岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

山頂を目指すだけが「登山」ではない(10)

2009-02-19 05:22:11 | Weblog
(今日の写真は「スカイラインターミナル」からカーブを10個ばかり下った場所を滑降する「相棒」だ。雪の埋まりは約10cmだ。この「埋まり方」だと、「スカイライン」を形成している「斜度」では、「スカイライン」に沿って滑降することは出来ない。つまり、「滑降」を満足させる斜度ではないのだ。それには余りにも「緩やか」過ぎるのである。
 人間が「歩いたり」「走ったり」「担いだり」「背負ったり」「運んだり」することに比べると、「自動車」のそれらは、確かに人間の数倍から数十倍の「速さ」や「仕事量」を示し、こなす。
 しかし、「自動車の登ることの出来る能力(登攀力)」は人間の「登攀(登坂)力」に比べると、実に大したことはないのである。
 私たちが「スカイライン」の道なりに「スキーで滑り降りることが不可能」な「緩い斜度」の道しか、自動車は登ることが出来ないのである。現代社会を席巻して憚らない文明の利器、「自動車」もそのように把握すると、それほどのものではない。
 まあ、「ガソリン」という化石燃料が生み出す「エネルギー」なしでは単なる「鉄とプラスチック」の筐体に過ぎない「使い価値」のない代物なのだから、当然だろう。
 この写真を撮った時は、偶々私が先頭になっていたのだ。だが、大体「登り」はその3分の2は、決まって相棒が先頭」であり、「下り」も大体相棒が先頭」なのである。この順序が「逆転」したのは本当に「偶々」のことだ。
 ウインドヤッケの上着を着けていないところを見ると、恐らく、それを脱いでザックにしまい込んでいる時に、私が「追い越した」のではなかろうか。
 そんなことはどうでもいい。この写真を今朝掲示したのは、「相棒」が背負っているザックの大きさとそれに付随させて背負っている全装備の大きさに注目して貰いたいからである。冬山における「一泊全装備」とは、このくらいの大きさと「重量」になるのである。
 ところで、私の滑り跡、シュプールはどうだろう。結構「美しく」描けてはいないだろうか。背中に「重い」ものをつけて「滑る」ということは「弘前高校で成績トップといわれる秀才が東大に受けて滑る」よりも難しいかも知れない。
 「相棒」のザックは私のザックよりも、その「容量」が20リットル多い。冬山装備の「個人」が背負う絶対量は余り変わらないものだ。
 だが、「相棒」と私が背負っている物品的な共同装備の違いは「相棒」が「テント本体」、「ポール」それに「軽量スコップ」を背負い、私は「テントのフライシート」を背負っていることであった。あっ、忘れていた。昨晩出した「ゴミ」も、「相棒」が「私のザックには空きがありますから」と言って背負っていた。「ゴミ」はどんなことがあっても持ち帰るのだ。「相棒」はこの「ゴミ」もスカイラインターミナル付近まで背負い上げて、そして持ち帰るのである。)

          山頂を目指すだけが「登山」ではない(10)
(承前)

 私たちは、まさに、「常軌を逸した」方向転換をして、「下降」を始めたのだ。「下降滑降」を始めたのだが、それは単なる「下山」のための「滑降」ではなかった。
  私たちには、「下山」がてらにする目的があった。下山することが目的ではあったが、それを含んで、別の目的もあったのである。
 その一つは厳冬期の「巨木の森」のたたずまいを、この目でしっかりと観察し、その名称に込められているであろう「由来」の実態を確認して、その雰囲気を感得することである。
 そして、もう一つの目的は冬季でなければ山頂を踏むことが難しい道なき「黒森山」の「山頂」に立つことであったのだ。
  大きく蛇行を繰り返す「スカイラインの長さ」は約10kmだ。その「蛇行」の数は64もある。「スイスイ」と滑るのであれば、恐らく、いい天気のこともあるので「爽快」であろう。確かに「今日の写真」からも分かるとおり「いい天気」である。
 しかし、「現実」は違っていた。下降を続けるのに従って、スキーの「埋まり方」は深くなってきた。益々「スキー」は滑らない。
 「滑らせよう」とすれば、いきおい「斜度のある場所」を探さねばならなくなる。その場所とは一段下にある道路を直線的に横切ることを要求する「道路の上段法面(のりめん)」だ。
  だが、そこには、まるで「フエンス」のようにミヤマナラやミズキなどの雑木が列を成していて、行く手を阻むのであった。これも、今季の「少雪」の仕業だ。
 私は、このルートをこれまで数回滑降している。その時もスカイラインに沿って「蛇行」はしなかった。雪に覆われて殆ど「樹木の影」のない「法面」を下った。もちろん、「直滑降」ではない。そのような技術もないし、「山頂まで登り、降りてきている身」には「直滑降」をする「体力」はなかった。仮にあったとしても「背中に重い荷物を背負って」では出来ることではないだろう。だから、スピードを落として、大きく左右に「回転」しながらの「滑降」であった。

 ところで、かなり「昔」になるが、一時期、「スカイライン株式会社」が「雪に覆われたスカイライン」の法面をつないで、それを直線的な「ゲレンデ」化して、「スカイラインスキー場」と呼称して「商売」をしたことがあった。それが出来るほどこの尾根の「積雪」は多いのだ。
 ところが、それでも、「雑木の梢」などが雪面に出ている。圧雪車で「均され整地されたゲレンデ」でしか滑ったことのない「スキーヤー」にとっては、わずかに出ている「梢」や「雪面の起伏」は「障害物」でしかないのだろう。その障害物を除去するために、いつの頃からか、雪上車でそのルートを踏み固め、圧雪車で均し始めたのである。
 その結果は明らかであった。梢のみならず法面に生えている樹木は「ずたずた」に折られてしまったのである。私が抗議したのは言うまでもない。
 だが、今回は「法面」をスロープにすることすら出来ないのだ。「相棒」が私に後れを取った理由は「着替え」のためだっただけではなかった。この「雑木」に「スキー」を取られて「頭から雪中に突っ込んだ」ためだと、後になってから教えてくれたのだ。(明日に続く)