くに見える光を目指す、ルイ。
そして一瞬の閃光と共に、今度は遠ざかっていく、光。

彼は神だったのか。神になったのか。神になれなかったのか。

最後の「生」への執着に突き付けられた「死」によって、
「生」から解放された1人の若者の希望の物語、といったところでしょうか。
正しいかどうかは分からないけれど、あたしにはそう見えました。
何だかちょっと宗教的に見えますが、
実のところ新興宗教は怪しくチープな物の象徴とされていて、
「生」と「死」という、もっと人間臭いテーマを描いた作品だと思いました。


役者に関しては、豊田組の常連さんも新参さんも、非常に良かったです。
空気感を壊さない演技と演出力。素晴らしいです。

とりわけ、藤原竜也。
彼の武器は、舞台仕込みの(良い意味での)過剰演技だと思うのですが、
本作では、そこをきちんと抑えて、心の葛藤を自然な空気感の中で演じていたと思います。
本人の努力と監督の演出力が成功したのかなと。
松田龍平は、当て書きだけあって見事にハマっていたし、
殺し屋2人も良かった。色眼鏡で見ていた瑛太の弟も見直しました。
個人的には、竜也・龍平の一人(二人?)勝ちかなと思っていたけれど、
伏兵で北村有希哉も良かったです。

加えて、映像が非常に美しかったです。海中からの映像や、水平線もキレイ。
沖縄、という神秘的なロケーションと、作品のテーマが非常にマッチしていました。

そしてラスト手前の銃撃戦シーン。
ネット評を見ると賛否両論なのだけど、あたしは鳥肌が立ちました。
ああ、やっぱり。これだよこれー。と、思いました。満足。
ネタバレは控えますが、あの一瞬の藤原竜也にしびれました。
(でも相方は、竜也にバイオレンスは合わないと言ってたので、若干の贔屓目も承知っす。)


しかしながら。

恐らくリアリティを求めながら観るには適していない作品です。
また、映画として楽しめるかどうか、これも疑問符が残る作品だとも思います。
あたしは好きだけど、手放しに傑作と言えるかどうかは・・・正直微妙。

例えば、前述した銃撃戦。
かなり後半のシーンなのですが、ここまでの間に観てる側のエンジンがかからなかった。
正直もう少し前から疾走感を感じられたら、評価はもっと高かったと思う。

ちなみに、相方の第一声は、「出来の悪い『ソナチネ』(北野武監督作)だった。」。
んー・・・言いたいことはわかる。
景色とか、構成とか、題材とか、共通項が多く、実際とても似てます。
模倣したつもりはないかもしれないけど、もったいない。
だってあっちの方がバイオレンス色が強いから、どうしたってインパクトで負けてるもんね。



各所で見かける映画レビューでは、
“あり得ない”設定・描写・展開に対してのつっこみがとても多く、
世間の評価と、あたし自身の評価にだいぶギャップがあり、正直ちょっと凹みました。

やっぱり贔屓目かなーと思っていたところ、
相方が、「豊田作品はよくも悪くも『一見さんお断り』なんだよ。」と言っていて、
それが良いか悪いかは別として、まぁその通りだなと納得。
万人受けしない、物凄く好みが分かれる映画だと思います。



何度もしつこく書いているので、今更ですが、
以前の豊田監督は、あたしの中でNo.1の邦画監督でした。
作風とか、空気感とか、キャスティングとか、どれもツボで。
今まで見てきた中で、いくつかの不動のtanakoベストのうち
「ナイン・ソウルズ」は結構な上位ランカーです。

「空中庭園」までは良かった、という風に評されることが多い監督ですが、
(その後、色々ありましたから…。何があったかはwiki参照。)
あたしも、「蘇りの血」を見てガッカリしたファンの一人でした。

でも本作で、以前の作品の雰囲気が垣間見えたので、
もう少し、追いかけていきたいなと思います。
好きな監督には違いないので、もっともっと新しい作品を観たいです。

もしこの映画が響かなかった人は、
豊田監督の初期作品をお勧めしますので、よければ是非。
好き嫌いはあると思うので、ハマらなかったらそれも仕方ないと思います。


でも、あたしは次回作も楽しみにしています。
まだまだ観てみたいと思えるくらい、希望が繋がったので。