本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

桐島、部活やめるってよ【映画】

2012年09月04日 | 【映画】
この映画、すっっっごく好きです。
が故に、記事も長いです。あしからず。


元々はタイトルに惹かれて気になった映画ですが、
久々だわー、この満足感。全部良かったです。本当に。

「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ。」の衝撃から早数年。
吉田監督は、個人的にかなり上位ランクで好きな監督なのですよ。

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とある田舎町の県立高校映画部に所属する前田涼也(神木隆之介)は、
クラスの中では地味で目立たないものの、
映画に対する情熱が人一倍強い人物だった。
そんな彼の学校の生徒たちは、
金曜日の放課後、いつもと変わらず部活に励み、
一方暇を持て余す帰宅部がバスケに興じるなど、
それぞれの日常を過ごしていた。
ある日、学校で一番人気があるバレー部のキャプテン桐島が退部。
それをきっかけに、各部やクラスの人間関係に動揺が広がり始めていく。
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最初に注意。

この映画は、「桐島」が何故部活をやめたのか、という謎を解き明かすミステリーではありません。
だからポスターの宣伝文句には、ちょっと違和感があり、
これに釣られて観た人は、あれ??て思うかもしれない。

この映画には「桐島」なる人物は登場しません。

スポーツ万能(バレーの県選抜)、彼女も美人、友達も多い、
誰もが憧れる「桐島」が、突然部活をやめたことが噂話として広がる。

本人不在のまま、高校生達の疑心暗鬼が募り、
次第に個々の感情や、人間関係が浮き彫りになっていく中で、
変わる人、変わらない人、何かを思う人、思わない人、
それぞれの在り方や、心の変化を、リアルに描いていると思いました。


高校時代って、小さなコミュニティの中だけど、
少なからずヒエラルキーが存在していたと思います。

クラスの中でも、マイナーな部活で一生懸命頑張っている大人しい生徒よりも、
帰宅部で遊んでる活発な生徒がモテていたりするし、
何の根拠もないけれど、運動部の方が文化部よりも上に見えたりする。

本人達も、回りも、無意識にそのヒエラルキーに囚われてしまっていて、
必要のない優越感や劣等感に、いつも苛まれている感じ。
大人になったら、そんなの全然関係なくなるのに、若気の至りってやつですかね。

あたしは、(主に部活で)所謂ヒエラルキーの下の方にいた人間なので
この気持ちが理解出来たし、この映画がツボだったんだと思います。

(ちなみに相方の学校は全然こういうのがなかったらしく、
あたしが熱弁してもピンと来ていなかった模様。それはそれで羨ましい。)


原作者も、監督も、この微妙なヒエラルキーをきちんと理解しているからこそ、
会話や情景描写に嘘くささがないのがとても良い。
朝礼や、教室や、お昼休み、放課後の、何気ないシーンの中で、
恋愛・友情も含めて、至るところに見え隠れする優越感と劣等感が絶妙だったと思います。


ちなみにこの映画の中では、「桐島」の退部に翻弄されるのは、
ほとんどがヒエラルキーの上とされている人達で
所謂、下の方にいる人達は、あまり興味を示さない。

これが、あたしにはある種の皮肉に見えて。

所謂、下の方にいるように見えている子の方が、きちんと“自分”を持っていて、
それに向かって努力をしていたりする。
そして、上の方にいるように見えている子は、
自分は流されているだけなんだと気づいたりして、ちょっと劣等感を抱いたりもする。

具体的に挙げるならば、弘樹君がそうですね。

あたしには、彼の心の動きこそが、高校生の成長物語として、
この映画の中の、1つのテーマにもなりえるのかなと思いました。

きっかけは、誰かが部活をやめる、という些細なことだけれど、
みんな、翻弄されながら、色んな思いを抱えながら、
『それでもこの世界で生きていかなければならないのだから。』
というセリフとリンクしていく構成が、本当に素晴らしいと思いました。


原作も読みたいなー。
でも映画がこんなに最高だったので、ちょっともったいないかなー。


ちなみにこの映画は、役者も一部を除きワークショップで決めたそうです。
変に先入観のない若い役者を使うことで、
そこに存在している高校生がリアルに見えてくる。
キャスティングも、演出も、本当に上手いです。


あたしの中では、“ハズさない”役者が何人かいて、
彼らの出演作は、内容を問わず見るようにしていますが、
神木隆之介はその一人です。
今回は、贔屓目抜きに期待の斜め上を行ってくれました。

あと、彼の友達役も良かったなー。影のMVP。
彼のセリフは1つもスベらずに、観客の笑いを誘ってました。
スクリームの下りなんて、相方大爆笑。

脚本のセンスも抜群ですね。



これだけ書いたのに、まだまだ書き足りない。
でも、これ以上書いても称賛しか出てこない。
もう一回くらい観たいです。観ようかな。

順当にいけば間違いなく、今年断トツNo.1の邦画ですが、
個人的な期待作があと1本残っているので、それがどう転ぶか…。
(ちなみに11月公開の「その夜の侍」。)

久々に、手放しでのお勧め映画です。
興味ある方は是非!!!