岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「巨木の森」への道を歩く(5) / 6月18日東奥日報「弥生跡地」観察会取材記事(10)

2010-06-30 04:52:08 | Weblog
 (今日の写真は、ラン科ツレサギソウ属の多年草である「キソチドリ(木曽千鳥)」だ。
北海道、本州(中部以北)に分布し、亜高山帯の暗い林下に生える。特に針葉樹林下に多いと言われるが、見る限りではそういうこともないようだ。27日の野外観察の日に「巨木の道」からの踏み跡道で出会ったものだ。
 だが、写真は違う。出会ったものはまだ、花を開いていなかったので、数年前に岩木山で撮ったものここで提示してある。
 茎長は15~30㎝になる。茎頂に淡黄緑色の花を10個前後総状につける。だが、あまり目立たない。唇弁は長さが約1cmで線状披針形、側花弁は斜めに立ち上る。側萼片は線形で左右に開き、背萼片は広卵形だ。距は長さ約1cmで、前方に湾曲している。
 葉は茎の下部に1枚つき、楕円形で、光沢がある。基部はやや茎を抱き、茎の中部に鱗片状の葉を1~2枚つける。。
 「ツレサギソウ」属には、「コバノトンボソウ」や「ミズチドリ」のように明るい湿原や草地を好むものもある。だが、「今日の花」の「キソチドリ」は代表的なうす暗い樹林下に生育するもので、苔むすような林床の湿地が主な生育場所である。
 名前の由来は、木曽地方で初めて採集されたことと花の姿を千鳥に譬えたことによる。「千鳥」は干潟や河原に住むチドリのことだ。)

◇◇「巨木の森」から岳登山道までの道を歩く、「キソチドリ」が咲き始めていていた…(5) ◇◇
(承前)…
 …ようやく1人が竹藪にくびれの出来ている場所に気がついた。26番カーブにある「湯段沢」に下降していく細い道に入ったのだ。
 入って間もなく竹藪に少しだけ広い空間が出て来ると「下り」が始まる。その広い空間で日の当たるところには「イワナシ」が生えていて、すでに「実」をつけている。だが、「実」は葉に覆われて、葉を持ち上げて見ない限り見えないのだ。
 先頭の私が言う。「イワナシの実がなっていますよ」と。「どこにどこに」と後で声が喧しい。そうしているうちに誰かが見つけたようだ。「あった、あった」とか「小さなナシみたい」という嬉しそうな声が聞こえてきた。
 これから秋になるとまだ白ぽっい薄緑の実も、「赤梨」と称される「長十郎」梨のような色に変わる。大きさこそ違うが、形といい色具合といい、将に日本在来種の梨と相似形なのだ。それだけではない。口に含むと、しっかりした「梨味」だし、梨特有の果肉のじゃりじゃり感まで持ち合わせているのである。
  今度は「オオバスノキ」が出てきた。だが、「ルビー」のような釣り鐘花は終わっていた。花が咲いていたならば誰にも、気がつくだろう。また、秋になって黒く熟した果実をつける頃になると、その実と紅く色づいた葉が「一目瞭然」で、その存在を教えてくれるだろう。しかし、花は薄緑色の若い果実となり、大葉の裏に隠れているので、誰も気がつかないのだ。
 私は足を止めて、みんながその場に集まることを待った。そして、揃ったところで、葉裏にひっそりなっている薄緑の「果実」をを指しながら、その日に用意した「パンフレット」に印刷されている「オオバスノキ」のカラー写真を示しながら…「赤い花がこの実になったのです。花の格好と実の形が似ていますよね」と言ったのだ。
 そして、今度は名前の由来の説明である。「現場で、現物を観察している」のだから、現物に即して「観察」することが大事なのである。
 「さあ、若い葉っぱを1枚採って下さい。そして、それを囓って下さい。」…中には「苦い」と言った人もいたが、殆どの人は「酸っぱい」と答えた。
 「そうです。これは酸っぱい木という名前の木です。酢の木と言います。関西以西に生える酢の木よりも、葉が大きいので『オオバノスノキ』といいます」…。私も序でに囓ってみた。爽やかな酸味が口いっぱいに広がった。いい気分である。
 しばらくは、足場の硬いしっかりした道が続く。ジグザグを数回続けると足場の軟弱な湿地帯が出てくる。
 山側から多くはないが水が湧き出しているらしい。それが、染み出して狭いが「湿地」を形成しているのだ。ひょっとすると「底雪崩」の崩落跡かも知れない。そこは背丈は低いが「陽樹」が覆い茂る薄暗い樹林帯の林下なのであった。
 その湿地にはイネ科の草が生えていた。そして、それに混じって数本の「ツレサギソウ属」の植物も生えていた。だが、残念ながらまだ「花」を開いてはいない。
 「これは何ですか」と訊かれたが、花の咲いていない状態では、はっきりと「名前」を特定することは出来ない。申し訳ないが、その場しのぎで「トンボソウ」の仲間でしょうと答えることしか出来なかったのである。(明日に続く)

◇◇ 6月18日付東奥日報紙 「弥生跡地」観察会同行取材記事掲載(10) ◇◇
 (承前)…
 …3. 森林伐採、自然遷移でない植林や植樹は「自然保護」とは相容れないことである。「森林伐採」は「自然破壊」であると理解している人は多いだろう。しかし、まだまだ、「伐採」を「人間の都合」を優先させて行う人や企業、自治体、政府機関は多い。
 ところで、「自然遷移でない植林や植樹」に対しては、どうしてこれが「自然破壊」なのだと疑義を挟む人が大半ではないだろうか。「ブナ」の植樹が何故悪いのだ、「オオヤマザクラ」の植栽がどうして自然破壊なのだと考える人は多いだろう。
 「ブナ」の植林を考えてみよう。岩木山東麓の「弥生いこいの広場」敷地内に植栽された「ブナ」を一例して挙げる。
 いわゆる「弥生跡地」よりも早い時期に「弥生いこいの広場」は整備され、開業した。今から、20数年前のことだと思う。その敷地と「」の境界線付近に「ブナ」が植栽されている。かなりの数である。だが、一様に樹高が低い。大きく見積もっても4mはない。ブナは幼木時の成長が遅い。遅いのは大木の下で、「陽光」の当たるのを待っているからである。だが、この場所は周りに樹木は生えていない。「陽光」を思う存分浴びることが出来るのだ。だが、ものすごく成長が遅い。
 岩木山の、とあるブナ林に、元の営林署が、ブナを伐採して「カラマツ」を植えた。30数年前のことだ。そこは果たして現在どうなっているか。
 …「カラマツ」は育たず、ブナの切り株からのひこばえや実生からのものが、元気に育っているのだ。樹高も15m以上のものもある。(明日に続く)